第5話 輝くあひる
次の日、空き地にはいつものように風に吹かれ左右に揺れる花の姿がありました。
そこに遠くから声がしました。
「お花さーん!」
いつもならペコペコと足音を立て歩いてくるあひる。
けれど、今日はその足音が聞こえません。
かわりに聞こえてきたのは、バサバサと空を飛ぶ音。
「お花さん、見て見てー!お空を飛べるようになったの!」
青い空には紫のあひるが、泳ぐようにすいすいと飛んでいます。
昨日の願い事が叶ったのか、あひるは空を飛べるようになったのです。
「わぁ、あひるさんすごい!気持ちよさそうですね。」
「うん!すごく気持ち良いよー!このまま本を借りに行ってくるね!」
いつもよりも明るい声で言うと、あひるは森の方へと飛んでいきました。
それを見送る花も、いつもより大きな声で応えました。
「いってらっしゃい!」
花は葉を大きくひらひらと振っています。
あひるを見送る花の反対方向、空き地から少し離れた木陰。そこに一つの黒い影がありました。その影はもぞっと動きつぶやきました。
「今の声はなんだ?聞いたことない声だな。」
「あとで、空き地を覗いてみるか。」
そう言うと、黒い影はぐーぐーと寝息を立て始めました。
しばらくして、あひるが空き地に戻ってきました。
「お花さん、お待たせ!本を借りてきたよ!」
あひるの隣に「神様の本」がふわふわと浮いています。
それを見て花はびっくりしました。
「あひるさん、本が浮いてる!?」
「空を飛べるようになったのと同時に、こうやって物を浮かせて持てるようになったの。」
「これでたくさんの荷物を運べるよ!」
あひるはえっへんと自慢気に話しています。
「すごいですね。素敵!」
花は葉を叩き合わせ拍手をしました。
あひるは、えへへと笑いながら、本を花に渡しました。
「初仕事お疲れ様。ありがとう。」
「誰かの役に立てるって、とても嬉しい!」
「あひるさん、とても輝いていますよ。」
花はとてもうれしそうに揺れていました。
それからあひるは、村の動物たちの荷物を運ぶお手伝いをはじめました。
毎日毎日、一生懸命に荷物を運び、その働きは村に無くてはならないものになりました。
活き活きと毎日を送るあひるは、カラス達からもいじめられなくなりました。
ところが、ある日・・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます