第5話 こいぬのたからもの

もう、さすがに走れなくなり、こいぬはお花畑に転がります。


「すごく素敵な景色…こんなの初めて見た…」

「一緒に、一緒に見たかったな…」


薄れゆく意識の中で、こいぬはことりのことを思い出します。

いつも話を聞いてくれたことり。やさしかったことり。たよりになることり。

一緒に旅をして、本当に楽しいことばかりだった。

こいぬの心の中に、ことりとの想い出があふれていきます。

いっぱいになったそれは、ボロボロになったこいぬの目から涙となって流れます。



「……いたい。」




「……会いたいよ。」



今ごろ気づくなんて…。








「ことりさん、ことりさん。」





「ぼくのたからもの見つけたよ。」





「世界中のどんなものよりも、素敵なたからもの…。」





「見つけたけど、もう失ってしまった、たからもの…。」





「ぼくのたからものは…」














「ことりさん。」












誰もが足を止める美しいお花畑の上で、幾つもの太陽たちに見守られ、ちいさなこいぬは静かに息をひきとりました。






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