010.「疑問之種」

 それから、三日が過ぎた。


 その間俺が何をしていたのかと言えば、病院のベッドの上で何をするでもなく過ごしていた。日本だろうが異世界だろうが、病院が退屈なことに変わりは無いらしく、エミィから受け取っていた携帯端末で暇を潰す日々だ。

 そもそも何故に病院かと言えば、最後の大立ち回りを行った時の無茶な挙動で、俺の肋骨が悲鳴を上げて疲労骨折し、ついでに慣性に振り回されて脳震盪を起こし、鼻や目の血管が一部切れてしまったからだ。レイルズの弁を借りれば、彼がエミィからの連絡を受けて駆けつけた時には、骨折と強烈な慣性に負けたと思われる俺がシートの上で鼻血を流しながらぐったりとしていて、傍らでエミィが取り乱し、泣きながらユートを助けて欲しいと懇願してきたそうだ。……まぁ本人は否定していたし、これは話半分に受け取っておくことにしよう。


「しかし、派手にやったものだね」


 トキハマを訪れた目的の商談を終え、病室に立ち寄ったレイルズに、あの日あっさりと気絶してから後の話を改めて尋ねてみると、彼は呆れながらそう言ってきた。

 ちなみに、レイルズとは病室で目覚めた直後に少し話をしたくらいで、他に突っ込んだ話をする相手もいない俺とエミィには、何の情報も入ってきていない。俺はと言えば病室で寝たきりだし、エミィはアンダイナスから出られないものだから、情報収集も何も無い。


「……そんなに大事になってるんですか?」

「ならないわけが無い。トキハマの表玄関でバグの大群との大規模戦闘が発生して、それだけで大事件だっていうのに、実は郊外でもう一件戦闘があって、クラス3のバグのおよそ三割はそっちに集中していて、しかも正体不明の戦闘用リムが全滅させていた……なんて、格好の話題じゃないか」


 苦労したんだ君達を隠し通すのには、と続けるレイルズは、しかしどこか楽しそうだ。


『骨折り損をしたように言っていますが、その見返り以上の儲けは確保しているようですね?』


 その様子を端末越しに見ていたエミィが指摘すると、レイルズはばつが悪そうな笑い顔。まぁ、この人がそう簡単に損ばかりを取るわけがなかった。大方、今日まで病室に来なかったのも、商談以外にその降って湧いた儲け話も片付けていたとか、そんなところだろう。


「ともあれ、こいつを見て欲しい。昨日あたりからネットで出回っているものなんだがね」


 そう言って、俺のものよりも幾分大きめな画面を持った端末を取り出したレイルズは、一つの映像ファイルを再生し始める。

 そこに映っていたのは、遠目から映った物を引き延ばしたのだろう、かなり荒い映像ではあったが。


「これって」

「ああ。日が沈んだ後だからはっきりとは見えていないが、君達だろう」


 やけに目立つ砲撃音とは裏腹に、見えているのは白い機体が、時折噴射されるブースターの青白い光(光の正体は、レーザーで励起された熱源の気体プラズマらしい)に照らされて浮かび上がるところだけだ。周囲に居るはずの他のバグは、真っ黒な背景に溶け込んでよく見えない。


「映っているのがこれだけだったのは幸いだったな。どうやって戦っていたのかも、機体の詳細な姿形も、これだけじゃ判別出来ない」

「俺としては、もっとちゃんと映ってて欲しかったんですけど」

「そんなことになってたら、君は今頃こうして落ち着いて寝てなんていられなかったよ」


 映像の流出元は、農地の所有者が管理していた無人の農作業リムで記録されていたものなのだという。本来は防犯用に備え付けられたカメラが捉えたもので、バグや俺達が軒並み荒れ地に変えていた農場の中で、奇跡的に動いていたものらしい。

