第2章翌檜~ツカサの場合~
第2章-1 翌檜 ~ツカサの場合~
俺の名はツカサ。県立翠が丘高校の二年生。帰宅部。成績は中の上。ほぼ男子校なのもあって、彼女いない歴=年齢。
こうやって自分の事を並べると特徴が特に言って無い、はっきり言えばつまんない人間だとつくづく思ってしまう。
進路もまだ決めていない。親はとりあえず地元の大学へ行けというが、だらだらと四年間過ごしてしまいそうだし、かといって高卒で就職もしっくりこない。
しかし、こないだの進路指導で先生からは職業によっては今から勉強しないと間に合わないものもある、早めに決めろと言われて憂鬱だ。
たった17歳で人生の全てを見つけろってさあ、壮大過ぎないか?
「やりたいことかぁ…。」
そうぼやきながら、俺は友人のアズマと共に帰宅の徒に付いていた。学校から200メートル離れたところにある『翡翠の森公園』に入る。ここを斜めに通れば駅まで少しだけショートカットになるのだ。
「やりたい?そりゃあ女だろ?」
ニヤニヤしながら、アズマがツッコミ入れる。
「アズマ、まだ日は
アズマはいい奴だが、何かとエロに結びつけてくる。いや、俺も男だからエロに興味ある、むしろ興味深くって日本海溝並の深さだ。しかし、中間テストで早く終わったから時刻は今は午後1時、場合によってはベビーカー引いたマダムやら、幼稚園児がいる公園だ。さすがに下ネタはまずい。実際に今も子供と遊んでいる母親、ランチ中のOLや休憩していると思しき営業のサラリーマン、定年退職して悠々自適なお年寄り。様々な人がこの翡翠の森公園に集っていた。
「へへっ、わりぃわりぃ。ま、担任のアマヌマもシビアだよなあ。『だらだらすると大学行ってもだらだらして、就活失敗してブラック企業勤めになるぞ!』って、バッサリとさ。」
「俺だってブラックはやだよ。アズマはそのままスポーツ特待で
「おうよ、俺の道は俺の足で開く!なんてな。」
いたずらっぽく、アズマはおどけた。陸上部のレギュラーであるアズマはスポーツ推薦を狙っている。エースだから俺とは違ってモテる奴だが、まあそんなことは今はいい。
「いずれは箱根駅伝制覇して、実業団入ってオリンピックよ。」
「いいよなあ、アズマみたいに決まっているやつは」
俺はため息をついた。本当に打ち込める物があり、迷わずにそれを極めようと進んでいる。その筋が通ったところがアズマの快活さにも繋がっているのだろう。
「おいおい、まだ受験もしてないのに決まる訳ないだろう。」
「いや、進むべき道が決まっている奴ってことさ。」
「ツカサはまだ未定だっけ?うーん、まだ2年だから焦ることは無いんじゃねえか?そりゃ、タジマやネギシとか皆、早く決めた奴らばかりに囲まれてるから焦るのもわからないでもないけど。」
「そうなんだよな。みんな県庁だとか進路決めるの早えよ。」
俺は二度目のため息をつく。確かに進学校でもない限りは焦らなくていい時期だ。しかし、俺の周りは何というか、きちんと道を決めた奴らばかりだ。グループの中では未定なのは俺だけだ、何となく居心地が悪く感じるのは考え過ぎだろうか?
「まあ、他にもいろんなバイトしてみれば?経験値上がるとなんか見つかるかもな。って、今日はお前、テスト中なのにバイトじゃなかったっけ?ま、明日ラストで日本史に生物と記憶モノ科目だから何とかなるか。」
アズマの声で我に帰る。そう、今日は臨時でバイトがあるのだった。
「おう、店長から一人急病で欠けたからどうしてもって言われた。バイト代はずむというからさ。だから今日はこっち曲がるわ。じゃあな。」
「おう、またな。」
こうして俺はバイト先へ向うべく、アズマと別れた。テスト中ではあるが、バイト料の魅力には抗えない。そして広場に差し掛かった時、俺はちょっとだけ辺りを見回した。
「今日はバイオリン
この公園にはストリートライブがいくつか行われているが、バイオリンのやつはオリジナル曲が多めでちょっと気に入っていた。二人で演奏していることもあるが、バイオリンの人が
「ま、今日はバイトだから
俺は独り言を言いながら広場を突っ切って通り抜けバイト先へ向かった。
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