お出掛け(デート)と言ったら・(中)

「お待たせしました!」

「あ、あぁ」


白色のシャツにジーンズ系の短パンを着てきたアルシェ。普通だ。いたって普通の服装だ。なのに、それを着こなしてるこいつは何者だ?

長細くてしなやかで色白な足を大胆にも露出してて、シャツもシャツで何の絵柄もないからアルシェ自身の愛らしい顔立ちとかが逆に目立っている。


「………似合ってるよ」

「いや、普通のシャツと短パンでその褒め言葉貰っても嬉しくないです」

「そうか。それは悪かった」


そこで、本題に戻す。


「で、何処に連れて行けばいいんだ?」

「そうですね。適当に歩きましょ」

「は? そんなので良いのか?」

「はい。むしろ貴方には女の子が喜びそうな場所を知ってるとは思ってませんので」


ぐっ………それはその通りなのだが、もっとオブラートに包めないのか、こいつ。


「ほら、さっさと行きますよ」


アルシェは少し先に行き後ろに居る俺に顔を向けてそう言う。


こいつが俺と出掛ける理由はまだ良く分かっていない。だけど逆らえない理由はあるからここで帰るって事が出来ない。


「はいはい。いま行く」


俺はアルシェの所まで小走りで行き、横に並ぶ様に立つ。俺が横に来るとアルシェは前に歩きだして俺も小幅を合わせて。何も言われないのでそのまま横に並んで歩く。


***


「………」

「………」


本当にあれから適当に街を歩いてるだけで俺達の間に会話すらない状況───気不味い。


そこで、初めてアルシェが口を開く。


「お腹すきませんか?」

「………え。あ、ああそうだな」


あまりにも突然の事だったから反応が遅れた。アルシェは首を傾げていたが直ぐにベンチを指指して『彼処に座りましょう』と言ってきたから二人でそこに座った。


「はい、どうぞ」


アルシェは持っていたの鞄から小さめの藤カゴ取り出してそれを俺に渡してきた。


俺はそれを受け取り膝の上に乗せる。


「………」

「………なぜ、さっきから見てるだけなんですか?」

「いや、別に」


ちょっと驚いてて開けるのを戸惑っていたが、そっと蓋を取り中身を見る。


白と赤のチェック柄の紙が下に敷かれていてその上には玉子とレタスこサンドイッチが均等に切られてカゴに詰められていた。


ゴクリ。旨そう。でも、何でこんな物を作ってきたか謎だ。こいつはただ俺を脅して自分の言う事を聞かせたいだけなんじゃないか?


少しだけ自意識過剰な考えが頭に浮かんだが、直ぐにその線は無いと思い考えから消した。


だったら何でこんな事をする?───


「あ、あの、さっきからどうかしたんですか?」

「え。ああ、すまん考え事してた」



***



あれから公園のベンチでアルシェが作ってきたサンドイッチを食べてからまた少し公園を二人でフラついていた。


サンドイッチは、まぁ、旨かった。胡椒もちょうど良かったしレタスもしゃきしゃきしていた。マヨネーズの量もちょうど良かった。


俺は横目でアルシェを見る。やはり可愛らしい顔立ちに今は凛とした雰囲気もあって


いかん、いかん。見とれてる場合じゃな。


「あ、旭さん。あれ食べたいので買って下さい」

「え。あ、うん」


アルシェが指を指した方向にはピンク色のキャンピングカーありそこではクレープが売られているのが見える。まあ、あれぐらいならと思い俺はそっちまで行き、


「すみません。クレープ二つお願いします」

「あ、は~い! その前にお味はどうしますか~?」


オネェ喋りな男の店員にそう訊かれ、『あ』と味を訊くのを忘れた事を思い出す。


「すみません──ん? あ、チョコバナナと苺とホイップのやつで」

スマホから通知音がすると、そこに『苺のやつがあるなら苺で』とアルシェからメールが来てそれを頼む。


「はいはいー! かしこまりましたー!」


やたら、ハイテンションだな、この店員。


そんな事を思いながらクレープが出来るまで待った。


「出来ました~! はい、どうぞ!」

「どうも」


店員からクレープを受け取ろうとしたら──後ろの方から何か争う声がして、もしかして、と思い振り向くとそこには男三人とアルシェが何やら口論している光景があった。


はは………やっぱり。


「おやおや、テンプレ的な光景ですね! あ、もしかしてお連れさんですか! これはまた───ふふ、クレープは後で取りに来てくれれば良いので行ってきたらどうですか?」

「え。あー、はい。ありがとうございます」


一人でに騒いでる店員は最後だけ冷静に言ってきて俺は急いでアルシェの元へと向かう。


「止めて下さい! 連れが居るんです!」

「良いじゃんかよ~じゃあ、その連れも連れてな! 一緒に遊ぼうぜ!」

「ッ!───あ」


腕を掴もうしてくる手を必死払うアルシェは近づいてきた俺に気づきこっちに向かって走ってくると俺の背中に隠れた。そうするとアルシェを囲っていた男達が一斉に俺に睨みを利かせてきた。


「おい、てめぇか? 連れってのは」

「一応そうだが?」

「じゃあ、その子を大人しく渡してくれれば悪い様にはしないぞ」


わぁお、こんな台詞吐く人ほんとに居んのか。この前読んだ漫画と一門一句一緒の台詞だ。


また一段と睨みつける力を強くして俺を睨んでくる男達。俺と殆ど同じぐらいの背だからか余り怖いとは思わない。ても、ちょっと俺より高いけど、やっぱり怖くないわ。


本当はこんな奴、守る必要はない。人を脅してくる非道な奴はな。でも、アルシェが掴んでる俺の服からでも分かる。強気な顔で男達を睨む様に見てるが、身体は震えていて怯えてる。目も潤っていて何時でも泣きそうだ。


「はぁ。仕方ねーな」

「あ? なんだてめぇ! やんのかゴラ!」

「うーん。おう」

ちょっと悩んだけどやっぱり助けてやる事にした。


俺も男達を睨みつけて、威嚇する。そうすると額に青筋を浮かばせて殴り掛かってくる一人の男。それを顔に受けてしまうが、足で踏ん張り耐える。耐えた事に動揺した男の隙を見て一発殴り返す。一人の男は地面に尻もちを着く。


「いてぇな」


俺はそう言い睨みつける。それでも男達は後退りはしなく、二人掛りで殴り掛かってきた。


ええ。流石に二人は───。


「君達! 何をやってるんだ!」


前の方から警官の服を着た人達が警棒を持って走ってきていた。あ、良かったあ。これで大丈夫か。


それからアルシェに絡んできた男達は警察官に連れて行かれ、俺達も暫く事情聴取されてから解放された。

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