第4話 願い事

「落とし物、持ち主が見つかってよかったね。」


「そうですね。あひるさんのおかげですよ。」


あひるは照れた様子で空を見ています。


「神様の本も楽しみだね!」


照れ隠しをするようにあひるが言いました。


「はい!ところで、あひるさんは神様を信じますか?」


「うーん、どうだろうなー?見たことないからなぁ。お花さんは信じてるの?」


「信じていますよ。神様は空の向こうに居て、常にみんなを見てくれているそうです。善い行いも、悪い行いも。善い行いをすれば、きっと神様がその人を守ってくれますよ。」


白い花は、あひるにお礼を言うように語りかけました。


「素敵!」


少しの間、優しい風が空き地を吹き抜けます。


「あ!そういえば、願い事しなきゃだったね。」


あひるは黒犬の言葉を思い出し、慌てて言いました。


「そうでした。」

「願い事。急に言われると、出てこないものですね…。」


「本当!ワタシ普段はどうでもいいような願い事でいっぱいなのに。」


それを聞いて、白い花は小刻みに上下しています。クスクスと笑っているようでした。


「そうだ!」


あひるがバサッと羽を広げてくるりと回りました。


「ワタシさっき、お花さんの役に立てて嬉しかったから、人の役に立てるようになりたい!」


「わぁ。それは素敵ですね。」

「素敵なあひるさんがさらに素敵になりますね。」


また、あひるは照れた様子で空を見ています。


「ふくろうさんの宅配便、落とし物に気づかないくらい、きっと忙しいんだろうな。」

「ワタシも宅配便でみんなの役に立ちたい!」


「良いですね。私のところにも本を届けて欲しいです。」


「うん!最初のお客様はお花さんだね。」


あひるはさっそく願い事をしました。

みんなの役に立てるように。


その隣で、白い花も願い始めました。


「出来た!早く叶うといいな~。」


あひるは白い花を覗き込みながら聞きます。


「お花さんは何をお願いしたの?」


「私は、あひるさんの隣でお話をしたり、お昼寝してのんびりすごせるようにお願いしました。」


白い花は左右にゆっくりと揺れています。


「それじゃあ、今と変わらないよー。」


あひるは嬉しそうに笑っています。


「それが良いのですよ。」


花も嬉しそうに揺れていました。


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