 俺達が人知れず行った戦闘はこの映像でようやく人々に知れ渡り、しかし現場に行ってみれば荒れ果てた農地とところどころに散らばるバグの残骸だけ。派手な戦闘があったことは窺えるものの、それ以外は一切謎なものだから、推測と伝聞に尾ひれが付いた噂話がまことしやかに囁かれているという。

 曰く、五年前のエヒトの事件後に目撃された碧の巨像ブルージャイアントの同型機だとか、乗っているのは身の丈二メートルを越す大男だとか、はたまた可憐な美少女が駆るとか、実は世界の支配者階級が持つ超文明の遺物だとか、動力は根性だとか。


「そういえば、二つ名も付いていたね。確か、銀の背中シルバーバックとか」


 ゴリラ型の機体にシルバーバックなんて、妙な符合もしたもんだな。そういや、この世界ってそもそもゴリラとか存在するのかな。


『しかし、これだけ目立ってしまうと今後のアンダイナスの運用に不安がありますね』

「ああ、そこは心配要らない。機体を回収したその足で懇意にしている工房に運び込んだだろう? そこで修理に合わせて、機体も塗装し直させている」

『塗装……?』


 画面からエミィの顔が消える。と思ったら、今度はげんなりとした顔で戻ってきた。一体何があった。


『……ユート。これを』


 そう言われて改めて端末を見れば、そこにはアンダイナスの頭部かららしい映像に画面が切り替わる。ふと、違和感。


「真っ黒じゃん」

『ええ。工房の中があまりに騒がしいので、外部の音声や映像を切っていたのですが、その間に』

「間に合わせで行ったものだし、気に入らなかったら君達で好きなように塗り直してくれ。その塗装費用と、腕の傷の修理代、あと入院費用は私の方で出しておこう」

「随分と気前が良いですね」

「いやぁ、君達が倒したバグは良い値で売れたよ。何しろあれだけのまとまった数、それもクラス3の素材だ。欲しがる客はいくらでもいるからね」


「大儲けしてるんじゃん! 何が苦労しただ!」

「商売人は、機を逃さないものだよ。とはいえ、君達に払う金額にも色を付けておいた。それでとりあえずは勘弁しておいてくれ」


 そう言って、レイルズはまたも端末を操作し、次に表示されたのは何やら銀行振り込みの記録らしい画面だ。

 振込先名義は、ジュート=コーウェン。俺の新しい戸籍に紐付いた銀行口座らしい。そして振込額は、


「これ、桁違ってません?」

「違わないよ。それだけ君たちのした仕事は大したものなんだ」


 多くは語らない。

 とりあえず、俺は一年は何もしないで暮らせるような身分になったことだけは確かだった。


 ◆◆◆


「すっかり長居してしまったね。私はこれで失礼するよ」


 諸々増えた仕事を片付ける都合もあり、逗留予定を一日延ばしていたレイルズは、明日トキハマを発つとのことだった。

 何かにつけて世話を焼いてくれた彼には、礼をいくら言ってもまだ足りない。いつかまた、今度はちゃんとした形で礼をさせて欲しいと言うと、


「商人にその手の約束は命取りだよ。今の時点で、私も君たちから少なくない利益を受けた。気持ちだけにして、次に会うときは友人として会えたらと思っているよ」


 そう答える彼は、どこまでも男前なのだった。

 そしていよいよ別れとなった時、俺は彼にこう尋ねていた。


「そうだ、レイルズさん。トキハマの名前の由来って知ってますか?」


 ベッド脇のテーブルに置かれた端末越しに聞いているだろうエミィは、しかし、何も言わない。


「また変なことを訊くものだね。確か、」


 そして教えてもらった話で、俺はこの世界に来たときには得られなかった、疑問の答えを一つ知る。



「エミィ。聞いてたんでしょ?」


 レイルズが病室を去り、静かになった病室の中、俺はエミィにそう声をかけた。


