第22話 かばう気持ち、かばわれる気持ち

かなでさんが欲しいと言っていた本をふたりで協力して探した。

その本屋は品揃えもいいから間違いなく見つかるだろう…と、甘く考えていた。


品揃えがいい分、なかなか見つからない。


『何かお探しですか?』


とうとう店員さんが声をかけてくるくらいには苦戦していた(笑)

奏さんはちょっと困り顔をしていて、俺はやっぱりそこに入る。


「大丈夫です、色々見てるだけです」


本屋は静かだ。

静かだから店員も客も静かにしてる。

自然と小さな声で話すから、奏さんは聞けていないんじゃないか?と思ってしまう。


『……ありがとうございます』

「大丈夫ですよ」


そのあと無事に本が見つかったのは、

奇跡のようなタイミング(笑)


そして食事にはちょっと奮発して、コース料理なんかにしてみた。

順番に運ばれてくるのはあまり経験がないからか不思議な感覚で、少し偉くなったようなくすぐったい感じがした。

煩わしさがないことで、奏さんが少しでも気を休めてくれたらなんて。


俺が彼女を支えたい。


──彼女の気持ちも知らないで。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る