第5話 嵐


その日の夜。

今日も、丘の草花は月明りのスポットライトの元、サラサラと夜の歌を歌っています。


「どうしたのかなぁ?」


大きな木の下に、ぽつんとうさぎが一人で座っています。

草花の歌と風の演奏。キラキラと輝く星達のダンス。

いつも星空を見上げているうさぎですが、今日はずっと公園の入り口の方を見ています。

うさぎは明け方までたぬきを待っていましたが、

その日、たぬきは丘に来ませんでした。



それからたぬきは、うさぎを避けるようになりました。


「おはよー!」


「・・・」


うさぎが挨拶をしても返事が返ってきません。

そんな日が何日も続きました。


「わたし、何かしちゃったかな?」


「・・・」


たぬきは目も合わせず、離れていきます。


「毎日、丘で待ってるから!また一緒に星空を見ようよ。」


たぬきは、うさぎだけではなく皆を避けていました。

どんどん孤立していくたぬき。

しばらくして、たぬきは村をでて一人山小屋で暮らし始めました。


会話の中でちょっとした嘘をついてしまうかもしれない。

鼻が伸びるところを見られたら、嫌われてしまうかもしれない。

そう考え、他の人と関わるのが怖くなってしまったのです。

たぬきが山小屋の生活に慣れてきたころ、村に大きな大きな嵐が来ました。


「やだなぁ…怖いなぁ。」


嵐の夜にひとりつぶやくたぬき。

降り続ける雨、鳴りやまない雷。


「村は大丈夫かな?」


たぬきが村を心配して、気にし始めた時でした。

ガタガタ、ドンドンドン!

誰かが戸を叩く音がしました。


「たぬきくん!いる!?」


村のねずみが大慌てで山小屋に入ってきました。


「ねずみさん、どうしたの?」


「村が…村が流されてしまった…

 こんな山小屋じゃ危険だよ!安全な所に避難して!」


ねずみは息を切らせ、苦しそうにしています。


「え!?村が!?みんなは無事なの!?」


「みんな避難を始めてる…」

「でも…うさぎちゃんだけ、公園の丘の上に取り残されちゃって…」


ねずみが言い終わる前に、たぬきは山小屋を飛び出していました。


「どこいくの!?村には行っちゃダメだよ!避難して!!」


最後に会った時、うさぎが言った言葉。それがたぬきの頭の中で何回も繰り返されていました。


『毎日、丘で待ってるから』




「ぼくの…せいだ…」

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