4-3
昼休みが終わり、午後の最初の講義が終わって連人と愛の二人はぶらりと海岸を歩いていた。厳密には塀越しに見える海岸を見ながらであったが。
「平和だなぁ。」
「ja。そうですね。」
話の切っ掛けとしてそう切り出すのはどうだろうかと他の人間がいればツッコミをされるであろう言葉を彼はそう言い、彼女は彼にそのようなことについて無用に言うこともなく彼の意見に賛同するようにそう言った。
「それでよ、愛。」
「ja。なんでしょうか、兄さん。」
「連中とお前が別行動してるってのは分かった。で、だ。連中の戦力はどれ位だ?」
「そうですね・・・・・・・・・・・・。」
そう言うと、彼女は一旦言葉を切って海岸向こうの海を見る様に視線を海の方へと向けた。
「少なくとも、この国、日本でしたか?その全人口よりかは少ないかと思いますよ?」
「・・・・・・・・・・なんだと?」
「ですが、彼らもバカではありません。『ベルセルク』-例のガラクタのことですが-、単独での集団戦を可能にする為に召喚物を使用しているようですね。」
「ちょっと待て。召喚だと?」
「ja。戦力をまとめて待機させるのではなく、逐一での投入を可能にするモノです。」
「だとすると・・・・・・・・・。」
「ja。少数だと思わせて大量の『ベルセルク』を投入し、形勢逆転の一発逆転という戦術を考えているのかもしれません。・・・・私には分かりませんが。」
「そりゃそうだろ。お前は一人なわけだし。」
「ja。慰めのお言葉、痛み入ります、兄さん。」
「皮肉か?」
「nein。私が兄さんにですか?・・・・・・・・・ご冗談を。」
一瞬、空いた言葉の間について連人は彼女に訊こうかと思ったが、やめることにした。
彼女との話を連人なりにまとめてみると、つまりこうだ。
敵の戦力は、こちらよりも遥かに多く、自衛隊の力を借りれたとして、勝つことはほぼ不可能だと言えるだろう。それほどまでに戦力差は空いているのだ。だが、敵は戦力の全投入などはせずに数回に分けての戦力を投入しようと考えているのであれば、まだ完全に敗北したとは言い難い。複数回に分けての戦力を投入するというのであれば、全戦力を投入してくる前に敵の頭を叩いてしまえば良いだけの話である。
そうとなれば、連人は不安に思うことは無くなったのだが、無くなると同時にふと疑問に思うことがあった。
その疑問を声には出さずに彼の前を腰まで伸びている長い青白く光に反射されている銀の髪を揺らしながら歩いている少女、愛のことを疑問に思っていたのだった。
仮に。
仮に、である。
もしも、万が一にも。
彼女が敵であると定義している連中を倒せたとして、彼女はそのあとはどうするのだろうか。
彼女の目的は、この世界を壊そうと考えている連中の目的を阻めることである。
だが、そのあとは・・・・・・・・?
そのあと、彼女はどうするのだろう。
彼女はどうなるのだろう。
そう考えると、連人は彼女に対して何も言えなくなってしまう。
彼女は連人の言葉にきちんと反応し、返事をしてくれる。必要性などない力も彼に与えてくれた。
だが、連人は?
彼女に何をすることが出来る・・・・・・・・?
「・・・・・・・・・兄さん?」
そんなことを考えたせいか、足を止めてしまった連人を愛はどうかしたのかと不安に思ったのか、後ろを振り返ると彼の顔を見て愛はそう訊いた。
「・・・・・・・・・・・・・・。・・・・・あっ?どうした、愛?」
「いえ。どうかなされましたか?どこか御気分が悪くなられましたか?」
「いや。そういうんじゃないけどな・・・・・・・。」
「はぁ・・・・・・・・?左様ですか?」
「あぁ、悪い。心配かけたな。」
「nein。兄さんが大丈夫だと仰るのであれば、私からは特には。ですが、あまりご無理は禁物ですよ?」
「無茶はしないさ。」
「一緒です、兄さん!!」
「ハハハ、了解だ。そんなことは分かってるさ、愛。」
とそんな会話をしていると、遠くの方で爆音が鳴り響く。
その爆音に連人は愛に目を送り、彼女は彼の目を見ると、コクリと小さく頷いた。
「ja。了解です。・・・・・・・・・・・・『アイゼン』!!」
腕を上げながら、彼女は『シュツルム・アイゼン』を呼び出すために短い呼び声を上げる。すると、その声に反応してか、白き翼を羽ばたかせるように白銀の機体が何もなかった空間に突如として現れる。それは、まるでそこにいたのが当然でもう既にそこにいたとでもいうかのように。
