第27話 俺の安心
本堂の前で合掌を解いて目を開けた俺はすぐに隣を向く。するとそこにはこの場所ではもう見慣れた我が妹がいるのだが、どこか呆然自失と言った表情を見せる。どうした?
「亜澄?」
すると緩慢な動きで俺に振り向き、苦笑いを浮かべる。そして両手を胸に当てるのだ。
「えへへ。お兄ちゃん、ブラ買いに行きたい」
「は!?」
その言葉に驚いたのと、亜澄の胸の変化に気づいたのは同時で、俺は亜澄のおっぱいに釘付けになった。
「で、でかい……」
「えへへ。家に帰ったら、お兄ちゃんだけには特別に触らせてあげるからね」
「むむ」
揉むのはダメかな? ってバカ! 俺のアホ! なにを妹に欲情しているのだ。マジで恥ずかしいし、自己嫌悪が半端ない。
しかしこれも間々観音のご利益なのか? この非科学的な事実を俺は受け入れるべきなのか?
そもそもオカンの乳癌完治を願って通っていたのだ。だからこそ、オカンの乳癌完治を切に願う。亜澄には悪いが、それこそ亜澄の胸よりもオカンの方にご利益がほしい。
そんなことを思いながら靴を履いて階段を下りた時だった。
むにゅ。
なんだ? この感触は。その柔らかさと、鼻孔をくすぐる髪の匂いにつられて俺は横を見た。すると亜澄が俺の腕を抱えて、肩に頬を寄せて笑顔を浮かべている。
「今日着けてたブラ、ホックが壊れちゃって」
「……」
そんなことを言われてもなんと言葉を返したらいいのかわからん。しかし俺は1つの事象を理解した。
あぁ、これがおっぱいの感触か。なんと素晴らしい。涙が出そうだ。
「ブラを手で抱えたまま歩くわけにもいかないし、こうしてるとブラが押さえられるから」
その尤もらしい理屈に俺は納得をするほかない。初夏の薄着に模られた亜澄の胸は綺麗な曲線を描いていて、襟元から見える谷間は抜群に奥行きがある。
「あぁ! お兄ちゃん。顔、真っ赤」
「……」
亜澄が揶揄うように笑って言うが俺は何も答えられず、俺の腕で圧し潰された亜澄の胸を凝視するばかりだ。もうこればかりはどうしようもない。恋焦がれた感触に感動しているのだから。
「なんなら車の中で早速触ってみる?」
「う……、冗談言うな!」
一瞬「うん」と言いかけた自分が情けない。相手は血の繋がった妹なのに。けど興味が捨てきれない。しかし亜澄だって俺から能動的に本気で触られても困るだろうし、面白おかしく揶揄って言っているのだと思うが。
とりあえず俺は駐車場に向かって歩を進めた。すると1歩1歩を踏み出す度にその弾力が揺れを伴って伝わった。そして亜澄が小さな声で言うのだ。
「冗談じゃないんだけどなぁ」
くそぅ! 本気で触りたい。そんなことを言われては勘違いしそうになる。
いくらブラコンの妹でも生活の中で見えてしまうことや接触してしまうことは平気だろうが、意のままに触られるのは抵抗があるはず。今は豊胸が叶って浮かれているから冗談を言っているに決まっている。
けど、やっぱり手のひらで触ってみたい……。て言うか、揉んでみたい……。
まぁ、所詮は童貞の俺だ。そんなことなどできるはずもなく、車を走らせてランジェリーショップに向かった。道中、信号待ちの時などシートベルトが食い込む亜澄の胸に釘付けだ。
その中にはホックが外れたブラジャーがあり、つまりカップはいとも簡単に捲れるわけで、それがオープンされたらお花畑の双丘が広がるのか。
「うふふ。見てる、見てる」
亜澄はそんな俺の視線を感じて面白おかしく笑う。今までだったら揶揄われたくない一心ですぐに視線を外していただろう。しかし俺は感動のあまりそんなこともできず遠慮なく見ている。
やがて名古屋市内に入ってランジェリーショップまでやって来た。ショッピングモールの一角の店舗で、その売り場の敷居の高さに俺は入店を躊躇する。
「お兄ちゃん、行こう?」
「……」
何も答えられない。しかし亜澄が腕を外すとホックの壊れたブラジャーが垂れるはず。どうしたものか。いや、既にここはランジェリーショップだから、ある程度だらしないブラジャーでも亜澄1人で入店できるのでは?
