一章:また近くなる距離
とある夢(旭)
耳に響く程に泣く一人の幼い男の子。
『陽愛、怖いよ。一人にしないで!』
男の子は『陽愛』と言う女の子の悪戯で今は夜の道で一人だ。溢れ出てくる涙を必死に手で拭っている。
そこで、流石に見てられないと思った『陽愛』と言う女の子が男の子の前に現れる。
『もう、泣かないの! ──は男の子でしょ!』
『陽愛!!』
男の子は『陽愛』に泣きながら抱きついて『怖かった、怖かったよ!』と言い、『陽愛』に頭を撫でられ慰められる。
『はぁ。もう~──は何で男の子なのに泣くの!』
『うっ。だって~!』
『だってじゃないよ!────はぁ、──は私を守ってくれるんでしょ? だったら泣かないの』
『う、うん。陽愛、──だよ』
男の子が──と言うと『陽愛』の顔は少し朱色に染まり『バカ』と言い直ぐに男の子から顔を背けた。
『──、ごめんね、一人にして』
『ううん。陽愛は来てくれるって思ってたから大丈夫だったよ!』
それから、二人は手を繋いで───。
「………」
俺は無言で布団から起き上がる。そして、何度も、何度も壁に頭を打ち付け始める。
あぁぁぁぁぁ!? 何時の夢だぁぁ! ボケェェェ! あぁぁぁぁぁ!!
心の中でおもいっきり叫び上げて段々痛みが増してくる頭をずっと壁に打ち付けた。
そして、朝方、俺は気絶して頭だけ血だらけになった状態で陽愛に発見されたとか。
「いてぇ」
「自業自得よ。何で壁に頭ぶつけてるのよ」
「いや、まぁ、昔の夢を見て」
「はあ?」
陽愛は意味の分からん見たいな顔をして、直ぐに呆れた顔になり溜め息をつかれた。
流石に言える訳がない。あんな俺の羞恥心が耐えられなくなる事を誰かに話すなんて無理だ。直ぐに忘れよう。でも、何故か頭に焼き着いてしまい忘れられなかった。
「そうだ、旭」
「ん。なんだ?」
「今週の土曜は………どうせ暇か」
その、俺が休日は何時でも暇みたいな言い方に文句はあるが、まあ、いいや。あながち間違ってないし。でも、一応バイトがあったりする時もあるから何時でも暇って訳でもないからな!
「休みだったら何かあるのか?」
「なら、美空と暉、アルシェとかも誘って皆で出掛けない?」
「良いんじゃないか? 皆の予定が合えばだが」
「うん。もう美空は大丈夫って言ってるから後はアルシェだね」
そこで暉は出てこない。何故なら美空が行くなら必然的にあいつは来るからだ。ほんっと、溺愛してるよなあ。良く喧嘩してるけど。
皆とか~、何処が良いかな? まぁ、そこは皆で決めればいいか。
「一応、皆とだから遊園地とか良いかなって思ってるんだけど、どうかな?」
「まぁ無難だな」
「後は、ショッピングモールで──」
「いや、それは止めとこう」
俺が陽愛の言葉を遮り言うと、陽愛は不思議そうに首を傾げて、
「何で?」
「いや、まぁ、小遣いがヤバいんだよ」
「ふーん。なら止めておこっか」
小遣いがヤバいのは本当。でも、ショッピングモールに何か行ったら更に財布の中身が危うくなる。良かった、陽愛が納得してくれて。
***
「ん。それどうした?」
暉の視線は頭の方を指しているる。ああ、これか、陽愛が丁寧に巻いてくれた包帯を見ているのか。
「まぁ、そのな」
「昔の夢を見て壁に頭をうちつけてたんだって」
陽愛は俺が言う前に通り過ぎながら言って行き、なんだかツン、と怒った感じがした。
「喧嘩でもしたのか?」
「いいや。何も」
特に怒らせた記憶もないし、多分、俺のバカらしい行動に呆れてるだけだろう。昔の記憶なんて思い出したくもないんだ。だから、あれは仕方ない事だ!
「あ、そうだ。土曜楽しみだな」
「そうだな~財布がいくら消えるか楽しみだよな~」
「重いわ! 行く前からそんな話題ふるな!!」
椅子から勢い良く立ち上り俺の肩を揺すってくる暉。それに何か泣いてる。どうせ、後々受け入れないといけないんだから、いま受け入れちゃえば良いのに。
「あ、でもお前良いのか? 欲しいって言ってたのもう直ぐ買えるんだろ?」
「うーん。まあ、余裕はあるから大丈夫だ」
月一回の小遣いとたま~にしている日給バイトでそこそこ金はあるから『GX5』は買えると思う。遊園地とかで陽愛に金をとられなければの話だが。
***
放課後にファミレスで皆で集まり何処に行くか話あおうと言う事になり放課後集まったのだが、何、これ? 可笑しくない?