『はい』

「それじゃ、俺が聞きたいこともわかるよね。誤魔化しは無しで、教えてもらいたいんだけど」


 観念したように、エミィが目を伏せ、そして告げた。


『……暦が何度か変わっていますから、ユートの知る言葉で言えば、今は西暦で5524年になります』


 その言葉に、何も思わなかったと言えば嘘だ。しかし、やっぱりな、という気持ちの方が強い。

 レイルズが語ったトキハマのあらましはこうだ。この土地に根付くことを決めたのは、遙か昔にあったニホンという国にルーツを持つ民族だった。その時、ニホンの国鳥として定められ、一度は国土から姿を消したものの不断の努力と技術力で復活させた朱鷺という鳥から、この土地が幾度危機に瀕しようと復活できるようにという願いを込めて、朱鷺羽摩トキハマと名付けたのだという。

 美談っぽく聞こえるあたりが胡散臭いが、肝は彼らが日本人を源流に持つというところだ。思えば、目覚めてからこの方、俺は技術やらには驚きを得たが、一般常識や生活様式に対しては何も違和感を抱かなかった。

 何より、今。他の建物よりもいくらか背の高いこの病院の、今俺がいる病室から見える外の景色。

 そこには、明らかに日本家屋と見えるそれと、現代的な高層建築が同居するような町並みが広がっている。この光景は、俺が知る日本のそれと相通じるものがある。

 食事は俺になじみの深いものばかり、食器も使い慣れたもの。寝具、礼儀作法、その他何もかもが俺の知る世界と変わりがない。となれば、この世界は俺のいた場所と地続きなんだと、そう思った方が自然だ。これで今でも異世界が云々と言うのであれば、相当頭が足りていない。


「しっかし、ちゃんとした質問じゃ無いと答えが返ってこないとか、ちょっと厳しすぎない?」


 あの時俺が、ここはどこか、ではなく、今はいつか、と聞いていれば、その場で答えが返ってきたことだろう。


『元いた世界では無いどこか、と言われれば、未来も似たようなものではないですか』


 心外だ、とでも言いたげにエミィが返す。


「異世界じゃなくて、未来か」


 そうと判れば、聞けること、聞かなければいけないことも自ずと定まる。例えば、俺はどうやってこの世界から、

 ――その先は、考えないことにした。代わりに、もう一つ聞きたかったことを思い出す。


「エミィさ。俺の名前の呼び方、なんでずっと元のままなの?」


 ベッド脇のネームプレート。そこに掲げられた、ジュート=コーウェンの名前。

 レイルズが手続きをしてくれたお陰で、俺はこの世界で生きるために必要な、自己の証明手段を得ていた。何となくノリで付けたようでばつが悪いが、しかしその名前は、今の俺にとっては正しく自分の名前であるべきだ。

 なのに、エミィはその名前で呼んでくれない。


『ユートは、元の名前が嫌いなのですか?』

「いや、好きとか嫌いとかの話じゃないでしょ。俺の名前はもうジュートになったわけでさ」

『私は、ユートという名前、好きですよ』


 虚を突かれ。

 俺は、エミィの顔が映る端末とは逆方向に顔を向ける。顔が熱い。自分で赤面しているのがよくわかる。くそ、不意打ちだこんなの。しかも、本人は何でもないような顔してやがる。


『まぁ、そんなにジュートと呼んで欲しいのであれば、こうしましょうか。ユートのことを、私が一人前と認めれば、呼び方を改めることにしましょう』

「……何だそのあやふやな基準。大体、あれだけ頑張って操縦したのにまだ半人前扱いなわけ?」

『何を言いますか。操縦にしたって下半身のみ、常識も完璧とは言えず、何よりあんな程度の戦闘であばらを折って入院するとは脆弱に過ぎます。私が居なくてもあれだけの戦闘はこなしてくれるようにならないと、一人前とはとても』

