第12話制服

 薫風の家に着くとその家は中から薄明かりが漏れていた。七歩くらい歩けるほどの家の横幅の長さで二階建ての一軒家であった。瀟洒な家である。

 光が漏れているのは道路に面した窓にあるしっかりと閉まったカーテンの隙間からであり、また玄関の電灯も光っており薄黄色く玄関口を照らしていた。

「では制服を取ってきますね。ちょっと待っててください」薫風はそう言うと玄関へ近づき、ポケットから鍵を取り出して解錠すると中へ入っていった。

 ちらりと見えた玄関の内部は玄関の明かりに反して暗く明かりが消されていて、薄鼠色と水色を混ぜたような色合いの壁が見えた。

 その色合いを見て彼女の普段着(と言っても初めて見た限りであるが)と照らし合わせ(白地に深い紺のストライプが入った服と藍色の膝下まであるスカート、靴は黒色)私はああ、この子はこの家の子なのだなと実感できた。


 しばらくすると(一分、二分ほど)二階のこちらから見える窓のカーテンが開かれ、中の明かりが窓を透き通り出ていくと薫風の顔が見えた。

 薫風は窓を開け「順子さーん!」と言った。「直ぐに見つかりました。今から落としますね」

 窓から落とすのだろうか。なんて考えてる内にバサリと音がして、ビニールに包まれた制服一式が落とされた。

 私はそれを両手で持ち胸に抱える。

「ありがとう。おやすみなさい、良い夢を見てね、こんな事件の後だけど」と私は言った。

「こちらこそありがとうございます。ごちそうさまでした。あ、制服はちゃんと返してくださいねー!後、電話番号を書いた紙を中に入れておきました。何かあった時に電話してください」と言うと薫風は笑顔を作り手を振ってきた。

 私も手を振り返すと帰り道につくことにした。

 ビニールの中を覗き込むと白いセーラー服に赤色のリボンが見えた。歩きながら私は考える。

 明日は会社を休んで薫風の学校へ行く。お昼頃に行けば良いだろう。朝の普通の登校時間から行ってしまえば授業中、私はさまようことになる。

 だって私の席はないのだから。

 聞き込み調査を行い、犯人を捕まえる。

 捕まえた後は?

 警察に通告すれば動いてくれるだろう。証拠を見つければ、である。

 動かぬ証拠とやらを見つけなければ。私に出来るだろうか?

 やるしかない。


 朝、自宅で目が覚めると枕元の目覚まし時計は無言であった。今日はアラームを設定していない。会社に電話して仕事を休むための電話をする為に机の上に置いてあるスマートフォンに向かう。

 電話をかけると要件を伝えた。難なく休みがとれた。

 そういえば学校のお昼休みを聞いていないことを思い出した。

 早速制服のビニールの中に入っていた薫風の電話番号にかけ昼休みを聞くことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る