第7話 紫の羽


「なんだったんだ、あれ。」

「体が吹き飛ばされたぞ!」

「あひるがあんなに怒るとは思わなかった…」


3羽のカラスが山の木の上で話しています。


「あひるの癖に生意気だ!」

「ヘンテコの癖に生意気だ!」


2羽のカラスは怒りました。


「最近、調子に乗っているんだよ!」

「そうだそうだ!」


「・・・」


しかし、もう1羽のカラスは黙ったままでした。


1羽のカラスは悩んでいました。

自分たちの行いが良い事ではない、むしろ悪い事だと思っていたから。

しかし、自分が仲間外れにされるのが怖くて、2羽に合わせていたから。


「・・・」


1羽のカラスは怒っている2羽のカラスの事を大事に思っていました。

『このままでいいのだろうか。』

1羽のカラスの心に、紫のあひるの姿が映りました。

自分がいじめられている時に怒らなかったあひるが、いじめられた花を見て怒ったその姿が。


1羽のカラスは勇気を出して声を上げました。


「二人とも聞いて!」


カラスはまた3羽で話を始めました。




その頃、あひるは神様に会うために空をのぼっていました。

あひるには、空の向こうがどこかわかりませんが、真っすぐ上に飛んで行きます。


「なんでいじめなんてあるのかな。早く無くしてもらわなきゃ。」


あひるはいくつもの雲を飛び抜け、どんどんどんどん上に上に飛んで行きます。

白い花の幸せそうな揺れを思い出しながら。いじめのない優しい世界を想像しながら。その想像の中では、カラス達とも仲良くお昼寝をしていました。

しかし、飛んでも飛んでも神様は見えてきません。

変わらない景色、下がる気温、あひるの体力もどんどんなくなっていきます。


「神様は…いないの…?」


地上からどれだけ飛んできたでしょうか。

ついにあひるの体力に限界が来ました。まったく羽を動かせなくなり、重力に逆らえなくなったあひるは、勢いよく地上に引っ張られていきます。

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