「ハードル高すぎじゃね!? 前代未聞の戦果ってレイルズさん言ってたじゃん!」

『余所は余所、うちはうちです』

「オカンか!」

『少なくとも、私と共に居る間は、私はユートの水先案内人であり保護者です』

「認めんなよ! くっそ、たかだか鼻血だして倒れてたくらいで狼狽えてたくせに」

『……あれは、この程度で倒れるとは情けないという、予想外の虚弱っぷりに慌てただけです』

「言い訳下手か、このツンデレ」

『ユート。その言い回しでは、言葉の意味が繋がらないような気がしますが?』


 ……。

 そうだった。エミィには、かわいいという意味だと言ってあったんだった。


「……言い訳下手がかわいいという概念が世の中に有っても俺はいいと思う」

『なるほど。ですが、私に相応しい形容詞はツンデレよりも、むしろクーデレの方ではないかと』

「知っててからかってたのかよ!」


 画面の中でエミィが笑う。

 それはそれは、楽しそうに。

 それを見て、ついさっきまで胸の中に澱として沈んでいた疑念は消え去り、こう思ってしまうのだ。

 暫くはこのまま、付き合っていこうか。彼女が、傍に居てくれるなら。


 ◆◆◆


 夜になった。

 エミィに就寝を告げ、端末から彼女の声が消えて、暫く。俺は病室にそれを放置したまま、病院の裏手にある小さな公園に出て来ていた。治療を受けても肋骨は痛むし、それを堪えるために松葉杖を突いての徒歩だけど、今日に限って言えば無理を押してでも外に出る必要がある。

 辺りには街灯り。数日前まで、日が沈めば全てが闇に飲み込まれる荒野に居た身としては、この明るさは少々眩しい。おまけに、静寂ではなく、周囲は人が動く音が未だ多く聞こえている。繁華街で呼び込みをする人、携帯端末から聞こえる何かのアラーム、そこかしこで街中での使用を目的にした二足型リムデュアレグの駆動音が響き、そして人の足音が。

 待ち人が来たらしい。


「やぁ、待ったかな」


 そこに現れたのは、半日前に別れを告げたばかりのレイルズだ。


「いえ。こっちも、ついさっき抜け出してきたところなので」

「そうか。エミィさんに聞かれるような心配は?」

「端末もヘッドセットも置いてきてます」


 彼が自分の端末を俺に向けて、報酬の支払い金額を提示したその時。一瞬だけ画面が切り替わり、そこにこう表示された。

 ――例の計画について。一人で病院裏手の公園。

 その言葉に従って、俺はやって来たわけだ。警戒心も何もなさ過ぎるが、レイルズにまで何か危害を加えられる心配をしていたら、正直俺は人間不信でこの世界に生きていく自信を完全に失う。


「結構。それじゃあ、何から話したものかな。……三日前の戦闘。ジュート、君はどう思った?」

「どう思ったも何も。作為的なものしか感じ取れないっすよね」

「そうだね。トキハマを狙ったような進行ルートで君達を孤立させてから、アンダイナスであれば単機でも何とか対処可能な数の分隊で襲う。それも、どの局面も君達にぎりぎりで切り抜けられるような、絶妙な戦い方で」


 あの戦闘の全てを見てきたかのように、レイルズは言う。


「見たわけでは無いよ。バグの残骸分布と、君達が辿ってきた足跡から察することくらいは出来る。これでも、軍人家系の出なものでね」

「全部仕込みだった、ってことですよね。でも、何のために?」

「私自身、状況から察することは出来ても、この件については推測でしか物は言えない。何しろ、私はこの件に近付きたくは無いと思っているからね。ただし、近寄らなくてもどうしても耳に入ることはある」


