12/21 忘れられないストーリー、を熱く斬る!

 前回からの続きで「世にも奇妙な物語」の話です。

 印象に残る話で葉月リス様から「ヴァーチャルメモリー」をいただきました。コメントにも書いて下さったように、まだVRという言葉が浸透していない時代に、先見の明があるストーリーだと思いました。途中のエスカレートしていく持っていき方や、怪しいキャラクターの登場シーンなど、勉強になるシーンもたくさんありました。

 この話、途中で「記憶を売る」という場面があります。

 この「記憶を売る」というシーンで思い出したストーリーがあります。それは私にとってもう一つの忘れられないストーリー「思い出を売る男」です。つい動画検索をして見てしまいました。


 若き小堺一機さんが名演技をしていました。金を取り立てる男も、電話が来たことを伝えるおばちゃんも良い味出していました。改めて見てみると、非常にうまくできているストーリーで、学べる場面であふれていました。


 ここから先、ネタバレありです。興味を持って下さった方はYou Tubeで見てからがいいかもしれません。


 まず謎の研究所。

 ショートショートにつきものの不思議な現象と日常を繋げるシーン。ここがうまくいかないと、読んでいる人はそこから先の話に感情移入ができません。そのため色々な方法が今まで見受けられます。

 例えば助けた猫が実は神様だった、路地裏に間違えて入り込んだら謎の店を見つけた、祖父の死をきっかけに超常的な能力が得られるようになった、などなど。

 この話は「記憶を売ってお金を稼ぐ」というのが大きなテーマなわけですが、いきなり普通の人はそんなことしようとは誰も思いませんよね。そのためには事前準備が必要です。では何をしたか?

 まず主人公は離婚して一人暮らし、しかもお金に困っている。今は無き「売血」のシーンから腎臓提供などの話題は、その金策に困窮している主人公の様子を強く印象付けます。取り立てから逃げるように窓から飛び降りると、偶然落ちていたチラシが目に入る、そこには「あなたの記憶、高く買います」と買いてある。

 実に面白い流れですよね、これならまあ行ってみようか、となりそうです。主人公たちを不自然な方向へ持って行くためにはそれなりの緊急事態を作り上げることが重要となります。こうして見事に主人公は奇妙な世界に入っていくのです。

 その後もどんどん記憶を売る主人公。

 しかしどうしても一つだけ手放したく無い記憶がありました、それが「家族」の記憶。

 もうお分かりですよね、それを手放さざるをえない事件が起きます。そして物語はクライマックスへ。

 最後の主人公の決意のシーンは不覚にも涙を流してしまいました。

 小さい頃見た話と、今見た話。内容は同じはずなのに、感じ方がここまで違うものかと驚く程でした。


「最後にもう一度だけ」と家族の写真を見るシーンに胸が熱くなりました。そしてその後、廃人となり階段を登る主人公、あれだけ大事にしていた写真を落としているのにも気づきません。


 命と引き換えに。

 とはよく聞くフレーズです。でも腎臓よりも血液よりも何より「思い出」って人間の命そのものなんだな、と思いました。

 今改めて見てもそのクオリティは色褪せることを知りません、まさに名作と言えるストーリーでしょう。

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