番外編 クリスマスプレゼント
ここは天国。
淡い色の世界で、たくさんの人や生き物が幸せに暮らしています。
「今日はどんな楽しい事があるのかな?」
ちいさなこいぬは、空を見上げて、青い鳥に話しかけました。
「そう言えば、明日はクリスマスですね。」
ゆっくり話をしようと、ことりが空から降りてきました。
「クリスマス?クリスマスってなぁに?」
こいぬは首を傾げています。
「こいぬさんは、クリスマスを知らないのですか?」
「うん、知らない!」
ことりはこいぬにクリスマスの事を教えてあげました。
サンタの事、プレゼントの事、パーティの事。ことりとこいぬの住むところでは冬にクリスマスがあったこと。
話を聞きながら、こいぬはきらきらと目を輝かせています。
「クリスマスに雪が降ると、幻想的でとても素敵なのですよ。」
ことりがうっとりした表情をしています。
「イイな!イイな!」
こいぬはぴょんぴょん跳ねまわっています。
「ここは、ずっと春だから、私が知っているクリスマスとはちょっと違うクリスマスになりそうですね。」
「ことりさんは、冬のクリスマスがいいの?」
こいぬが首を傾げて、ことりに問いかけます。
「そうですね。春も素敵ですが、たまには冬が恋しいですね。」
ことりはちょっとだけ寂しそうな表情をしました。
「そっか~。」
「こいぬさん、それよりプレゼントのリクエストを書いてみてはどうでしょう?」
ことりは優しく微笑み、こいぬに提案しました。
「プレゼントかぁ…」
こいぬは一生懸命悩んでいます。
「こいぬさん、サンタさんは、〝本当に一番欲しい物だけ〟をくれるそうです。素直な気持ちで書けばいいのですよ。」
「あ!」
こいぬは、せっせとプレゼントのリクエストを書き始めました。
「できた!」
「プレゼント、決まったのですね。私にも見せてください。」
ことりはこいぬの後ろに回り込みました。紙にはこいぬの不慣れなよれよれの字でこう書いてありました。
『ふゆとゆきがほしいな』
自分の事よりも、ことりのためにリクエストを書いたこいぬの優しさに、ことりは少しだけ声を震わせて言いました。
「本当に、優しいのですね。」
「ううん、僕も見てみたいんだ。まっしろな景色を!」
その日の夜…
ことりは少し困っていました。
「冬…雪…どうやってプレゼントしましょうか…」
ここは天国、エリア毎に季節が変わらない世界。こいぬとことりは春の世界に住んでいるため冬になることはありません。
目を閉じ考えていると、ふわっと何かがことりの頬を撫でていきました。
「あ。これは良さそうですね。」
ことりは頬を撫でたそれを一晩中かき集め、静かにこいぬのまわりに置いていきます。
「こいぬさん、きっとびっくりしますね。」
嬉しそうにふふっと笑うと、ことりは静かに眠りにつきました。
クリスマス当日の朝…
こいぬは目を覚ましました。
「わぁ!なにこれ!」
こいぬの目に飛び込んできたのは、真っ白な世界。
やさしくふわふわしたものが、こいぬを囲んでいました。
「こいぬさん、おはよう。」
その白いふわふわの中から、ことりが出てきました。
「ことりさん!すごいよ!雪景色!」
ふわふわの正体は『たんぽぽの綿毛』でした。ことりは一晩中たんぽぽの綿毛を集めて、真っ白な世界を作り上げたのです。
綿毛の雪をかき分け、こいぬはわちゃわちゃとはしゃぎ回っています。
「こいぬさん、これから一緒に雪の降る冬のエリアに行ってみませんか?きっと楽しい事がたくさん待っていますよ。」
「うん!一緒に行こう!楽しみ~。」
冬のエリアに向かって歌を歌いながら歩いていく、そんな二人の背中を、体格の良い白いひげを蓄えた老人が見守っています。
赤い服に白いもこもこの襟袖、ところどころに白いポンポンを付けたその老人は、そう、サンタクロース。
『2人が本当に欲しいモノ』を知っているサンタクロースは、言葉だけを残して空へ消えていきました。
「Merry Christmas」
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