第2話 いつもと違う景色

今日もあの席で小説を書こう。

…言い過ぎた。今日こそ書こう。

なぜか今日は朝起きた時から書ける気がしている。あくまで直感だけども。


いつもの喫茶店のドアを開ける。

──チリンチリン

この鈴の音が心地よい。


そしていつもの1番奥の角の席に………

────誰かが座っていた。


こんな昼間から働かずに喫茶店だって!?

……俺以外に。

まさか同業者か?とも思ったが、スーツ姿だしおそらく一見いちげんさんだろう。


仕方なく、いつもと違う席に座る。

……なんだか、落ち着かない。

窓の外に視線を移すと、いつもと違う景色。

……やっぱり落ち着かない。


『ご注文はお決まりですか?』


マスターのだけはいつもと同じだった。ある意味、癒される。


「いつものコーヒーを」

『かしこまりました』


注文を済ませて、待つうちに窓から空を見上げると空はどんよりとした雲に埋め尽くされていた。


「……降る前に帰るか、止んだら帰るか」


小説を書くという選択肢は、

コーヒーに入れた砂糖のように溶けて消えていた。






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