第45話 私は今、過去最高に(奏サイド)
父がビールをこぼした次の日、私はしばらく休んでいる管理人であるサイトを見るために割りと久しぶりにPCを立ち上げた。
そこには見慣れた画面と…
予想もしないほどの受信メールの数字。
ビックリしつつ開いてみるとサイトが休止していることを心配してくれる意見と、再開を待っているという優しい言葉。
ひとつひとつしっかりと既読に変えていく。
ひとつ既読にする度に、
ひとつ相手に感謝した。
そして、あるメールに手が止まる。
その人のメールは、なぜか響く。
メールの文字なんて誰が打っても同じだ。
手書きよりも全く差がないはずの文字が、時に刺さり、時に染みて、時に苦しくなる。
なのに1番言われたイメージがしやすくて、なぜか安らぐ。
───あぁ、どうしてこの人は。
だから私はこの人を…。
不思議と笑みがこぼれてしまう。
それが大きな勇気に変わるのを感じる。
だから父に、母に、決心したことを話せる。
居間に二人とも揃うのを見計らって、
二人に話す。
「お父さん、お母さん、私ね───」
『────────』
泣きそうになる母。
先に泣いたのは父。
『あなたが泣いてどうするのよ、もう』
『…あぁ、あぁ』
こんなときは女の方が強いんだななんて思ってしまった。
『私達はあなたが決めたことなら反対なんかしないわ。この人にもさせない』
なんて、笑いながら母が父の肩を優しく擦ってあげている。それがすごく微笑ましい。
私も強く、優しくありたい。
心の中で、自分に聞いてみる。
「今、心から笑えてる?」
迷わず見せてきた表情には見覚えがない。
思い出せないんじゃなくて、知らないから。
───私は今、心から笑えている。
(奏サイド、完)
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