第3章-4 ファンのマナー違反
今日も演奏の後に僕とスバルはR,sカフェに立ち寄った。ツカサ君と会うという目的もあるからか、周りのお客さんが女性ばかりでも最近は気にならなくなってきた。
「いらっしゃいませ、お疲れ様です」
「いつものアイスコーヒー2つね。あと、僕は今日はマンゴー生クリームパンケーキ」
僕達がこのカフェに来るようになってから、気のせいか周りのお客さんはパンケーキではなく、僕たち、いや正確にはスバルを目当てに通っているような気がする。その証拠に何人かのカメラ位置がパンケーキよりも高い、スバルを隠し撮りしようとしているようだ。
「はいはい、うちの撮影許可は食べ物だけです。人物の無許可撮影はトラブルになりますからご遠慮ください」
抗議しようと立ち上がる前にツカサ君が牽制してくれた。彼の鶴の一声で、いくつかのスマホが慌てたように下へ向く。
「ツカサ君、悪いね。仕事増やして」
「いえ、ああいう輩が気にくわないだけです。ルールを守らない、他人に迷惑をかけていることに気づかないのはもはやファンではありませんよ。席を移動してもらっていいですか?撮影されにくい位置へ案内します」
「ありがとう、ツカサ君」
知名度が上がると多少はこういう事になるとは思ってたけど、下手するとこのカフェに迷惑かけちゃうのかな。利用を止めた方がいいのかとも思える。
そんな僕の顔色を察したのか、ツカサ君はニヤッと笑って言った。
「大丈夫です、俺の目が黒いうちは好き勝手にさせません。俺はConstellationサポーター兼マネージャーですから」
「ツカサ君は頼もしいね」
「いえ、そんな。ネットに勝手にアップしていたら通報して垢バンさせるだけですから。クックック」
「つ、ツカサ君?! なんか暗黒オーラが出ているよ」
「まあ、店長の方針でもあるのですよ。警告しても問題行動起こしていたら、退店してもらうって。そんなのはもはや客ではないって事は俺と同じ考えです。ま、そんなことよりも二人ともコーヒーを楽しんでくださいね。あ、後で差し入れの検疫もやりますかね」
そんなツカサ君に対してスバルが切なそうに返事をする。
「ツカサ君はいつも厳しいね。前も言ったけど、心がこもったプレゼントだから処分するのは胸が痛むな」
スバルは相変わらず鈍感だ。
「うーん、スバルさんは疑うことを知らないんだね。自分の立ち位置わかってます?」
どうやらツカサ君も同じ事を考えていたようだ。こうなったら第三者に指摘された方が効くだろう。
「え?」
「最近のConstellationのライブはスバルさん目当ての人が多いですよ。リスナーも女性が増えていますし、さっきの盗撮未遂といい、人気が出たら身を守らないと。知ってます? 芸能事務所はファンレター以外はプレゼント禁止なんですよ。過去に何かあったのでしょうね」
いいぞ、ツカサ君。すかさず僕も追撃をかける。
「ついでに都市伝説もできかかっているよ。あそこで曲を聞くと、カップルになれるとかなんとか。最初はバラバラに聴いていた人達は回数重ねるうちにいつのまにか付き合ってたらしく手を繋いでいたのを見たことあるから、それが伝説の元だろうね。レイカさんも最初はそうかなと思ったのだけど、あれはレアケース」
「え? ええ? そ、そうなの?」
「レイカさんは最初は髪型とかイメージが全然違ったよ。スバルは多分ビフォーアフターに気づいてないよね」
「ごめん、ビフォーの頃のレイカさん覚えてないや」
スバルは相変わらず女性というか恋愛方面には鈍い。さすがの僕でもあまりの鈍さに呆れることが多々ある。
「性善説もいいですが、ちょっと用心した方がいいですよ。あとは恋愛も」
用心しまくる男子高校生もどうかと思うが、仕方がない。ツカサ君はきっと過去に何かあったのだろうし。
「まあ、俺は年齢=彼女いない歴だから恋愛のことはえらそうに言えないですけどね、ははは……はあ」
何やら自虐的な笑いをしつつ、差し入れの仕分けをいつものとおりツカサ君は行い、廃棄する分を抱えてホールへ引っ込んだ。恋愛でも何かあったのだろうか? なんか暗黒面に堕ちているようで心配だ。
ホールではツカサが深刻な顔をして悩んでいた。
「これは……アイツがスバルさんにシフトしたのか。本当にヤバいかもしれない。学校に相談した方がいいのか、二人にも知らせるべきなのか」
目の前には廃棄予定の差し入れ。そこにツカサにとって見覚えがあるお菓子があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます