第17話 VS冥竜アポピス➁
全ての参加メンバーの点呼が終わり、強化魔法の光が輝く。
かけるのは、一般的なもの。物理防御と対魔防御。陰陽師さんが、身代わりも展開している。
それと――う~ん、どうしようかなぁ。まぁ一応、かけとこう。
耐水防御魔法をパーティメンバーへ。
撫子さんから疑問のチャット。
「ナオさん、相手は闇属性ですが」
「理由はないです。ただ」
「ただ?」
「……何となく、あの姿。全体水攻撃とかやってきそうな予感が……勿論、状態異常付きで」
「なるほど」
「なら、私もかけておきましょう。陰陽師にも耐水結界ありますし」
「あーあー、理由はないんですよ? 符と呪力の無駄になる可能性高しです」
「先輩の言う事は真似するようにしてるんです、私」
「なら、全パーティにそうさせましょう」
「撫子さん、それは流石に」
「ナオさんの言う事は信じるようにしてますので」
そう言うと、撫子さんは全体へ、耐水魔法を追加するよう指示を出す。
当然「?」がいっぱい飛んで来たものの……【ナオさんの指示です】の一言で、沈静化。WHY? ナオの名前にそんな効力はないと思うんですけど???
「これで、良しです。まだ、他に気になる事はありますか?」
「あーうーん……」
「先輩、言っておいた方がいいです。それが勝敗の分かれ目かもしれませんし」
さっきも話かけてきたケモミミ陰陽師さん(♀)がそうただしてくる。
……こっちは、さっきよりも確証ないんだけどなぁ。
「……米国さんと欧州さんが、未だに突破出来てないところから、考えるとですね、おそらく、このボス、何かしらのギミックをクリアしないと絶対に倒せないと思われます。それをするのはNPCなんでしょうが、推測するに――途中、範囲即死攻撃を繰り出してくるものと思われます」
「根拠は?」
「『
「了解しました」
またしても、注意喚起。
……皆様、ちょっと聞き分けが良すぎるのでは?
事態についていけず、唖然としていると、怖い怖い鬼軍曹——もとい、詩人様からチャット。
『なーに、カッコつけてるんですかねぇぇ……この指示、ナオさんですよね? そうですよね? 普段、私に対してはなーんにも、助言してくれない白い人はどなたでしたっけねぇぇ……撫子さんの時だけ、そうやって、張り切るなんて、どういう事ですか(^^)?』
怖っ! 思わず、リアルの身体が引く。
いやだってなぁ……基本的にミネットさんも撫子さんも、指揮能力も戦術構築も高いから、助言なんかいらないだろうし。
所詮、ナオは最前線から引退した白魔。昔の実戦経験は、所々通じなくなっているだろう。オンラインゲームとは変化のゲームなんだから。
『カッコつけてなんかいません。合っているかも分かりません。さ、頑張りましょうー』
『そうですねー。頑張ってチャットしましょうねー』
『しませんよ。僕みたいな、新米白魔はついていくのでやっとなんですからね? 大型ミッションなんて、久方ぶり過ぎて……今、手汗が酷いです』
『嘘です。そう言いながら、撫子さんや、フジさんや、倉さんとはするんです! ……いやらしい。何時から、ナオさんはそんなチャラ男になってしまったんですか!』
『言いがかりにも程があるっ』
どうして、この詩人様は、突っかかってくるのか。
これから大一番だというのに。
【では――そろそろ、開始します。ごー!】
撫子さんの号令。平仮名に和む。これをわざとやってるなら、女の子って怖いけれども。ミネットさんだったらしそう。
冥竜アポピスの周囲には、雑魚モンスターが既に湧いている。その数、十数体。同時に戦っても勝ち目は薄い。
第一、その前にKY君――キョウヤというキャラだから命名されたらしい。男装していて本名はキョウコなのに……はっ! それでもKYさんか――が雑魚敵の範囲攻撃で死ぬ。
なので――雑魚モンスターをマラソンする部隊と、それを処理していく専属部隊が今回は編成されている。
普通のミッションボスなら、雑魚の無限湧きはないのだけれど……今回は、まさかの無限湧き。多分、これはKY君を生かして、魔法を唱えさせると封じられるのだろう。
……で、おそらくそこからが本番。そこまで生き延びられれば、だけど。
何にせよ、ナオの任務はただ一つ、何やら一生懸命、魔法書を捲りながら、冥竜の範囲攻撃に入り込むKY君を生かす事。ついでに、余裕があれば、前衛陣のサポート。
や、やる事が、昔と変わってないっ。いやまぁ、白やらの任務が劇的に変わってたら驚愕だけど。
マラソン班が雑魚を釣り、ボスまでの路が開かれた。
【今です! 各班突入! 各員、薬品他、ケチらないようにっ! そんなんじゃ何時まで経ってもモテませんからねっ!】
ミネットさんのチャット。
お~ちゃんと副指揮官してるんだ。なるほど、全体統括=撫子さん。戦術指揮=ミネットさんか。
……女神と魔王。飴と鞭。統治の基本ですね。
『誰が魔王ですか。誰が』
『何も言ってない。あ、にゃー』
『猫ですか……丁度良かったです。まだ、三味線をミネットは持ってませんから』
『ぐ、軍曹殿! 今は、戦闘に集中をっ!』
『……ナオ四等兵。後で、古教会裏に来るように』
ひぃ。懲罰されちゃうっ!
——撫子さんが冥竜を挑発し、タゲを取る。
で、その近くでKY君が何やらしている。早速、範囲攻撃でHPが減少。
おおぅ……確かにこれは死ぬわ。
回復魔法を――何やら喋っている。「うぐっ……でも、そうか、これが冥竜の……」。ふむ?
「ナオさん、KYの回復を!」
「撫子さん、僕を信じてくれますか」
「勿論」
「ありがとうございます――賭けですけどね。多分、合ってると思います。間違ってたら、責任は取ります」
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