第3話 魔法使いの家


あくる日、2人は黒犬の魔法使いの家に来ていました。

村はずれの森の中、ひと際大きな木には、窓やドア、雨よけが付き

木そのものが家になっていました。


「こんにちはー!黒犬さんいますかー?」


コンコンとノックをするうさぎ。


「返事ないね。」


「留守なのかな?」


うさぎとたぬきがため息をついた時、閉まっていたはずのドアがキィと音を立て

ひとりでに開きました。

ドアのそばにいたうさぎは、吸い込まれるように家の中に入っていきます。


「あ!うさぎちゃん、待ってよー」


たぬきもうさぎを追いかけ家の中に入っていきます。

壁いっぱいに木で作られた本棚、窓際にイスとテーブル。少々の生活用品。

それらはすべて奇麗に整理されていて、余計なものはありません。

魔法使いの部屋は、2人のイメージと違い、極々普通の家でした。


「なんかもっと暗くて怖いところだと思ってたよー。普通のお家だね。」


「うん、明るいね~。それにすごい量の本!難しそうなのばっかりー」


たぬきは見たこともない本に目を回しています。


「あ!つい入っちゃったけど、いけないよね。出よう!」


うさぎは慌ててドアの方に走っていきます。


「あ!うん…」


「!?」


返事をしかけたたぬきの目に、一冊の本が飛び込んできました。

タイトルは―



『変化の魔法』



「たぬきくん、はやくー!おいてっちゃうよー!」


「うん、今行くよ!」


たぬきもバタバタとドアに向かって走っていきます。

心を本棚に残して。


帰り道、たぬきは何か考え事をしているようでした。


「どうしたの?ずっと黙り込んで」


その様子に気づいたうさぎが、たぬきに話しかけます。


「あ、うん…忘れ物してきちゃったみたい。」


たぬきは、くるっと向きを変え、魔法使いの家に向かって走り始めました。


「うさぎちゃん、先に帰ってて!また夜にいつもの場所で!」


「うん、わかった!気を付けてね~」


2人は別々の方向に進んでいきます。

うさぎは、ふと気が付きました。


「あれ?たぬき君、何も持ってきてなかったよね…?」

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