11/22 世にも奇妙に……を勝手にレビュー!

 先週の土曜に「世にも奇妙な物語 ’20 秋の特別編」が放送されました。例の如く勝手にレビューします、作品を作る上での学ぶべきテクニックや盗みたい構成など、ストーリー作成の勉強になることを意識して書きます。今回もネタバレ含みますのでこれから観る予定のある方はご注意を。


1話 コインランドリー ★★★☆☆

 乾燥機の前でお願いすると、欲しいものが出てくるというお話。でもそれは全て1日で消えてしまう。彼女なし、仕事なしの主人公が今まさに頑張って一歩踏み出そうとしているときに現れたその怪奇現象に、主人公はどっぷりとはまっていく。その一瞬の快楽をひたすら繰り返すうちにやがて堕落し、そして——。

 「願いが叶う」系のショートショートで、まさに王道的なお話。最後はどうなってしまうんだろうと興味をそそられました。この手のお話の面白いところは、いくところまで主人公を行かせて、あとで「実は……」とくるところがいいですね、ゾクゾクします。ただ個人的にはなぜ「コインランドリー」だったのか、という点が気になりました。これならドアでも、なんでもよかったんではないか、と。無理やりコインランドリーにするなら「なぜか閉店したはずのコインランドリーが開いている」という設定や、「何故かとある人物が美女を毎日連れている、しかも毎日違う美女。おかしいと思ってつけていると、コインランドリーから出てくるところを見た」といった一説を入れるだけでもっとスムーズだったと思います。

 ということで調べてみると、原作はコインランドリーではなく「ロッカー」だったようですね。そしてオチも少しテレビと違うようなので、興味のある人は検索してみてください。


2話 タテモトマサコ ★★★★★

 主人公の志倉楓はフィアンセからプロポーズされるが、その翌日に彼は突然自殺する。どうやらタテモトマサコがからんでいるらしいことがやがてわかる。調べていくと、タテモトマサコは人の記憶を消すことができるらしい、ということが分かった。それだけではない、彼女はなんと「言霊」で人を完全に操ることができる人間だったのだ。

 大竹しのぶさんがこのタテモトマサコの気持ち悪さを見事に演じきり、いい味をだしていました。主人公の志倉楓はこの謎を解明するために情報収集を始めるのですが、関わった人が次々と記憶喪失や自殺に追い込まれていく。やがてその魔の手は志倉楓の元へと忍び寄る。そして最後の戦いへ。

 構図としては志倉楓とタテモトマサコの一騎討ちです。相手は非常に強力です、やろうと思えば世界を支配できる力を持っています。この怪物相手にどのような戦略を用いたのか?

 この戦いは見事でした。記憶を消されるのみならず、言ったこと全て現実になるという最強の武器を逆手にとった、思わず「お見事!」と言いたくなる戦略で見事逆転勝利を果たします。まるで一休さんのとんちみたいな爽快感がありました。

 自分ならどう書くだろうか、と思いながら見ていたのですが、自分が書くならば主人公の志倉楓は実は死者と通ずる力を持っていて、死者から情報をもらえるのみならず、死者の助けを得て様々なことを実行できる、といった神通力にはまた違った神通力で戦う、という展開も面白かったかもしれません。


3話 イマジナリーフレンド ★★★☆☆

 自分にしか見えないぬいぐるみのゆきちゃん。小さい頃はその寂しさゆえに見えていたその幻が、なぜか大人になった早希に再び見えるようになった。ゆきちゃんはなぜ現れたのか? そして何を伝えたいのか。

 序盤から見事な惹きですね、この最初に不思議な現象を起こし、そのなぜ? で展開するところがうまいです。早希は優しいボーイフレンドができ、幸せ絶頂になったとき、ゆきちゃんが突如呪いのぬいぐるみのように暴れだす。ゆきちゃんは早希が幸せになるのを嫉妬しているのか? 早希は幸せになれないのか? それならゆきちゃんなんていらない……。

 その後、じつは早希は騙されていることがわかり、ゆきちゃんはそれを止めようとしてくれていたことがわかる。そしてゆきちゃんの本当の正体もわかる。その正体に不覚にも少し涙してしまいました。

 ストーリーとしては無理のない展開なのですが、ちょっとストレートすぎるところが物足りませんでした。彼が偽物、それを守ろうとしていたゆきちゃん、この流れは予想できてしまいました。そしてゆきちゃんはゆきちゃんで、そのままぬいぐるみとして終わっても良かったんじゃないかと思いました。ストーリーの容量としてはそのくらいが良かったと思います。


【おまけ考察】

 タテモトマサコ、イマジナリーフレンド共にいつもの話のボリュームより少し時間が長かった気がします。まるで公募先の規定の文字数が思ったより多く、それに合わせるために何とか伸ばしているような、少し間延び感がありました。しかも最後の「アップデート家族」がとても短く、花火で言えば小〜中クラスぽかん、で終わったような不完全燃焼感がありました。どうも全体的にボリュームのバランスがよくありません。

 おそらくこれはコロナの影響と思われます。この秋の特別編は、なんと春の特別編の放送のとき既に予告がされる、という珍しい現象が起きていました。春の特別編と言えば3月、この時期はまさにコロナで世界が混乱していた時期です。ドラマ撮影も思うように行かない時期だったと記憶しています。このときに撮り終えている話をうまくまとめていくために、2、3話は少し時間を延ばしたんじゃないでしょうか。

 ですから、イマジナリーフレンドのゆきちゃんの正体という話も時間調整のために後からつけた話ではないか、と踏んでいます。


4話 アップデート家族 ★★☆☆☆

 家族をアップデートしてみたら、こうなった。というお話。全く異なる分野の現象を一緒にしてみると面白い、という手法ですね。これは比較的簡単にできるので、練習がてらやってみるといいかもしれません。ちなみにさりげなくセルフスコップ


「明るい」パートナー交換制度

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888198796


 車って買い換えるじゃないですか、それと一緒で妻を交換したらどうなるんだろう、と思って書きました。心当たりある人は用心して読んだ方がいいかもしれません……。


 というわけで、大好きな世にも奇妙なにインスピレーションを受けて書いたのがこの作品。


「顔は口ほどに物を言う」

https://kakuyomu.jp/works/1177354054945294579

顔認証が進みすぎたちょっと未来のお話。顔認証とカメラから見たAIによる分析で、その人物がその後犯罪を犯すかどうかは、かなりの精度でわかるようにもう既になっているようです。それがもう少し進んだら……?

 6万字弱だったので、滑り込みで5分で読書どんでん返しに登録してみました。でもあれって高校生向けなんですよね、だったらカクヨムコン短編の方が良かったかも……。

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