お出掛け(デート)と言ったら・(下)
俺達は警察から解放された後、帰るかって話になったのだが────何故こうなった?
後ろからずっとアルシェに抱きつかれててさっきこう言われた。
『お願い。今は一人にしないで』
それも上目遣いで。俺はこいつの事は嫌いだ。でもな、流石に愛らしさのある顔立ちのこいつから上目遣いで言われたら俺も流石に耐えれなかった。
まずよからぬ事を考えない様に少し前の事を考えよう。
***
警察署から出てもアルシェはまだ服の袖を掴んでて身体は震えていた。
「そんなに怖かったのか?」
アルシェは小さく頷く。
うーん、こいつならあんなの幾らでもあっただろうに、何で今さら怖いんだろうか。
「お前、あんなの幾らでもあったろ」
「そうだけど………怖いのは、怖いから」
「そうか。それは悪かった」
ぎゅっ、と袖を掴む力が強くなるのを感じた。
怖いか、まぁこれ以上訊くのは止めとこう。誰にだって苦手なものがある。俺にだってあるから人の事は言えない。
「どっかで少し休むか?」
また小さく頷いた。
俺は袖を掴むアルシェを連れて近くの公園に訪れた。その前に自販機で飲みを買ってから二人で公園にあるベンチに座った。
***(アルシェ視点)
怖かった。たまにああ言う人は居るけど、大抵友達が追っ払ってくれたり、偶然警官が通り掛かったりするから大丈夫だった。でも、今回は守ってくれる人が居た。大きな背中で私を庇う様に守ってくれた。
宗治旭。何故彼は私何かを助けたんだろう。いや、私が後ろに隠れてしまったのもあるけど、私を憎んでるのなら宗治旭は見て見ないふりを思ってた。でも、絡んできた男の攻撃を受けながらも反撃して反対に殴り飛ばした。
カッコよかった。
その光景を見てから胸の高鳴りが止まらない。顔も何だか熱くなるのを感じた。もしかしたら、もしかしたら! あれだけで私は────。
いや、違う。私は絶対にそれだけで落ちる程安い女じゃない。だからこの気持ちは違う。ただ怖かったからそう思えただけで、怖いのが抜ければ顔の火照りも宗治旭を掴んでる手も離れる。
「なぁ、転校生」
「あの、名前で呼んでくれません? いい加減」
「ん。何時かな。それでどうする? 送るか? それとも一人で帰るか?」
何故だろう。『転校生』と呼ばれるだけでムカムカする。それはそうか。お気に入りの名前を呼んでくれないだから。
「アルシェ」
「は? 転校生で良いだろ」
「アルシェ」
「だから」
「アルシェって言ったらアルシェなの! そう呼ばないと陽愛にバラすわよ!」
「うっ………ア、アルシェ」
「ッ?!───」
なに、今の。胸がドックンって跳ね上がる様な高鳴りをしたのは。
「はぁ、まぁそろそろ落ち着いたろ。帰るぞ」
そう言って宗治旭は立ち上がる。それとともに宗治旭の袖を掴んでいた私の手が離れる。その時に何だか悲しい気持ちになった。
あ、あれ………?
私はいつの間にか宗治旭に抱きついていた。分からない、自分でもしようとしたつもりはない。でも私の手はぎゅぅぅ、と強く宗治旭のお腹辺りを抱き締めている。これは間違い無く私からしたこと。
「お願い、今は一人にしないで」
これも、言いたくて言ったんじゃない。勝手に口が動いて言った事。だから、私の意志じゃない!
「………わ、分かったから、離れろ」
「嫌。そう言ってどっか行くつもりでしょ」
「いや、行かないから。離せ」
「………そんなに嫌? 私に抱き締められるの」
「嫌とかじゃなくてな」
「じゃあ、何?」
「………」
宗治旭は押し黙った。私は更に彼に寄り添う。
何してるんだろう。私。
自分でも何をしてるのか分からないけど、今はこのままで居たい。
それから暫く抱き着いたままの時間が続いた。
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