皆と遊園地(上)

皆と出掛けるのは『遊園地』と決まって、何故か陽愛はが欲しいとかで今はショッピングモールの方に来ている。一応、皆居るけど暉と美空は『二人で回る!』とか言って颯爽と姿を消していった。


だから、今は陽愛とアルシェ、俺だ。


「………なぁ、何で俺ここなの?」

「ん? 何、暉達と行きたかったの? それは無理よ。あんたは私の財布なんだから」

「いや、ん? そっちも問いただしたいが、今はそっちじゃなくて、何で俺がなんだよ」


何故か、俺は両隣に二人に挟まれながら歩いてるんだ。

可笑しい。まだ挟まれてるだけなら良い、いや良くはないけど、でも! 何で陽愛は腕を組んでて、アルシェは制服の袖を掴んでるんだ? それのせいで周囲からの痛々しい視線が心にグサグサ刺さてくる。


「別に何処でも良いじゃない」

「そうですよ。何処でも良いじゃないですか」


待て、ゴラ。アルシェてめぇは俺を嫌ってんだから賛成するじゃねーよ。てかいい加減手を離せ!

そう、無理にでもアルシェの手を払おうとしたら、アルシェまで俺と腕を組んできてしまった。その行動に俺は首を傾げるしか出来なかった。


「歩きずらいんだけど」

「………」

「………」


二人共、無言。それに何かまたピリピリした空気になってきた様な………


暫くそんな全員無言とピリピリした空気を続けて服屋へと着いた。


**※


「はぁ」

ホッと肩を落とす。店に着いたらピリピリした空気も無くなって二人で服を見だしたから俺は一人で近くにあった休憩用の椅子に座っている。


遠目で二人を見ていると、まぶたが重くなって視界が霞んできた。


「疲れ………が、溜まってんの………かな」


その瞬間、目の前が真っ暗になる。そして、昔の記憶が頭に流れ込んできた。



『陽愛!』

『何? ──』

『俺、陽愛守るから、ずっと側に居るから!』

『はぁ』


陽愛が呆れた溜め息をつく。


『だったら、直ぐ泣くのを辞めなさい! 私、直ぐ泣く男の子は嫌いよ!』


『陽愛』は両手を腰に当てて怒鳴る様に言い、男の子はそれに身体をビクッと怯ませ、瞳を潤わせていた。だが、男の子は拳を強く握り締めて、唇を噛み締め、瞳には強い意志がある様に見えた。


『分かった。俺はもう泣かない。だから、───』

『はぁ。だったら──』



そこで俺は目を覚ました。


(またか。何で最近ずっと昔の夢ばかり見るんだ。クソたれ………)


夢は自分が抱いている欲望が出ると言われている。でも、俺はこんなの望んでいない。反対に忘れていたくて仕方ないものなんだ。


何が、守るだ、泣かないだ。結局守れていなかったじゃないか。それなのに何でそんな言葉が言える。いや、そうか、未来の事は誰にも分からない。だから言えるんだ、でもイライラする。結局すると言って出来なかった自分に。


「あ、旭?」

「ん。どうした?」


陽愛がいつの間にか目の前に居た。気づかないぐらい俺は見ていた夢に苛ついていたのか。


「その、そんなに嫌だった?」

「は? 何が?」

「いや、だから、買い物」

「・・・?」


何故、そんな事を訊く? 何時もなら問答無用に俺の言葉を捩じ伏せて連れて行き、文句を言う様なら脅して黙らせてくるのに、今はなんだか汐らしい。


「嫌とかはないから。でも、どうした、いきなり?」

「いや、だって。から」


怒る? もしかして顔に出てたか。


「安心しろ。別にお前に怒ってたんじゃないから」

陽愛の頭にそっと手を置いて安心させるべく笑顔を向ける。


「そっか。ならいいや。じゃあ、何に怒ってたの?」

「それは、その、昔の自分に」

「はあ? また、意味の分からない事を……」


暫く呆れた目で見つめられた後、何故か陽愛はチョップをしてきた。でも力が弱いからそこまで痛くもない。多分バカな事ばっかり言ってるから『いい加減にしろ』と言う事なんだろう。


「行くよ」

「ん。あぁ」


椅子から立ち上り、歩いて行く陽愛の後を追い掛けた。



「良いのあったか?」

「なかったよね~」

「はい、ありませんでした」


あんなけ(二時間ぐらい)見てて何も無いのかよ。とツッコミを入れたいが、そうしたらまた色々とめんどくさそうになる気がするからそっと胸の奥にしまっておく。


「あ」

「どうしたの?」

「えっと、少し見てきても良いか?」


俺は斜め先にある『時計屋』を指指して陽愛達に言う。


「ん。時計屋………まぁ良いけど」

「あ、ありがとう! ちょっと行ってくる!」


許可が取れたから俺は少し浮かれ気味の小走りで行こうとしたが、ふと後ろに戻って、


「陽愛達も行くぞ。少ししか時間取らないから安心しろ」

「え。まぁ、いいけど、アルシェは?」

「私も大丈夫ですよ」


二人の同意も受け取れたので二人を連れて時計屋に入って行く。また変なのが絡んでたら面倒だし、一緒に連れて行った方がまだ安全策だろ。


***


「おぉ~!」


俺は別に時計が好きとかじゃない。ここに来る理由は一つ───と感じた『GX5』を手に入れるため。と言ってもまだ金は足りないけれども。


黒光りしててゴツいフォルムをした腕時計。中に歯車の飾りがあるのが特徴だ。

一時間置きに音を鳴らして教えてくれたり、電波時計だから勝手に時間も設定してくれる。それに頑丈だとも言われている。確か、重さ百五十キロが乗っても壊れないとか。


機能も機能なのでそれなりの値段もする。でも、俺は今度の小遣いを合わされば買えるんだ。念願の『GX5』が!


暫く時計屋にあった『GX5』を見ていたら、陽愛が『まだ~?』とうるさかったから少しほしい気もするが店を出て行った。


(たっく、自分達は二時間見てた癖によぉ)


「旭。何かいまイラッとしたんだけど」

「気のせいだろ」

「うーん。そうだね」

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