第41話ダウジング

驚いたことに私が牛丼を一杯食べるのと薫風がおかわりした二杯目を食べるはほぼ同時だった。夏子という女性は先に食べ終えて料理場から持ってきた急須からお茶を湯呑みに注いで飲んでいる。私達もお茶をもらい、飲んでいる。お茶はほんのり甘い緑茶だった。

「さあ食事も済んだし、続きを話しましょう」夏子はそう言うとお茶をまた飲んだ。

「そうね、一番大事な事なのだけど、私達の世界にいたその殺人犯はこの世界に逃げ込んだのよ。この世界と通じる元凶であるその男を私達は追ってこの世界に来たのよ」

「あなたの世界から言うと、この世界はあなた達の世界の影なのでしょう?」

「そうね、少なくとも私達の世界の魔法使いはそう呼んでいる」

「ふむふむ」と夏子は言い「その男の名前は?」夏子の眼差しが若干鋭くなる。

「神崎稔という名前よ。その男と私の中にあるものを壊せば異界は閉じられる」

「分かったわ、協力しましょう。魔法使い同士、協力しあうことは大事だわ」

「ありがとう、私もそれを望んでいるわ」私は一息おき「それとこの世界に私達の他にも魔法使いが来てるのかもしれないの、三人で協力して異界の元凶を壊しましょう」

「私は含まないんですね・・・」と薫風が言った。

夏子がクスっと笑い「あなたは怖くないの?」と聞いた。

「たしかに、少し怖いですね。この世界に着いて始めはうっすらと鳥肌が立っていましたが、この世界の通りを歩いてデパートに行ったりコンビニに行ったりして、今はもうこの世界とも馴染んでいる気がします」

「途中で帰りたくなったら直ぐに言いなさい」夏子が言う。

「分かりました」薫風がさっぱりした顔でそう言った。

「犯人の居場所は分かってないんでしょ?ダウジングをしましょう。地図を持ってくるわ」夏子がそう言うと席を立ち一旦去っていった。

「あなた怖かったの?」私はそう言う。

 薫風は小さな声で「少し・・・。私は順子さんと違って、ただの女子高生なので。でも力になると思います。ただの予想ですが」

「そう・・・」私は生暖かい緑茶の残りを飲んだ。


 地図を持ってきた夏子はそれを机に広げ、地図の中心に黄色いマーブルの模様が付いたビー玉を置いた。

「さあ、探しましょうか」夏子は椅子に座り、目を閉じる。ビー玉が円を描き動き始めた。初めは小さな円を描いていたが段々と大きくなる、螺旋状にそれは回っていた。

 くるくるくるくる周る「これが魔法・・・」と薫風が言う。ビー玉がころころと音を立てていた。

 螺旋が半径二十cm程を描いた所でズドンと大きな音がしてビー玉が地図を貫き机にめりこんだ。

 薫風が小さくキャッと叫ぶ。

 夏子がビー玉に手をやるとそれは机に1.5cmほどめりこんでいた。

「駄目ね、分からない」夏子がそう言い、私はため息を吐いた。食卓の上の黄色い光をした電球がチカチカと点滅しバチンと音がして破裂し、四散する。そして電球の逆さの笠に付いていた紐がブチンと音を立て切断され落下してきた。それは地図の上に落ちてきて地図の一部を覆いかぶさった。

「あらあら、片付けなくちゃね」夏子がそう言って、席を立つ。「雑巾と掃除機を取ってくるわ」

「なぜ、位置を把握出来ないのかしら?」私はそう聞いた。

「彼の意識が飛んできたのよ。禍々しいものが」

 音は無音に還った。

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