第35話世界中に
コンビニに着き中に入ると冷房が強く利いていた。
薫風が鼻をひくつかせ、クシュンとくしゃみをした。
「寒い?」
「はい、ちょっと」
買い物かごを片手にとり、まるでこの世の終わりに備えてかのように食料を詰め込んでいく。
ドリップ式のコーヒー、冷たい牛乳、カツサンドにカレーパン、等など。
私はこの世界でも小説を書こうと考え、筆記具も買い物かごに入れる。
「そういえば、この世界の新聞や雑誌はどうなってるんでしょう?」薫風が興味深げに言う。
「そうね、気になるならそれも買いましょうか」私はそう言うと新聞が挟んであるのを一紙取り、雑誌コーナーであまりキツくない地味な表紙の週刊誌を買い物かごに入れた。
会計をしていると薫風が「私からあげが食べたいです」と言い、レジの店員にからあげを頼むとレジに陳列されてる温かいからあげを紙袋に入れてもらう。
お金を払い外に出ると薫風が私の持っている袋を奪い、中からからあげを取り出し口に咥えた。
「美味しいです」はふはふと息をしながら食べている。
私も一つもらうとそれは見た目以上に熱かった。
「熱い・・・」私は目元が涙で滲むのが分かった。
薫風がフフッっと笑う、私は少し恥ずかしかった。
私はからあげを飲み込んでしまうと「あいつどうしたかしら」と言った。
「あいつって?」薫風が言う。
「同僚の魔法使いよ。性別は男で本当はそいつが異界に来るはずだったんだけど。今頃、もしかしたらこの世界にいるかもしれないわね」
「順子さん以外にも魔法使いの方はいるんですね」薫風が次のからあげを頬張り飲み込んだ後にそう言う。
「そうね、私以外にも、世界中に」
「それじゃあ、ひょっとしたらこの世界にもいるのかもしれないですよね?」
「ええ、ひょっとしたら」
「その人と協力しあうことは出来ないですか?」
「良い案ね、この世界で魔法使いが見つかれば、だけど」
私達はそんなことを話し合いながら薫風の家へ帰っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます