第31話月の光の蒼いカラス
薫風の家の前へ着くと屋根の上に蒼いカラスがいた。瞳は黄色で月の光めいている。
カラスは横目でこちらを見つめ甲高い声で一鳴きするとバサバサと飛び立って行った。カラスの後ろてに羽が白夜の海色にギラギラと輝き星空の光に応じちらちらと白色に明滅する。それは切れかかった蛍光灯のようで私の心に静かな夜の感触を与えた。
「では、入ってみましょう」薫風がそう言って家へと通じる扉のノブをひねった。
ガチャガチャと音がしやがて薫風が「カギがかかっているようです」と言った。
「あなた元の世界のカギを持ってない?」
「持ってますけど開くんでしょうか、一応試してみますね」薫風は黒色の皮のショルダーバッグからカギを取り出しそれを扉の鍵穴に差し込む。
カチャリと音がした。「あ、開きました・・・」薫風はそれから恐る恐る扉を開く。
中は電気の明かりがついておらず薫風はスイッチに手を伸ばしパチリと押すと電気の明かりが始め明滅しピカンと音がする明かりがついた。
「誰もいないんでしょうか・・・」
「無人の家なのかもしれないわね」私は靴を脱ぎ玄関の奥へと進む。部屋を覗いてみるが誰もいない。
次々と部屋を巡ってみるが誰もいなかった。
私たちは元の世界の薫風の部屋のある場所に入っていた。
「ここを寝床にしましょうか」
「そうですね。今は夜なんでしょうか?」
「もしかしたら元の世界とこの世界では昼と夜が逆転しているのかもね」
「昼夜逆転ですか。じゃあもう夜なんで、今日はもう寝ますか?さっきまでの世界では朝だったんですけど・・・」薫風はそう言うとベッドに軽く座り込んだ。「さっきクローゼットの中を見たら洋服もあるみたいですし、水道も通ってるし、電気も通ってる」
「ありがたいことね」私はスマートフォンをカバンから取って電源をつけてみる。画面を見ると電波も通じているようで、インターネットとも接続できた。
この世界は元の世界と繋がっているのだ。
「でも私全然眠くないです」
「眠れるおまじないをしてあげるわ」
「おまじない?」私はベッドに座っている薫風に近づきその頬に軽く口付けをした。私の中の眠気を生み出しそれを薫風に移したのだ。ちょうど風邪をうつすように。
「あれ?なんだか眠くなってきました・・・」
「私は床に寝るからあなたはベッドで寝なさい」
「はい、では眠ります。おやすみなさい」薫風はベッドに寝転んで毛布をあごの下まで手で伸ばした。
「この前の私が倒れた時の状況と逆ね」
「そうですね」とクスっと笑い「良い夢を」と言って薫風は目を閉じた。
私も床に寝転がり、横を向き、軽く体を丸める。目を閉じると私の魔法の眠気が充溢し熱のない炎が燃え上がるようにこんこんと眠りの中に落ちていった。
夢は見た気がする。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます