11/13 名作に学ぶストーリーの魅せ方 ②

※「ひぐらしのなく頃に」のネタバレ含みます。


 ストーリーの説明の方法にこんなやり方があるのか、と驚かせられました。よく指南書にある素人がやりがちな失敗例に「出だしに時代背景や、キャラクターの説明がだらだら入る」というのがあります。これだけでもうその先は読んでもらえないそうです。

「とは言っても説明しないとわからないじゃないか」と思いますよね。

 小説における説明にはどうやら「しなくてはいけない説明」と「あえてしないほうがいい説明」があるようです。後者がいわゆる読者をひきつける良いスパイスとなる「謎」です。今回はこの謎の魅せ方の紹介をします。

 「ひぐらしのなく頃に」とはもともとゲームだったようです。私はアマゾンプライムで見ていますが、この作品、早速早い段階で不思議なことが起きます。

 全部で26エピソードとなっているのに、最初の4話で物語が完結してしまうのです。これは一体どういうことなのでしょうか? しかもそのストーリーは謎ばかり。どうしてこうなったのか? 彼の言っている意味は一体なんなのか? それどういうこと? と「?」がたくさんある状態で終わってしまったのです。

 さらに次の5話は突然タイプスリップして、元の何もなかった時間に戻って始まるじゃないですか。気になって早速webで調べてしまいました。するとどうやら、スタートから、悲劇のラストまでを何度も繰り返す、その中で少しずつ焦点を当てる人が変わったり、イベントが変わったりする、という流れらしいことがわかりました。(後々これは表現方法ではなくて、とある人物は本当に時間を遡っていることがわかる)


 この手法は斬新だなと思いました。

「なんでこの人はこの話を避けるのか?」「なんでこの人はそんな大事なことを敢えて言わなかったのか?」「何故あの人はあんな行動をしたのだろうか?」

 敢えて通常とは違う、謎を置いておくことで読者は先が気になってしまいます。この「ひぐらし」では、このたくさんの謎を一気に地雷のように散りばめて、一旦話を終わらせる、そしてそれを何回も少し違った視点で繰り返すことで少しずつ説明していく、という展開をしています。なかなか面白かったです。

 どちらが先かわかりませんが、サウンドノベルというジャンルで言えば「かまいたちの夜」が流行りましたね。こちらは主人公の選択肢によってストーリーが変わるという設定のゲームですが、大体最初はバッドエンド(主人公が死ぬ)で終わります。でも繰り返すことによって、「プレイヤーだけが」情報を蓄積することができ、解決方法へたどり着く、というものでした。この方法によって、一つの時間の流れでは決してみることのない裏側を覗くことができます。例えば、ペンションの奥さんは実は料理が下手だった、という裏情報も選択するストーリーによっては知ることができます。

 

 あくまで「斬新な」手法なので、頻回に採用はできませんが、こんな面白い魅せ方もあるのか、と驚きました。

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