文化祭(下の四柊)アルシェ視点。

さて、私は旭さんの事が好きなんでしょうか? 自分でも分からないんです。この気持ちが旭さんが好きなのか、そうでないのか。


今の気持ちは旭さんから離れたくない、だけども、何処か違う様な気もする。別に離れても良いような、うーん、本当に分からない。離れたくないのもあるけど、離れても良いような………うーん、やっぱり自分でも分からない。


前々から可笑しいと思っていた、海の時も水着を見てくれなくて(実際には目には入っていたと思うけど見てみぬふりをされた)とても苛立ったし悲しいとも思った。それからバイト先でもそう、何時もキッチン担当の旭さんがホールに出てきて女の人と話している所を見るだけで胸が締め着けられる感覚がした。


何で、こんな気持ちになるんだろうとずっと考えていた。それで、これは“恋”なのではないのかと思い始めた。


いやいや、でも、私が誰かに恋なんて有り得ない。と考えた時もあったが、この気持ちを”恋“以外で説明が出来ないからそんな考えは直ぐに思考から消した。


「で、私は貴方が好きなんでしょうか?」

「知るかよ!! 俺に聞くな!」


改めて訊くと怒声を上げられて、怒られてしまった。やはり、聞いても無駄でしたか。もしかしたら答えを言ってくれるのではと期待のしたのですが、駄目でしたか。


「その、今は言いません。でも、本当にこの気持ちが好きと思えるものとなったら、覚悟して下さいね」


ちゅ、と旭さんの唇に自分の唇を当てる。一回したのだから二回しても変わらない。でも、あの時とは違う。心臓がドキドキしっぱなしで顔も凄く熱く感じる。



これはキスをしたからなのか、旭さんとしたからこうなっているのかどっち何でしょう? でも今はどっちだって良い。彼の真っ赤になっている顔を見たら満足しました。


あの時は絶望しきった顔だったのに、今は照れてくれるんですね。



「お前、ふざけんなよ」

「私に二度もされたんですから、喜びなさい!」

「誰目線だ! たっく、このやろう……」


此方を睨む旭さんはちょっと怖い。でも、顔が赤くなっているから可愛いとも思ってしまう。


「では、これからは覚悟して下さいね。陽愛にも負ける気はないので、うふふ───もう一度唇でしますか?」

「しない! したら問答無用で殴るからな!?」


あら、断られてしまった。少し残念。でも、断れると分かって居たからそれ程苛っともこない。



でも、これぐらいなら良いよね。


そっと旭さんの頬にキスをする。


「な!? お前!!」

「唇にはしていません。それと、防御が甘い貴方が悪いです!」

「はあ? いやいや! まずするなよ!」

「ええ、何で~?」

「いや、何でとかじゃくて…………はあ、それは本当に好きな奴にしろ」

「うーん。今は特に居ないですし、居るとすれば貴方かもしれませんから。セーフじゃないですか?」

「お前なあ。はあ、こんな事、陽愛にバレたらもう…………」


今の発言に苛っとする。何で今、陽愛が出てくるの? あーあ!! 苛々する!


「あぁぁ! もう! 良いですか!? またこれで私には逆らえなくなりました! 言う事を聞かなかったら陽愛にバラしますからね!」

「はあ?! ふざけんなてめぇ! さっき言わないと言ったろ!」

「それはそれ、これはこれです!」

「どういう理屈だ……」

「まあ、良いですが。忘れないで下さいね──私が貴方を狙っている事を」


彼は起こっていた顔から呆れ返った顔になり、此方を半目で見た後、目を瞑り、肩を落として溜め息をつく。


「へいへい。分かったよ」

「はい。お忘れずに」



こうして、文化祭は終わりを告げた。

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