 自嘲気味に、レイルズは遠くを見ながら言う。彼自身、この件に関わったことで何かを失ったことがある。そう察するには十分な表情。


計画プロジェクトプラン13。最近はこんな単語がよく聞こえてくるね」

「……そいつが?」

「直接関係があるかも私には判らない。ただ、時期的なものを考えれば、十中八九は」

「そのプロジェクトって、一体何を目的にしてるんです?」


 そう尋ねて、レイルズの顔を見て、はっとする。遠くに向けられた目は、こちらを向いたときには。

 昏く、恨みとも絶望ともつかない、黒い何かを宿していた。


「……神様気取りの連中が、今更になって人間に戻りたいと。そんな我が儘を叶えるためのものさ。私の大事な友人は、そんな我が儘に翻弄され、今はもう居ない」


 その声が。

 何かとてつもない怒りを押し殺したように聞こえて。

 俺は、もう何の言葉も発せなくなっていた。


「……この件に関しては、きな臭いものが常に付きまとっている。邪魔者も多いし、君もこの件に関わっていると考えれば、用心に越したことは無いだろうね」


 関わっている。

 はっきりと口に出されると、重みがまるで違う。

 まさか、今まで起こったことを考えて、自分がその『プラン13』とやらとは無関係だとは言えない。しかし、何のために、俺を?

 その疑問を投げかけるには、今しか無いように思えた。


「何で俺、なんですか? こう言っちゃ何だけど、俺なんて何の取り柄も無いただの学生っすよ。そんなのを、三千年以上前から引っ張り出してきて、何をさせたいんだ」

「三千年前?」


 余計なことまで口に出していた、とはっとする。

 そんなこと突然言ったところで、そんな荒唐無稽な話をしたところで、こいつは頭がおかしいと思われるに決まっている。

 だが、開いた口は噤まれることは無かった。


「そうっすよ。俺は、西暦2017年で生きてきた高校生だった。いきなりこんな未来に連れて来られて、あんなロボットに乗せられて、言われたのは世界を見て回れ、だ。わけがわかんないですよ。俺に何をしろって言うんですか」


 言葉は、口を突いて溢れ出てくる。思えばこれらは、今までずっと疑問に思いながらも、思っていることすら無視して封じ込めていたはずの物だ。それが、一度死を覚悟したことで、堰を切ったように噴出してきた。何故。何故。何故。今更と言われようと、思ったことはもう止められない。


「エミィにしたってそうだ。あいつは、三日前に襲われたことは『例の計画』とは無関係だと思うって。でも、どこまであいつを信じていいかもわからない。信じたいけど、俺はあいつが居なきゃ生きていけないけど、それでも」


 本人を前にしていれば容易く言える『信じる』という言葉すら、こうして俯瞰してみればどこまで正しいのかわからない。俺は、俺自身がもう、よくわからない。


「……なるほど。『創った』のか」

「は?」

「いやすまない、独り言だよ。そうだね、私には手段は全く検討はつかないが、しかしこの件は正直に言えば何でもありだ。ジュートが、遙か過去からこの場所に来たという事象も、また実際に起きたことなんだろうと思う」

「信じる、んですか」

「信じざるを得ない、が正しいかな。如何に荒唐無稽と思われることでも、事実であるという前提に置かなければ理解は不可能なんだ。そうしなければ、更に予測不可能な災厄を回避することは出来ない」 


 災厄、か。

 トキハマを襲ったバグの集団なんて、災厄と呼べるほどのものではないんだろう。レイルズはずっと恐ろしい物を見てきたような口調で語っている。


「例えば、何が?」

「さぁ。例を一つだそうか。もう察しは付いていると思うが、エヒトの消失はそのプランの一つが頓挫しかけた時に、見せしめとして行われた。奴らは、人間が何十万人と暮らす街を躊躇いなく消す」

「……」

「そんなことがあったからね、私はもう関わらないと決めたし、今後もこれに関して触れるつもりは無いんだ」

「触れるつもりが無いなら、俺に話す必要もないと思うんですけどね」

「何も知らないで、巻き込まれるのを見るのは忍びないからね。友情の証と思ってほしいな。だから、最後の忠告だ。……君の同行者には、完全に気を許してはいけないよ」


 そう言い残して、レイルズは再び街の雑踏に消えていった。

 俺の脳髄の奥深くに、消そうとしても消えない疑問の種を植え付けたまま。

 


 第一章 完

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