むらさきのあひる

第1話 むらさきのあひる

ここは〝月夜ノ村〟四方を山に囲まれた、小さな村です。

学校へ行ったり、仕事をしたり、宴会をしたり。

この村では、たくさんの動物たちが

人間と同じように、毎日楽しく生活をしています。

そして、人間と同じように悩みを抱えている動物もいます。


「…グスッ」


穏やかな川沿いの広場、カラスたちは何かを囲んで声をあげています。

スキップするように、何かを中心にグルグル回りながら。

傍から見たら、とても楽しそうに遊んでいるように見えます。

その声が聞こえなければ…



「やーい!何もできないヘンテコー!」


「とんくさいヘンテコー!」


「…グスッ」


「泣いたー泣いたー、ヘンテコが泣いたー!」


カラスたちに囲まれている『何か』は、丸くなりグスグスと泣いていました。


「またなーヘンテコー!」


「泣き虫ヘンテコー!」


「飛べないヘンテコー!」


カラスたちは一斉に飛び立ち、青い青い空を泳ぐように飛んでいきます。

その場に残された『何か』はバサッと音を立てて立ち上がりました。

全身が紫、黒く小さな目、真っ黄色なクチバシ。

『何か』は世にも珍しい、むらさきのあひるでした。


「なんで、いつも意地悪するのだろう…」

「ワタシが何もできないから?」


「ワタシが泣くから?」


「ワタシがムラ…。」


言うのをやめて、あひるは歩き始めました。

目的地はありません。ただトボトボと歩いていきます。

どこをどう歩いてきたのかは、覚えていませんが、あひるは村のはずれの空き地に着きました。


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