11/10 ひぐらし、ドラクエ、名作に学ぶストーリーの魅せ方 ①

 寒くなってきましたね、今回は主に長編におけるストーリーの魅せ方、特に情報の伝え方について書きます。

 長編になってくると、話が長くなってきますし、主人公が増えてくると誰が誰でよくわからなくなってくることってありませんか? そんな時に使えるテクニックです。


 まずは一作目、普及の名作ドラゴンクエストです。いわゆるロールプレイングゲームであるRPGはこの作品をもって産声を上げたと言っても過言ではありません。このドラゴンクエストはストーリーが秀逸なのはいうまでもなく、実は面白い工夫がなされているのをご存知でしょうか。では順を追って簡単にご説明しましょう。

 まず一作目、勇者が竜王を倒すという王道のストーリーです。二作目となると城が三つになり、三人の主人公で戦うことになります。この時点でもストーリーが少し複雑になり、正直言ってこの三つの城のそれぞれの色はぼやけてしまっている状態です。三作目に至っては、主人公以外の仲間3人には背景となるストーリーが皆無です。つまりどこで生まれて、どんな性格をして、何をしたいのか、なぜ冒険をするのか、これが0なんです。

 これをなんとか打破しようとして生まれたが4作目です。登場する主人公はなんと8人! それぞれが思いを持って生きている8人なのですが、ここでいくつか問題が生じます。まずは戦闘シーンですが、ここでは割愛します。

 どうすれば8人の色を出せるのでしょうか。それなりの小説を書いたことがある人ならお分かりだと思いますが、8人も主人公が出てくると、誰がだれだがよくわからなくなってきます。名作に8人主人公が闊歩しているのだとしたら、それは書き手がよほど上手だからです。

 ではドラクエ4ではどのような工夫をしたのでしょうか。

 それは今までになかった「RPGを章に分けてしまう」という斬新なアイデアでした。子どもの頃に遊んだ経験のある人なら誰しも思ったことでしょうが、この作品、不思議なことにまず主人公の名前を決めます。たとえば「しゅんじ」と入れます。ところが始まってみると、主人公はライアンとよばれているじゃないですか。「おいしゅんじはどこいった? 間違えてライアンって入れたっけ?」と思った人もいるはずです。

 実際主人公が出てくるのは第5章。それまではそれぞれの章でそれぞれのキャラクターのストーリーをプレイヤーにクリアさせることで、それぞれのキャラクターがどのような背景があって、どのような人間関係を持っていて、なぜ勇者の元に集まってボスを倒そうとするのか、をプレイヤーにさりげなく見せているのです。それぞれの主人公はほかの主人公の過去を知りません。しかし、プレイヤーにはわかるのです、そこがにくいところですね。

 ロマンシングサガことロマサガ1と3も似ています。最初に遊ぶメインとなる主人公を選べます。それぞれの主人公でクリア可能ですが、他の主人公を選ぶと、別の視点で世界をみることができる、というものです。


 これとはまた違った切り口で情報を伝える奇抜なテクニックを使ったのが「ひぐらしのなく頃に」でしょう。最近アマゾンプライムで見ていますが、これが一部のファンで熱狂的人気を誇った理由がよくわかりました。その切り口は別記事で。

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