第26話 VS冥竜アポピス⑥
撫子さんの挨拶もそこそこに、ナオ達はミッションポイントへ移動。次々と突入。
正しく少数精鋭。それぞれが『常識、何それ? 食べれる?? 美味しい??? 幾らで買える????』と真顔でのたまう、廃神様集団。技量は勿論だけれど、この人達、みんなお金持ちなのです。
毒・暗闇・呪いは各自、自前の薬品で回復するし、回復アイテム(一本、数万する物も含め)ふんだん。というか、過剰。う~ん……技量+お金の組み合わせは結構、凶悪だからなぁ。賛否両論はあるだろうけど、今回は、勝ってなんぼのミッション戦。しかも、僕等の女神、撫子さんの名誉とストレス軽減がかかっている。なら、反則以外は是認すべきだろう。勝てばいいのだー。
ま、僕を含め、後衛はその分、厄介な状態異常回復や、HP管理に専念出来るから有難くはある。
あるのだけれど……さっきから、やたらとフレンド登録依頼がくるのはなんでだろ? あと、廃難易度コンテンツへの勧誘もいっぱい……やりませんよ? 今日勝ったら、僕はまた白ソロ+錬金術で日銭を稼ぐの穏やかな日々に戻るんですから。
……その前に、現実の試験が待ってますけど。
オフ会はなぁ。やるのかなぁ。絶対に、会った瞬間に冷たい視線で見られそうなんだけどなぁ。
僕が何となくブルーになっていると、撫子さんが全体へ指示を飛ばした。
【突入後。各PTは点呼及び、強化を開始。今日は勝ちましょう。あと、皆さん、ナオさんを裏で勧誘していると思いますが、既に売約済みです。話がある方は、私かミネットさんを通して下さいね】
【!? 撫子さん、私はそんな権利をお渡したつもりはありませんっ! ナオさんは私の奴――下――捨て駒にして、肉盾なんですからっ!!】
【さ、流石、鬼軍曹。ツンデレだと思わせておいて、最後まで救いがないっ!】
【そこに、痺れないし、憧れないし、ただただ怖いっ!!】
【ナオ……生きろよ、うん】
【こんな怖い人と組んでないであたしとどうですか? 結構、尽くす女ですよ、あたし】
【中学生のちびっ子より、私がいいんじゃないかな? 同い年くらいだと思うけど!】
【皆さん、そこらへんで。寛大なミネットさんなら許して下さるかな、と……ダメ、ですか?】
【……ナオさん!! 終わったら、廃教会裏ですっ!!! お話があります……】
再び、天井を見る。
おかしいな。一言も発してないのに、何故か僕の責任になっている。律、なんだい、その視線は。
溜め息をつきつつ、モーションで両手を掲げさせて降参。
周囲からは、「www」やら「ナオさん、あんたって人は……どういう風に虐められたか、後で詳しく」「つーか、オフ会でもこの二人、このノリなのか?? 風の噂では軍曹殿は、女子高生。しかも、自称美少女らしいが……」「現実は非情だぞ? これで美少女で、しかも、このノリだったら俺は……俺は……拳でナオさんを……!!」楽しそうで何よりですが、貴方、白と並ぶ非力な召喚士さんですよね? ここまでナオは一言も発してないのに、何故、微妙にヘイトを高めているんでしょうか。
適度に息抜きをしながら、全体を強化していく。
既に、アポピスの周囲には、雑魚モンスターが出現している。
撫子さんの確認。
【皆さん、準備はOKですか?】
【おk】
【さー今日も派手に死のうぞっ!】
【死ぬのはあんただけなー】
【そうそう。で、俺らが
【……ふっ。負け犬の遠吠えよのぉ、撫子殿、こちら大丈夫でござる】
【大丈夫そうですね。ナオさん】
【作戦は、前回と基本同じです。おそらく、途中で魔女も敵として出現すると思いますが――手筈通りに。エヴァさん、アタッカーの指揮は御任せします】
【高いよ? 一日デートね】
【ゲーム内ならいいですよ。期末試験後ですけど】
【仕方ないわね。任されたわ。アタッカー班! 私の顔に泥塗ったら、前衛、後衛関係なくPVP100本ノックだからねっ!! 気合入れなっ!!!】
おそらく、僕が知る限り、倉、同志! に匹敵する猛者の一人である人族の女性キャラを操るエヴァさんが、物理・魔法アタッカー陣に檄を飛ばします。
指揮能力と、戦況を見る「目」に長ける人なので、まぁ魔女は容赦なく排除してくれるでしょう。
問題は……そこまでメイン盾PTがもつか。
『……ナオさんは、ほんとっ無駄に、女の人の扱いが上手いですね。なんですか? 経験豊富なアピールなんですかっ? いやらしい!』
『な~お~ぉ。…………私も頑張るからデート! デートぉぉぉ!!!!』
『ナオさん、ありがとうございます。ですが、そうやってご自身を安売りするのは駄目だと思います。私もお願いしますね♪』
何処かの詩人さんと、女子校生と、その親友さんから間髪入れずにチャット。エヴァさんは、冗談だと思うけど?
画面を見ていると、藤さんまでナオを蹴るモーション。酷い。数少ない味方だと思っていたのに。同じPTの陰陽師さんと踊り子さんは、大げさに首を振っている。
――さ、みんな肩の力は抜けたかな。
撫子さんへ頷く。
【では――いきましょうっ! 世界最速クリアの称号は私達の物です!】
即座にみんなが各持ち場へ散っていく。その動きに、一切の無駄がない。集めておいてなんだけど、とんでもないな、この人達。
『…………ナオさん、とっとと終わらして、廃教会裏へ集合ですからねっ!』
その筆頭たる詩人さんはご機嫌斜めなようだけど、ま、まぁ、何とかなるだろう、うん。
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