概要
大正四年、東京は四ツ谷で政治家のゴシップ専門の新聞記者と大勢の愛人と書生の出入りする家に生まれた少女、間宮リカは早熟で感受性の鋭い娘として男女差別を糾弾しフェミニストの作家を目指す。二人の出会いは最悪だった。表現の自由、暴力、国同士の謀略。
激動の昭和初期から戦後を歩む二人の作家と奇妙な友人たちの物語。
参考資料はこちらにまとめました。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!歴史小説のお手本
歴史小説を書く人はどこの小説投稿サイトにも多く、一定数のファンも存在します。
ですが、この分野はひどく誤解されています。
なぜなら、「歴史小説とは何か」が解っていない人がたくさんいるからです。
歴史小説を書くために必要な要素は幾つかあります。
それは、戦国武将の名前をたくさん知っている事でもなく、大砲の口径を丸暗記している事でもありません。
19世紀のコルセットの形やスカートのヒダの数を知っている事でもありません。
一方、この作品には、歴史小説を書く上で必要な要素が詰まっています。
一体それは何なのか。
まず、歴史とは何か考えてみましょう。
歴史とは、社会の変遷を記録したものであり、社会…続きを読む - ★★★ Excellent!!!「あなたはイングランドの古謡に出てくる女性のようですね」
軍国主義へと進んでいく日本を舞台に、危うい青春を描く。実はこれ、非常にレビューが書きにくい作品である。
密度が高く、登場人物も多い。しっかりと調べこまれた舞台が設定集としてではなくきちんと息づいている。しかし、複雑なのだ。
描いている時代が、とにかく複雑だから。
だから、一人、わたしの大好きな登場人物を紹介しよう。
間宮リカ。
奔放な母親の娘として生まれ、時代の要請する女性像にあらがい――しかし、ある意味では、非常にその時代の女性性を体現してしまうような少女だ。
傷つきやすいのに気が強く、とにかく戦う気まんまんの彼女を含めた登場人物たちを、時代は容赦なく振り回す。
緻密に書きこまれ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!迫り来る戦争の足音を聞きながら。軍国日本に生きる人々の群像劇。
物語は大正年間に始まる。
主人公の2人、藍生蒼太郎は大正3年、間宮リカは翌4年の生まれだ。
2人は幼時に関東大震災を経験し、軍国主義の台頭を目撃し、
次第に高まる社会不安の中、儚くも強く青春時代を過ごす。
純文学というジャンルが具体的にどういった特徴を持つのか、
私は未だよく理解していないが、本作が純文学なのだろうか。
重厚である。緻密である。さらりと読み通すことはできない。
おもしろおかしくはない。けれども、確かに「おもしろい」。
本作のその「おもしろさ」の正体は、一体、何なのだろうか。
ひとつ確かに言えることは「一貫したリアリティの存在」である。
「何年何月何日に何が起こったか」が…続きを読む