と思っていると亜澄が俺の耳元に口を寄せて言うのだ。
「お兄ちゃん、私もうお小遣いないから上下お揃いの下着買って。全部お兄ちゃんの好きなデザインを選んでいいから」
バクンと心臓が跳ねたかと思うと今までの躊躇が嘘のように、亜澄に腕を抱えられたまま俺は迷いなく店の中に進んだ。少ないシフトのアルバイト代はそのほとんどが亜澄の下着に消えたが、我が選択に悔いなし。
「うふふ。5着もありがとうね」
「うん。喜んでもらえて良かったよ」
俺の心からの本心だ。午後からはオカンのお見舞いに行くが、その前に腹ごしらえである。ということで俺たちは今、ランジェリーショップがあるショッピングモールのフードコートで昼食を取っている。
亜澄は長く綺麗な黒髪を耳にかけてスガキヤのラーメンをちょろちょろ啜る。長いまつ毛が下を向いてその綺麗な顔立ちを際立たせていた。亜澄の顔は飽きる程認識していたはずなのに、なぜか見惚れてしまって心から美少女だと感心する。
首も手も、今はテーブルで見えない脚も細くてすらっとしている。ウェストなんかは括れているし、これが亜澄の女としての魅力なんだろうと思う。やっぱりシスコンを自覚してから俺はおかしい。
そしていつまでも目が離せないのが胸だ。これほどの美少女に曲線美が加わると、破壊力が段違いで感嘆する。亜澄のTシャツは家を出た時とは装いを変え、今やパンパンに張っている。
インナーにキャミソールを着ているのでブラジャーは肩紐くらいしか透けていないが、俺が選んだその下着を今着けているのかと思うと高揚する。
やがて食事を終えた俺たちは再び車に乗ってオカンが入院する病院までやって来た。亜澄と手を繋いでオカンの病室までやって来ると、オカンはいつものように退屈そうにスマートフォンで遊んでいた。
「あれ? お父さんは?」
入室一番亜澄がオカンに問い掛ける。するとオカンはいつもの優しい笑顔を浮かべて答えた。
「今、病院のレストランでご飯を食べてるわ」
「そっか」
外見上の印象は昨日のお見舞いの時と変わらない。先週よりもオカンの頭髪は薄くなったというものだ。しかし亜澄との会話の中で浮かべた笑顔が昨日よりも元気そうに見えた。それなのでと言うか、決まり文句のようにと言うか、俺はオカンに問い掛けた。
「調子どう?」
「ふふふ。それがね、聞いてよ」
すると表情に嬉しさがより強まって、オカンは誇らしげに言った。
「今日出た数値が凄く良くてね、快方傾向だって先生に言われたの」
「本当!?」
これには亜澄が食いつき、オカンのベッドに身を乗り出す。凄くいい報せで俺も喜びが爆発しそうになったが、ここで気を保つ。
オカンは俺たちに心配をかけさせまいと強がっている疑念がある。だから鵜呑みにはしない。亜澄もいるので聞くのも躊躇ったが、俺は言った。
「オカン、本当に?」
「ふふ。本当よ。あなたたちを安心させたくて嘘を言っているんじゃないわ。なんなら後でも今からでも先生に聞いてらっしゃい」
敵わない。やっぱりオカンは俺の思考をわかっている。すると亜澄が少しだけ頬を膨らませて俺を見るのだ。睨んでいるようにも見える。
「本当だよ、お兄ちゃん」
なんだ? その自信の根拠はどこから湧く? とは言え、オカンも先生に確認して来いと言うほどだ。その確認はするまでもなく本当のことを言っているように思えた。
たぶんオカンは治る。科学的な根拠はない。しかし亜澄の自信が移ったかのように俺にもそんな自信が芽生えた。
「あら? 亜澄、胸大きくなったんじゃない?」
「えへへ。気づいてくれた?」
この後は穏やかに時間が過ぎ、やがて昼食から戻った親父も加わり、病室で家族団らんの時を過ごした。
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