第7話 迷いの森
「おはよー!」
朝陽が昇るのと同時に、アノが元気な挨拶とともに飛び起きます。
「おはよう…」
「まだ眠いよ~」
アノの声に反応して、目を覚ます妹たち。いつもの光景でしたが、起きた場所はいつもと違います。
姉妹たちはその光景に、旅をしていることを実感しつつ出発の準備を始めます。
「朝ご飯はビスケットとフルーツでいい~?」
「うん!しっかり食べよう!」
姉妹は並んで朝ご飯を食べ始めました。
森を見ながら、もぐもぐと口を動かしているとアノがいつもより少し低い声で話し始めます。
「この森はね、不思議な事がたくさん起こるの。本にはどんなことが起こるのか少ししか書いてなくって…きっとみんなこの森に入らないからわからないんだね。」
アノは妹たちの方を向いて続けます。
「でも、きっと3人一緒なら大丈夫だから!離れないように森を進んでいこうね!」
「「うん。」」
モニカとラムは目を合わせるとアノに返事をしました。
ビスケットを口の中に詰め込むと姉妹たちは立ち上がり、森の方へ歩き始めます。
「「「不思議の森へ、しゅっぱーつ!」」」
姉妹たちが森に足を踏み入れると、周りの景色がグルグルと無数の渦を描き回り始めました。
「わわ!何々!?」
3匹は、離れないようにぎゅっと手を握り合います。
グルグルと回る景色。最初は怖いと思った3匹でしたが、段々と違う感情が芽生えていきます。
「万華鏡みたい!」
「きれい~」
空の青、森の緑、太陽の黄色、雲の白その他にもたくさんの色が混ざり合っていく景色は、万華鏡を覗いているかのような楽しさがありました。
アノとラムがうっとりと周りを見渡しているその横でモニカは気づきました。
「森の入り口が無くなっちゃった…」
不安そうに振り返っているモニカにアノが声を掛けます。
「大丈夫だよ!目的地は森を超えたところ!前に進もうよ!」
「うん…」
3匹はてちてちと森を進んでいきます。
最初は森の景色を楽しみながら歩いていた3匹ですが、しばらくするとある異変に気付きます。
「あれ?この道さっきも歩いてたような気がする。」
アノが立ち止まり言いました。
「ううん、多分違う道…」
「なんでわかるの!?」
「迷子にならないように、朝ご飯のビスケットを細かくして撒きながら歩いてきた…」
「ここにビスケットのかけらが落ちてないから、通ってない…」
後ろを振り返り、地面を指さすモニカ。
「モニカ…それ意味なかったみたい。」
アノとモニカが振り返ったそこには、口の周りにビスケットの食べかすをつけたラムが立っていました。
「ごめん~、モニカがこぼしてて勿体ないと思ったから~」
「でもまだ食べ足りないよ~」
「「もう!」」
アノとモニカは頬をぷくっと膨らませて怒って見せました。
それを見たのか見なかったのか、ラムがそっぽを向き鼻をスンスンと動かし始めます。
「でもお腹すいたね。」
「うん…」
朝から歩きっぱなしの3匹はとてもお腹を空かせていました。
「こっちからお菓子の匂いがするよ~」
ラムは今来た道の反対側を指さしました。
「本当だ…良いにおい…」
モニカも一緒に鼻をスンスンと動かしています。
2匹の様子を交互に見たアノは跳ねるように歩き出します。
「行ってみよう!」
3匹がお菓子の匂いがする方へ歩いていくと、そこにはお菓子の家が建っていました。
こいぬのさがしもの ゆきころ @korori
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