第11話薫風

やがて料理が到着した。ハンバーグの上に二つの厚めの目玉焼きが横に並んで乗っかっており、ケチャップで目玉焼きの下に人間の唇のように赤い弧が引かれていた。まるでニッコリとした顔のようにそれは見え、ほかほかと湯気が上がっていた。

 その後直ぐに大盛りのごはんが平たい皿に乗せられ運ばれた。

「いただきまーす!」薫風がやはり間延びした声でそう言うとナイフとフォークを上手に使い切っていく。

「残したらあなたに食べてもらうわよ?いい?」と私は言い。小さなささやき声でいただきますと追唱すると、私もナイフとフォークを使い一口サイズに切るとハンバーグと目玉焼きを同時に刺し口に運ぶ。

 もぐもぐと口を動かすとハンバーグはお昼に食べたカツサンドよりもずっとジューシーで肉汁が口の中にじわじわとその熱さで舌を焦がすように染み出し、私は熱さではふはふと息を吐いたり出したりしながらを繰り返す。

 コンビニのカツサンドとは別格であった。とても美味しい。

 少し固めのクリーム状のソースが口の中をくるくるとバレリーナのように踊る。

 私はそのほんのり塩辛い熱砂の砂漠のような荒涼感に感じ入る。

 薫風を見るとニコニコと美味しそうに食べていた。

 値段はごく一般のレストランだから気にしなくて良いだろう。私は構わず食べ続けた。


 四分の一程食べるとお腹がいっぱいになってしまい、残りを薫風に手伝って食べてもらった。

「あー、お腹いっぱいですー」

「あなた、私の分も食べたのだもね。そりゃそうよ」私は口をパーカーのポケットに入ってあったウェットティッシュで拭いた。

 私の魔法の口紅は私自身が魔法のスイッチをおとさない限り決して消えない。

 口付けを繰り返しても跡が残るキスマークのように。ウェットティッシュを見るとやはり私の唇の跡が付いていた。

「コーヒーお代わりちょうだい」

「私もコーラ取ってきます。ストレートで」薫風は酒でも飲むのだろうか?いや高校生だろう。「ブラックコーラでーす」薫風はそう言うと席を立ってドリンクバーへ向かった。


 私はコーヒーを薫風はコーラを飲んでしまうと、私は「じゃあ帰るわよ」と言い。薫風も相槌を打つと会計へ向かいお金を払い二人で外に出た。

 外に出ると夜風が体に吹き込み、薫風という名前の意味の通り初夏の風が吹き過ぎて行った。

 私はうなじに手をやり後ろ髪をバサリと右手でかき分けた。

「それじゃあ私の家に順子さんも来るんですよすよね?制服を取りに。では着いてきてくださーい!」元気よく薫風はそう言った。

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