変わり行く日常
何故だ。何故ああなった?
俺はただ気になったから訊いただけだ。なのに何故あんな出来事が起きた?
さっきアルシェとあった事が頭の中で思い出させられる。
だが、直ぐに首を横に振って忘れようとする。
駄目だ、鮮明に頭に浮かんでくる。どうしても忘れられない記憶になってしまったのか………。
いや、こんな記憶直ぐでも消せる! こう言う時は楽しい思い出を思いだせばきっと忘れられる!
楽しい、思い出、思い出………………あれ、楽しい思い出ってなんだ? 待て待て、あるはずだ、俺にも楽しい思い出が。
「………チッ、駄目だ。あの記憶が頭から離れられない」
どうしても頭からあの記憶が離れなく楽しい思い出が思い出せない。
流石にあれはインパクトがあり過ぎた。キスなんて初めてされて今でも感触が少し残ってる気もするし。まぁ、良い方向で考えればあれはご褒美みたいなものなんだよな………?
美少女からのキスなんて本当は嬉しく思わないと駄目、なのに、俺は嬉しく思えない。
まぁ、そんなの好きでもない奴にして貰っても誰も嬉しく思わないよな。
俺なら陽愛────いや、今は陽愛関係ねーだろ。うーん、何か頭まで変になってきたか?
「………でも、陽愛には言えないよな」
陽愛には言いたくない。言っても信じて貰えないだろうがそれでも言いたくないんだ。陽愛に言うという事を考えると心臓の鼓動が早くなって視界が歪んで頭が不安で一杯になる。
何でこうなるのか分からない。でも──陽愛には言いたくないだけは分かる。
「はぁ、陽愛に隠し事出来るかな?」
陽愛は俺の嘘を直ぐに見抜いて来るから隠し通せるか不安だ。それでも隠さないと俺は多分正気でいられなくなる。
***(アルシェ視点)
家に帰宅後、直ぐに自室に行ってベットにダイブして顔を枕に沈めた。
あぁぁぁぁぁぁぁ!? 何であんな事したの!? 私! そう、心で叫び上げた。
家に帰って来て漸く恥ずかしさや何をしてんだの後悔が表に出てきた。
本当に何をしてるのか分からない。キスをする必要があったか? って訊かれると無かったと答えるしかない。
だって、宗二旭が喋っても信じる奴は一人も居ないと私は確証を持って言える。それだけ私は転校初日からずっと信頼を得る為の行動をしてきた。
今では教室内の生徒だけでは無く学校中から信頼は得られるぐらいにはなった。だから、あんな事をしなくても良かったと今さら後悔している。
「でも!───こ、これは前向きに考えないとね!?」
そう、前向きに考えれば何とも思わなくなる!………………うん、そう思わないと多分恥ずかしさや後悔に呑み込まれて私は死ぬかもしれない。
そう──これで
「ん。でも、あいつにお願いする事ある?」
少し考えてみれば宗二旭にお願いしたい事なんて今のところは………………ないや。
「………駄目じゃん。意味無いじゃん」
また枕へと顔を沈める。そして大きな溜め息をつく。
宗二旭にお願いしたい事がないならキスもする必要なかった、いや、そこはもう深く考えないでおこう。じゃないと自分の中で何かが壊れそうだから。
「そうだ、陽愛と同じ事すればいいのか」
私はポン、と頭にそんな事が浮かんだ。
何時も陽愛は宗二旭に脅して言う事を聞かせている様にすれば問題ないのか。
陽愛は何時も『あれ買ってきて』『はい、お弁当。あと、今日の帰り買い物に付き合って』『旭、いま直ぐスイーツ買ってきて』
ん? あれ、これって全部………恋人がしてる事だよね? 出来るわけないじゃん──
「はぁ。あいつをこれからどう使おっかな」
宗二旭が嫌がる事──宗二旭と言ったら………。
私は少し口を緩ませてとある良い事を思いついた。
***
「旭さん~!」
「は?」
「はい、どうぞ!」
「………」
私は今朝作ったお弁当を宗二旭に渡した。そうすると戸惑いが隠せないぐらい驚いており両手でお弁当を持ったまま呆然としだした。
教室内も困惑と不思議で一杯みたいで周りの人達はひそひそ、と何か話している。
そんな事は分かりきっていた事だから気にしない。
「ふふ。昨日のお礼です!」
「いや、その、えっと、ありがとう?」
宗二旭は素直に受け取り。多分気づいたんだろう。今では学校の人気者からの『手作りお弁当』なんて代物をこんな場所で断れる訳がない。断っても良いのだがそれするととある一部の人達からの反感を買うでしょう。
私が宗二旭に対して思いついた事は陽愛との関係を崩してやる事だ。
今での反応からして宗二旭は陽愛の事になると焦ったり戸惑いを見せる。それは絶対に陽愛を好きと思っているからの行動だと私は考えた。
ふふ、そう思うと私って本当に悪い女ね。
見てみたいの。宗二旭が陽愛に嫌われる場面を。私は凄くそんな場面が見たい、見たくてまらないんだ。
どんな顔で絶望する? 絶望した後はどうする? 死んだらまた面白そう。そこは陽愛の反応を見るも悪くない。
これからどんどん壊して(関係を)あげるからね。
「ねぇ、旭さん。今週末お出掛けしませんか?」
「いや、その」
「何もないなら行きましょうよ!」
「その日──………分かった、行く」
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