至って普通のファミレス。で、座る場所も奥から順に詰めて行くやつだ。何故、陽愛が俺の隣に? いや、けして嫌とかはないけど、女の子三人で男二人だぞ? どうやっても俺と暉で女の子三人が分かれて座るべきだろ。
「な、なぁ、何で陽愛がこっちなんだ?」
「何? 私が嫌なの?」
「いや、そう言う訳じゃないが、可笑しくない?」
「だから、何処が?」
ここで間違って変な事を言って誤解を生みたくないから遠回しに伝えようとするが陽愛には伝わらず。そこで暉が溜め息をついた。
「はぁ。仕方ねぇな」
おぉ。暉は分かってくれたのか! やはり親友は違うな。
「………」
「はっはっは! 旭は良くばりさんだな!」
殴る。いや、それだけじゃ、今の気持ちは抑えれそうにないな。半殺し………それぐらいだな。
「美空、ちょっくら暉を借りるぞ」
「どうぞ~」
「おい、ゴラ。一回表出ろ。暉さんや」
「いやいや! 何か怖いから嫌だ!」
「いえいえ、怖くはないよ。ただ半殺しにするだけだから」
「十分怖いわ! それにそれが冗談に聞こえないから更に怖いんだけど!?」
冗談じゃないからな。何を言ってるんだ、暉は。
「で、何でこうなるか説明してみろ。説明次第で止めてやる」
「それは~! むふふ! 旭が二人に──いてぇぇ!!」
ニヤニヤしていた暉にムカついた為、足蹴りを入れる。はっ、こんなけで許してやるんだから有り難く思え。
「な、なぁ、陽愛? 場所変わってくれない?」
「ッ───なんですか、私の横が嫌なんですか?」
「いや、まあ、い………やじゃないけど」
アルシェに横目で睨む様に見られ、直感があ、これヤバいわ、と判断して本当の事が言えなかった。本当は嫌なのに………。
「な、なら、転校生が退いてくれないか?」
「………」
「?………あ。アルシェ、場所変わってくれ」
そうだった、何故かあれからアルシェは名前で呼ばないと返事をしてくれなくなったんだ。別に転校生でも言いと思うんだけだなあ。
「駄目よ。旭はそこ」
「いや、でも………はい」
陽愛にもアルシェ同様の睨み方をされて大人しく従った。なんて、俺は弱いんだ。それに何で両隣に女の子を囲っていないと駄目なんだよ。いや、決して嫌とかはないけど、肩身が狭いと言うか、何だかピリピリした空気だから居たくないんだ。あと、さっきからクスクス笑ってる暉、お前は後で半殺しにしてやる。
「まぁ、良いけど。何処行く?」
「うーん。やっぱり遊園地かな?」
「そうそう。そこにしとけよ」
「アルシェは何処がいい?」
「私は皆と遊べるなら何処でも!」
案外、話し合いは直ぐに終わってしまった。暉は『え? 俺には?』と不思議そうに首を傾げていたがそんなの無視。三人も無視してるしな。
***
「………俺達って居る意味あるか?」
隣に居る暉がそんな事を言う。遊びに行く場所を決めた直後、女の子三人組だけで話が盛り上がり俺はいつの間にか暉の隣に移動させられていた。うーん、きゃっきゃうふふ、と楽しそうだな~。まあ、混ざりたいなんて思わないけど。
「まぁ、財布として居るんだろ」
一応、暉の質問にも答えておく。そしたら、暉は苦笑いをして黙って前を向いた。
「なぁ、旭」
「ん? なんだよ」
「陽愛ちゃんと何時付き合うの?」
身体が停止する。グラスを持とうとした手も止まる。脳は何が何だか分からなくなり暉が言った言葉すら理解が出来なくなっていた。
だが、それは束の間。直ぐに身体も動いて、後ろの背凭れに凭れかかり腕を組む。そしたら口を開いて、
「だから、何度も言うが、俺達はそんな関係じゃない」
「ふーん。まあ何でも良いけど」
「てか、何でいまその話題をふった?」
「まぁ、色々と」
「色々って………なんだよ」
陽愛達が黙ってこっちを見ていた。陽愛はなんだかムスッ、としている。その割にアルシェは俺が見ると下を向きぶつぶつ、と何か言言っている。その間で美空が「はぁ」と少し深い溜め息をついて半目でこっちを見ていた。
「なんだよ、三人揃って」
「何も」
「旭はバカだね~」
「………(ぶつぶつ)」
「?」
意味が分からん。
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