おまけ ラナ、最終討伐試験 3
息を切らし、ホムラの誘導する場所まで辿り着いた先には、悲惨な状態が待ち受けておりました。
蠢く生き物は、この辺一帯の岩よりも頭一つ抜きん出て大きな巨体、金色に輝く尾羽、頭部の羽毛から突出している真っ赤な魔力瘤……
「あれが……
「腹が蛇みたいだから、『石蛇鳥』か。正直対面したく無かったな」
「しっ! 2人共、もう少し声を落として。……被害は……、駄目だ、3人足や手が石化し始めてる! 」
戦況は最悪です。他にも駆け付けた班がいたのでしょうが、3人程倒れています。立っている者の手足も石化していて、無事残っている者は岩陰に潜んでいますが、いつ石蛇鳥が暴れて岩を砕かれるか……
「私は直ぐにホムラと飛び立ちます! お二方は岩陰に隠れて魔法をっ」
「待てラナ!! 俺も乗せてくれっ」
ホムラを呼び寄せて跨がろうとした途端、ガイに腕を掴まれ私は身を固くしました。名前を呼ばれるのは久々ですので、驚いたのです。
「っ、飛竜は馬と違いますよ?! 酔うと貴方の魔法が! 」
「ラナさん、僕からもお願いするよ。正直、あれだけでかいと地上から打つ手がない。僕は負傷している者達を確保するのに専念する。貴女は石蛇鳥を炎で巻いておいて欲しい。その間、ガイ殿は魔力瘤に集中を。……どうかな? 」
「それで行こう。巻き込まれない様にな、チャーリー。ラナ、行くぞ! 」
そう言ってガイは勝手に私の後ろに跨りました。
「っ落ちても責任は取りませんよ、セレンディス様?! 行きます! チャーリーさん、気をつけてっ!! 」
「さっきは名前呼びだったってのに……」
ガイが後ろでぶつぶつ言っておりますが、ホムラの上昇速度が速く、風の音で私はよく聞き取れませんでした。
上空へ飛び上がっても石蛇鳥の大きさは際立っていて、私は息を飲みました。
「炎の渦を起こします。セレンディス様は魔力瘤を凍らせる事に専念して下さい! 」
「……分かった。あまり無茶はするなよ? 」
「それはお互い様ですわ!! ホムラもっと上へっ!! 」
ホムラに更に上昇して貰い、私は石蛇鳥を炎で捉えます。
「ぐ……う、硬いな。水属性を混ぜてもびくともしないっ! 」
ガイは魔力瘤に集中しているみたいですが、流石上級討伐対象です。ガイお得意の氷魔法でも時間がかかるみたいですね。
そうやって私が見守っている中、石蛇鳥が尾を左右に振り回し始めました。流石反属性、炎にびくとも致しません!
「不味い、石蛇鳥が暴れ出したぞ!! ラナ、もう少し炎を……」
「っ分かっておりますわ! 高温に致します、後はチャーリーさんに任せる他ありません!! 」
チャーリーは土属性の魔法騎士ですから、皆を守る土壁を作ってくれるでしょう……恐らくですけれど。
「グウワッガガアアァァ」
石蛇鳥が暴れ出し、周りの岩を崩し始めました。
あれではいくら他に人手が有ると言っても瓦礫であの場に残った人達が危険です!
「……ガイ、お覚悟なさって下さい。ホムラっ!! 行くわよっ!! 」
「は?! 何をっおおぉっ?!! 」
私はホムラに命令して、炎の渦の中に直滑降致しました。
「ホムラ、集中して。雷魔法をするっ!! 」
ホムラの魔力を貰い練ります。雷魔法は炎魔法と類似点は有りますが、その位は高位の為扱いが難しいのです。私の魔力だけでは練るのに足りません。
練り上げに成功し、そのまま剣に雷を纏わせます。
「ガイ!! もう一度瘤を凍らせて!! そこを一気に砕きます!! 」
「っ無茶な事をっ!! 」
そう言いながらも、ガイは頭部目掛けてかなり強めの魔法をお見舞いしていました。後はこの剣を瘤に刺すのみです!!
しかし、下を向いていた石蛇鳥の顔が、ぐるんっ! と此方へ向きました。
「っ気付かれた!! ガイ! ごめんなさいっ!! 」
「はっ?! お前っ!! 」
石蛇鳥が気付いたと同時に口を開けました。口から放たれる石化魔法を受けてしまえば、心臓まで一瞬で固まります。
私は少し落ちる起動をずらすと直ぐ様目を瞑り、ホムラから飛び降りました。
石蛇鳥の
後は私が速いか、石蛇鳥の魔法が速いかです。
そのまま落ちる速度に身を任せて剣を突き刺しました。冷んやりとしたガイの魔法の冷気は感じますがもっと上です。という事はこれは魔力瘤では無く眉間? それとも……
「この馬鹿っ!! 勝手な事をするなっ!! 」
頭上から声が聞こえたかと思えば、どん! という振動が体に響き、途端に足場が崩れ始めて私は体制を崩しました。
そのまま、……恐らくガイに抱えられて、私は少しの浮遊感を感じた後に地上へと降ろされたのでした。
恐る恐る目を開けると、そこは石化して崩れた石蛇鳥の残骸が広がっていて、私は驚いたまま隣にいるガイを見上げました。
ガイはと言うと……一目見て分かります。怒っています。あれだけの忿怒の表情、初めて見ましたよ?
「この馬鹿!! 何で1人だけでやろうとするんだっ!! 自分の手を見てみろ!! 」
そう言われ、私は手を確認してみました。剥がれて来ていますが、指先が石化していた様です。
「まあ……」
「まあ……って、お前なぁ……」
私が石化が剥がれ落ちるのに感心していると、遠くから声が聞こえて来ました。ペティが教官方を連れて来てくれたのでしょう。
ガイのお説教が長引きそうでしたので、私はほっと胸を撫で下ろしたのでした。
とにかく、脅威は去ったのです。お説教なんて聞きたくありませんから。
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