第4話 恋する乙女
次の日、朝から子猫達は部屋でキャッキャと騒いでいました。
「モニカ!ラム!」
「アノ…ラム…」
「アノ~モニカ~」
3姉妹はお互いの名前を呼び合っていました。その笑顔から、名前をもらったことが、とても嬉しかったのだと伝わります。何度も名前を呼び合いはしゃいだ3姉妹は、疲れてその場にゴロンと寝転がりました。
「本当に素敵な名前!さすが黒犬様♡」
アノはうっとりとしています。
「「様!?」」
モニカとラムは同時に叫ぶと、それと同時にアノに視線を向けます。
「アノ…目がハートになってる…」
「アノ~、どうしたの~?なんか顔が赤いよ~お熱が出たのかな~?」
2人の言葉を聞いたのか聞いてないのか、アノは目をキラキラ輝かせ、さっきまで疲れていたとは思えないほどの勢いで起き上がり叫びます。
「恋はハリケーン!」
「恋は嵐のように突然やってくるの!そして、嵐のように激しく私の心を揺さぶるの!」
「なにそれ~?」
「わかんない!」
3匹は笑い始めました。
「アノ…意味わからない…」
控えめにクスクスと笑いながらモニカはアノに質問し始めます。
「アノは黒犬さんを好きになったのね…?」
アノは毛布にくるまり、一転恥ずかしそうにモニカに答えます。
「うん。」
どこから持ってきたのか、ビスケットをかじりながらラムもアノに質問します。
「じゃあ、アノはこれからどうアプローチするの~?」
アノは毛布にくるまったまま、床をごろごろ転がりながら、うーんうーんと考えています。同じ場所を何往復もするアノを横目にモニカとラムはひそひそと話を始めます。
「ラム…アノを応援してあげようよ…」
「うん~。でもどうすればいいのかな~?黒犬さんを餌付けする?」
「ラムじゃないんだから…餌付けできるわけない…」
「こういうの考えるの、アノが一番得意~、アノ頭いいから~」
その言葉でモニカはひらめきました。
「そうだ…こんなのどうかな…?」
モニカとラムはひそひそ話を終えると、てちてちとアノが往復する場所へと歩いていきます。そこでアノがくるまった毛布を踏み、動きを止めました。
「に"ゃ!」
急に動きを止められたアノはちょっと苦しそうな声をあげました。その様子が面白かったのか、少しにやけ顔でラムとモニカが提案をします。
「アノ~聞いて~」
「アノは頭がいい…わたしたちの中で唯一、字の読み書きが出来る…」
「だから~、黒犬さんを餌付けしよ~」
餌付けと言ったか言わないか、そのタイミングでモニカがラムの口を押えました。
「に"ゃ!」
ラムがちょっと苦しそうな声を上げましたが、構わずモニカが続けます。
「違う…黒犬さんは本をたくさん持ってる…」
「にゃ~にゃ~」
口を押えられたままのラムも何かを言って、頷いています。
「だから…黒犬さんの家に本を読みに行こう…そうすれば、黒犬さんと本の話を出来る…仲良くなれる…」
寝転がっていたアノは再び起き上がりました。そしてモニカとラムにぎゅーっと抱きつきました。
「名案!早速行ってくるよ!」
アノはバタバタと部屋を出て、朝ごはんの準備をしていた母猫に黒犬の家の場所を聞きました。場所を聞いたアノは、ご飯も食べずにすぐに家を飛び出していきます。
「いってきまーす!」
その様子を窓から見ていた、モニカとラムが手を振ります。
「「いってらっしゃーい」」
「モニカ!ラム!お礼に読んだ本の話を聞かせてあげるからね!」
手を振り返すと、降り注ぐ朝陽を浴びながら、アノは走っていきます。
家に残った2匹は、アノが走り去った場所を、口を開け見つめています。
「アノ、すごい速さだったね~」
「うん…まさにハリケーン…」
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