第2話 白い友達


「ここなら誰も来なそうだし、ひとりになれるかな。」


空き地の草の上に座ると


ふぅ、とため息をつきあひるは涙を流し始めました。


「ワタシは、なんでこんな色なの?」


自分の羽を見つめるあひる。

むらさきのそれは、涙で滲んでいて、あひるにはいつもより汚らしく見えました。


「・・・・・泣いているの?」


「!?」

あひるはびっくりして硬直しました。

確か周りには誰もいないはず。恐る恐るゆっくり周りを見渡します。


やっぱり誰もいない。気のせいか…。


「紫の羽。とっても奇麗ですよ。」


「!?」

やっぱり誰かいる!


「誰?どこにいるの?」


何度見渡しても、空き地にはあひるしかいません。


「あなたの隣です。」


あひるが隣に目をやると、そこには一輪の白い花が咲いていました。

花が話しかけているの?そんなことあるの?


「話しているのは、お花…さん?」


クスクスとあひるは笑い始めました。花に話しかけている自分が可笑しくて。


「あ、笑った!あひるさん笑顔が素敵!」


白い花も小刻みに揺れ、笑っていました。


「すごい!お花さんは話が出来るのですね!」


「変な花でしょ?」


また小刻みに揺れています。


「ううん。優しい声。とても素敵です。」


「じゃあ、素敵同士ですね。」


今度は茎が曲線を描き、ぐーっと身体が曲がっています。

それは、まるで微笑みかけているようでした。


「素敵?わたしも?」


嬉しいような恥ずかしいような、驚いたような。そんな声であひるが返します。


「はい。」


お花は頷きながら言いました。


「そんなことはじめて言われた…」


いつもは我慢してグスっとするだけのあひる。

その時だけは、声に出してうわんうわんと泣きました。


白い花は、声を掛けず、風に吹かれただ左右にゆっくりと揺れています。

ひとしきり泣くとあひるは、スッと立ち上がりました。


「お花さんありがとう!また来てもいい?」


「はい!またお話ししましょう。」


村の方へペコペコと歩いていくあひるを見ながら

白い花は、葉っぱをひらひらと揺らしていました。


それから、むらさきのあひると白い花は、毎日のようにお話をするようになりました。


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