第17話羽と雲
彼女たちによると笹子という女子生徒は二年四組の同じクラスの生徒で、名字を坂木というらしい。坂木笹子。
人の受け答えに対して的を射た意見を言い、ストレートなものの表現が歯切れがよく、元気がよいい威勢のよいが素直な人柄だったらしい。
部活動は陸上部に所属しており特に長距離走をやっていたようだ。
いじめなどはなく人間関係も良好のようであった。
笹子という女子生徒は林原薫風とその三人の友達の中に入って一緒にお昼休みを過ごしたり行動をしていたらしい。
「私達の仲間の一員だったんです」栗鼠のような女の子がそれを最後に涙を流した。
「もういいわ。ごめんなさい。もういいわ」私はそう言った。
栗鼠のような女の子を腕を支えるようにおかっぱの女の子が栗鼠のような女の子を両腕で抱きしめる。
「今日、お葬式があるんですよ」薫風がそう言った。
「ええ、そうね。昨日のことだから」私はそう言いながら考えていた。全く犯人の目星がつかない。
ふと窓に目をやると先程まで明るかった空が全面に雲を行き渡らせてあった。いつの間にか。
ブルーに灰色がかった色が混ざり今にも一雨来そうであった。それはまるで堕ちた天使の羽が地につくまでバサバサとあがいたせいで羽が空気中に全て散ってしまったようであった。曇天模様。
窓の近くにいた生徒が「あれ?雨?」と言い窓から手を差し出す。「雨降ってきたみたいね」と言い手のひらで受けた雨粒を眺めている。
「順子さんも来ますか?」薫風がそう言った。
「ええ、行くわ」私は言った。
「Dという葬場でお葬式が行われます。場所は分かりますよね?時間は四時三十分からです」
「ええ、分かるわ」私はそう言った。
「そうだ、順子さん。昨日順子さんに翌日、つまりは今日なんですけど渡そうと思ってたものがあるんです。ちょっと待っててくださいね」そう薫風は言うと自分の席へと行きカバンを漁っている。
少し時間が経ち目的のものを持ってきた薫風は私にそれを渡した。
それはケースに入ったCDであった。
「インスパイアド・バイ・バッハ、と言ってヨーヨー・マが演奏するバッハが作曲した無伴奏チェロ組曲なんです。よかったら聞いてみて下さい。私のお気に入りのCDです」
外に出ると小雨が降っていた。先程の警察官は何も言わず私を送り出し、私は帰路につく。
家に着くと傘をさしていなかった為、制服を脱いで小雨で少々濡れてしまった制服を乾かすためにハンガーに吊るしエアコンの除湿機能のスイッチを押し、扇風機を当てる。
そのまま私はお風呂に入ることにした。今日は浴槽に浸かることにする。
お風呂を沸かしている間、私は下着姿で冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出し、牛乳と混ぜてカフェオレを作るとゴクリと一口飲む。閉じられた口のまま鼻から息を吐き出すとコーヒーの香ばしさが鼻から抜けていった。
まったく犯人の目星がつかない。外部の人間の犯行かもしれないし、内部の人間の犯行かもしれない。
魔法使いは探偵ではないのだ。
では何をするのか?
朝起きて、夜寝るだけである。普通の人間と同じだ。只、本人が自分にも出来ることがあるのではないかと模索してしまう。そこが普通の人間と違うのである。
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