アマチュア小説家の強みと弱み。書けなくなったときに考えること
結論から言うと、アマチュア小説家の強みは「書かなくても困らないこと」である。だから書くことを好きでいられる。心が安定した状態で執筆することができる。誰にも邪魔されず、細かいことを——そりゃすこしは考えるが——プロの方が考えるほど考えなくてもいい。
一方で弱みの話だが、このまさに「書かなくても困らない」ことが致命傷へと直結する。つまり、小説家にとって「死」を意味する書かなくなること、つまり「エタり」のリスクが非常に高いことだ。
これは異性との付き合いに似ている。
ちょっと付き合うのか、結婚するのか——ちょっと付き合うくらいなら良いところだけ知っていれば良いが、結婚となると……おっとこれより先はやめておこう。
この文章を読んでいるほとんどの方がアマチュアとお見受けするので、アマチュアの方にとってこの弱み、そして死にあたる「エタり」を乗り越えるにはどうすればいいか、考えてみたい。
物事を人間が推進する原動力となるものは大きく分けて常に二つ。私はこれを「原子力発電」と「クリーンエネルギー発電」と呼んでいる。前者は例えばダイエットをしよう、と思ったその理由が彼氏にフラれて見返したい、友人に「お前雪だるまに似ているな」と言われひどく傷ついたから、という「今ある環境を、否定、もしくは劣悪な状態と評価をし、そこを抜け出したい」という状況から、動こうとするものである。これは非常に強いエネルギーを持っていて、ときに人を大きく前進させることもある。
一方で時には著しい危険も伴う。
例えば、その行動の理由が誤った方向へ向かっていたとしてもそれを修正するような冷静な判断がつきにくい。また、途中でその目的が間違っていた、不要になった、ということが分かってもなかなかやめられないこともあるだろう、ゴールの修正もしにくい。これはまさに小さい石ころで莫大なエネルギーを産生する夢の発電と思いきや、発生した放射性廃棄物は永遠に残り続ける、地震が起きれば国家滅亡の危機へと陥るかもしれない原子力発電と似ている。
ではクリーンエネルギーによる推進力はいかなるものか。
これは「こんな風になりたい」、「こんなことができたら良いな」という発想のもと、そこへ向かって走っていく構図となる。言い換えれば「今ある環境が悪いわけではないが、あそこに行ったらもっと素敵な未来が待っているかもしれない」と思って走っていくのである。
これは非常に安心で安全なエネルギーである。今ある環境も悪くないのだが、もっと良い未来がある、それだけで世界がきらきらしているだろうし、走り方も冷静な心理状況でいられるため、方向修正も可能であるし、程度の調整も可能。いざとなったらやめても良い、なぜなら今の環境が悪いわけではないからだ。
ただもちろん、推進力は前者の原子力に比べれば弱い。なにせやめてもいい、と今さっき私は言い切ってしまった。
こう考えると、プロは原子力発電、アマチュアはクリーンエネルギーに似ている、と言えるかもしれない。
ただ私がここで言いたいのはそこではない。
私が言及したいのは、この事実を踏まえて我々アマチュア小説家がどうすればいいのかという点である。
結論から言ってしまうと「両方うまい具合に使ってしまえ」である。
両者は一緒にあって良いものだし、むしろ両方の性質を理解しながら、うまく両方つかうべきである(原子力発電自体はいずれ無くなって欲しいが)。
アマチュア小説家は、クリーンエネルギーとしてまず自分がどうして書きたいと思ったのか、どうしたときに書きたいと思えたのか、それをじっくり思い出して欲しい。憧れの作家さんがいる、思い入れのある作品がある、こんな体験、考え、シナリオを多くの人に知ってもらって喜んで欲しい、褒めてもらえてとてもうれしかった、これらの素敵な未来を思い出し、その未来へと紐付けをする。そしてその紐をひたすら具体的に、そして強くイメージする、それによってそこへ走っていく動機付けをするのである。
一方で原子力発電としては、自分に制約を課すのもいい。誰かに「自分は今月中に作品を終わらせる」と断言してみたり、とある締め切りのある公募に応募することを決めてみたり、「書かないという未来の環境のレベルを下げる(公言を守れないことは恥ずかしいことだし、公募の間に合わない未来は情けないことのはず)」ことにより、自分を奮い立たせるのだ。
ではこれらの二つを使ってどうすれば具体的に書こうと思えるのか。
それは私には分からない。いや分からないのではなくて、今これを読んでいるあなた自身の方がよく分かっているはずだ。自分とは何をすると喜び、嬉しさを感じ、何をすると恥ずかしく、情けなく、苦しい思いをするのか。
それが明確になれば、あとは簡単。なりたい自分、なりたい未来を設定したら、それに自分が喜ぶポイントを紐付けし、なりたくない自分を、それをやらなかった未来に紐付けし、あとはそれをひたすら強くしていくだけだ。
とまあここまで書いたのは自分が書くのが止まってしたからに他ならない。さてどうするか。本屋に行って、洗練された文章に触れてみるか、なんて思った今日このごろである。
ついでのちょっとしたスコップだが、
天上 杏さんhttps://kakuyomu.jp/users/ann_tenjoの
「氷上のシヴァ」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054895345100
を読ませてもらっているが、これがまた美しい文章をお書きになる。決して真似はできないが、読んでいて文章の美しさを再認識させられる。ストーリー展開も今後を期待させられるものである。ぜひ多くの人に読んでもらいたい作品である。
今日もお疲れ様でした。
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