第30話世界に作用された意識

 暗黒の異界の扉の先には深い宇宙の底のような群青色の空に大粒の星が瞬いているのが見えた。それは夜のようにも見えた。そこに葡萄の皮の色をした雪が音もなく落ちていく。

 振り向くと扉はなくなっており、薫風が少し驚いた顔をして立っていた。

「ここが異界ですか」薫風の吐息まじりの声は吐く息に応じ白い蒸気が出ていた。「変わった色の雪が降ってるし、吐く息も白いのに今までいた場所のように暖かい」

「どうやら神崎の家の前のようねここは」私はそう言うと薫風は辺りを不安げに見回す。

「そのようですね」

「この異界という場所は今までいた町の見る影なの。あなたにも光が当たることによって影が出来るでしょう?町にも光が当たると影が出来るの。普段は異界と今までいた場所へと通じる扉は閉ざされているどころかありもしないけれど、ふとしたきっかけでそれは現れ、開かれるのよ」

「例えば連続殺人事件とか?」

「そう。今回は連続殺人事件が原因。普段の姿とその影が通じ合ってしまえばやがて溶け合って消えてしまう。町は消えてしまう。だから扉を開いた根源を探してそれを壊さないといけないの。今回は事件の犯人、神崎稔の中にあるものが根源だわ。私は彼を追う」

「私もご一緒します。そういえば、ここへ入ってきた扉はどこにあるのですか?」

「多分、倉の中にあると思う」私はそう言い、家の敷地に入り倉へと向かう。薫風が後ろをついてくる。

 倉へ入り奥を見ると扉があり白い光を放っていた。

「あれが元の世界へと戻る扉・・・」薫風がそう言った。

「本来、開いてはならないものなのよ」私はそう言うと倉から出て倉の扉を閉め神崎の家の前の通りへ出た。

「神崎さんはどこに行ったのでしょうか?」

「この世界は神埼の意識が深く作用している。それに私の意識も。軽くなら神崎はこの世界を変えることが出来るはず。そのことに神崎が気付いたら、どうなるか。もしかしたらこの世界で王国を築くかもしれない。行き先は分からないので取り敢えず食事と寝床を確保してそれから捜索しましょう」

「分かりました。この近くだったら私の家が良いんじゃないですか?行ってみます?」

「それじゃあ、あなたのお家に行ってみましょうか」私は肩に積もった葡萄の皮の色をした雪片を払うと薫風の家へ歩き出した。数歩歩いていると薫風が私の左手を手で握ってきた。私達は手を繋いで歩いていった。

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