「あなたはイングランドの古謡に出てくる女性のようですね」

軍国主義へと進んでいく日本を舞台に、危うい青春を描く。実はこれ、非常にレビューが書きにくい作品である。
密度が高く、登場人物も多い。しっかりと調べこまれた舞台が設定集としてではなくきちんと息づいている。しかし、複雑なのだ。

描いている時代が、とにかく複雑だから。


だから、一人、わたしの大好きな登場人物を紹介しよう。

間宮リカ。
奔放な母親の娘として生まれ、時代の要請する女性像にあらがい――しかし、ある意味では、非常にその時代の女性性を体現してしまうような少女だ。
傷つきやすいのに気が強く、とにかく戦う気まんまんの彼女を含めた登場人物たちを、時代は容赦なく振り回す。

緻密に書きこまれた物語。