第13話sunny side up
私は手に持っているスマートフォンでそのまま薫風の電話番号を指で入力し電話をかける。
4コール程鳴らすと薫風は出た。
「順子よ」
「あ、順子さんおはようございます。良い天気ですね」
「あなたの学校のお昼休みって何時からなの?」
「十二時四十分からですよ。それがどうかしたんですか?」
「お昼休みから学校へ行こうと思って」
「不良生徒ですね、順子さん」
「・・・。じゃあそれだけだから、さよなら」
「それではまたお昼にー」と言われた。私は電話を切る。
私は少しお腹が空いていることに気付いた。
トースターでトーストを焼くこにする。
それからフライパンで目玉焼きを一つとベーコンを一欠片、焼くことにした。
私はそれらを焼いている間、若草色のマグカップを食器棚から取り出し、インスタントコーヒーの粉を中に入れるとポットに沸かされてある熱湯を注ぐ。それをくるくるとスプーンでかき混ぜる。
口に含んでみるといつも通りちょっと酸っぱかった。
やがてフライパンの上でジュワジュワと音上げ目玉焼きとベーコンが仕上がると塩コショウを軽くふりかける。皿を出して上に乗せる。
トースターのトーストもチンと仕上がりのベルを鳴らすと私はそこから焼きあがったトーストを取り出した。
あらかじめ出来上がっていた目玉焼きとベーコンをトーストに挟むと私は食事を始めた。
今朝届いた新聞を読みながら口を動かす。
やはり殺人事件の記事が載っていた。私はその記事を読んでいるとポタリと未だ完全に固くなっていなかった目玉焼きの黄身の汁が新聞に落ちた。
次々と落ちていく汁は新聞にシミを付けていく。私は慌てて皿の上に食べているものを置いた。
コーヒーを一口すすり、また新聞を読み進める。殺人事件の記事を全文読んでみたが、特に気になることはなかった。やはり現地の聞き込みに頼るしかないだろう。
私は食事を済ますと歯磨きをしてそれから化粧台へと向かった。そこで例の口紅を取りキャップを外す。
固形状の深紫色の紅が見える。私はそれを口に引く。
そして胸に手をやり目を閉じ、極度にリラックスさせた状態になると少しずつ時間を逆行するように体を若返らせていく。
素肌が水辺に近づくように潤いが満たされていくのが分かった。それが満杯になった時に息を止め、時間の逆行をやめる。
目を開けると十七歳の私が鏡に映っていた。
深紫色の唇だと学校の教師からとやかく言われるかもしれないので上からまた別の口紅を付ける。薄いピンク色の口紅にした。
私はそれを唇に引くと破顔してみた。色気は以前より無いが、生の洋梨を齧ったようにフレッシュな鼻孔をつく香りが視覚となって現れている。私は魔法使いだ。十七歳と言うと、魔法少女なのだろうか。
まあ、そんなことはどうでも良い。朝の日差しに当たりに散歩に出ることに決めた。
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