10/24 名作「ごんぎつね」の違和感 クリエイター目線で斬る!
とあるきっかけからあの「ごんぎつね」を読むことになりました。
改めて読んでみると、あのお話がどれだけ素晴らしい作品なのかを思い知らされます。
その理由としましては、何と言ってもやはりとある「違和感」です。
子どもの頃には気づかなかったその隠された意図に気づくと、あの作品がなぜここまで超ロングセラー、かつ子どもから大人までの心を虜にする話として生き続けることがわかります。
その「違和感」とは何か。
あのお話、ごんぎつね、というきつねが出てきます。設定としてはひとりぼっちの小ぎつねいたずらばかりしている、ということになっています。その先はご存知、自分がしたいたずらがきっかけで、辛い思いをさせた兵十とその亡くなったおっかあに罪滅ぼしの意味で、くりやまつたけをこっそりと家に置く。そして最後はあの有名なラストシーンです。(一応お断りしますが、この後ネタバレありです)
子どもの頃からこの話に違和感はありませんでしたし、今でもそうです。
でもおかしくないですか? だってきつねが喋ったり人間らしいことをしているのですから。
現代ファンタジー? いえいえ、そうではありません。おそらくこの話、ごんぎつねは当初きつねではなく、権兵衛(仮)といった人がいたのでしょう。周りに馴染めず孤独に暮らす権兵衛。いたずら、ひょっとしたら盗みかもしれませんが、そうすることでしか生きられなかった彼。彼がとあるきっかけで兵十とそのおっかあを苦しめてしまう。その恩返しをしようとするが、不器用な彼はさらに兵十を苦しめてしまう。
そして最後は……銃で撃たれてしまう。そりゃそうですよ、権兵衛は盗人です。盗人が家に入って来たのですから。
もしあのごんぎつねがこんな話だったらどうでしょう、イメージががらっと変わりませんか?
一気にドロっとした、残酷な大人の話な気がしませんか? 撃った兵十もどこか気持ち悪いです、下手したら罪に問われるかもしれません。そして第一人を銃で撃つという「子ども向け」の話ではなくなるでしょうし、教科書に載ることものなかったでしょう。
でもこの権兵衛を「きつね」にしてしまうことで、兵十は獣を撃っただけなので、もちろん罪には問われません。ただその悲しみだけを残すことができるのです。
この「盗人権兵衛」と「きつね」をさりげなくすり替えてしまうところが新美南吉さんのすごいところだなと思います。
これを実現することで、とても大切なテーマ、大人にならないとわからないようなその現実を、子どもにも伝えられる話になりました。そして今も多くの人の心に生き続ける名作となっています。
他にもたくさん素晴らしい点があるのですが、とりあえず今日はここまで。
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