白銀の機体、『シュツルム・アイゼン』は片腕を上げている彼女の身体をひょいと拾い上げる様に掴むと、掴むと同時に彼女の身体がすぅと消えていなくなってしまった。
『兄さん、ご用意は?』
いないはずの愛の声が『シュツルム・アイゼン』から聞こえてくるのと、『シュツルム・アイゼン』が連人を見る様に見てきたのはほぼ同時だった。
「いつでもいいさ。・・・・・・・・頼めるか、お嬢さん?」
『ja。それでは、少しお散歩でもしましょうか、兄さん?』
「そりゃ、素敵なデートのお誘いだ。・・・・・・・・ぜひ頼むよ。」
『ja。それでは少し失礼をしまして。』
そう言いながら、彼女は連人に片手を差し出してくる。
連人は彼女が何を言いたいのか、その動作で悟っていたので滑らかな動きでその手の上に乗った。
『揺れますよ。』
「ご存分にってな。」
そう言いながら、彼女は上半身を上げながら、連人を乗せた手を胴体へと導き、彼を己の
彼は、彼女の手から降りて、コックピットへと入ると、座席に座り、右と左、両方のレバーの感触を確かめる様に握り、こう言った。
「それじゃ。一っ飛び、付き合ってもらおうか。」
『ja。我が身は御身と共に。貴方が行かれる道こそが我が道です。故に。』
ブォン、と両目に光が点灯する。
『付き合いましょう、兄さん。』
『くそっ、06ダウン!!一士が食われたっ!!一尉!!援護をっ!!』
『無茶言うな!!こっちは雷光よ!!足だけが命だってのに、足を止めたら、こっちもやれれるわっ!!』
『し、しかし!!』
『02、江島二尉!!援護は!!?バックはなにやってる!!?』
『何言ってる、木原二尉!!バックは北がよく動いてるんで送っちゃくれねぇって言われたばっかだろうが!!』
『そうだった!!忘れてたぜ、この野郎!!』
『喋ってる暇ありゃ腕動かせ!!鈍足野郎ども!!』
『早いだけの脆いお方が何言ってるんです、一尉!!』
『そうですよ、一尉!!』
『だったら、「月光」なんて持ってこないで、「雷光」持ってこい!!』
『いや、だって、脆いじゃないですか、それ!!』
『そうですよ、脆い上にすぐに始末書モノじゃないですか、それ!!』
『あぁ、始末書だって!?ねぇよ、んなもん!!』
『おい聞いたか、二尉!?』
『あぁ、ちゃんと聞いたぜ、江島二尉!!』
三体の『巨人』を前にしながらも大きな怒声の様に聞こえる会話をしながら戦闘をしている三機の陸上自衛隊の特式機甲機動兵器、『パワード・アーマー』が動きながら攻撃を加えて動きを牽制していた。その三機の中でも一番装甲が薄く脆そうな外見をしている機体、特式機甲機動兵器第一世代機『雷光』は足裏のモーターローラーを激しく動かしながら飛んだり跳ねたりと休めることなく動かし続けている。それはまるで身体を休めた時が己の最後とでも言うかのように思えるほどのモノだった。
そんな激しく動く『雷光』とは打って変わって、それほどまで激しくはないが休むことなく動き続けている頑丈そうだと思える分厚い装甲版に身を包んだ機体は特式機甲機動兵器第二世代機『月光』であった。
そんな三機から少し距離を開けたところで、バチバチッと電気を撒き散らしながらボロボロになって倒れている機体は『月光』よりかは動きやすそうに見えるが、『雷光』よりかは動きにくそうな外見をしているのは、第三世代機『閃光』であった。
『おい、一士!!返事しろ!!』
『そうだぞ、一士!!勝手に死ぬんじゃねぇ!!』
『悪いね、一士!!弾切れたから、ライフル借りるよ!!』
『一尉!!空気読んでください!!』
『そうですよ、一尉!!弾切れたって、今、このタイミングで言わなくっても!!』
『そうは言ってもね!!』
そう言いながら、『雷光』は『巨人』たちの方へと顔を向ける。
『グァ・・・・・・・ギグバァ・・・・・・・グギガゴォ・・・・・・・。』
『ギルゲグゥ・・・・・・・・・ギッグバゴォ・・・・・・・・・・。』
『ゲルギグゥ・・・・・・・・・・。』
何かを話す様に三体の『巨人』は互いに目配せをすると、自衛隊の三機の方へと顔を向けてきて、三体のうち一体が前へと進み出てくる。
『グルベグ、ガッパコスゥ。ヘルゼ、ニッヘモフゥ。』
『分かる?』
『いえ、自分は全く。二尉は?』
『自分も。一尉は、分かります?』
『あ~・・・・・・・・。日本語しか分からなくってねぇ。英語はなんとなくで分かるんだけど。』
銃撃を突然やめた三体に警戒をしながら、今まで動きまくっていた『雷光』は動くのをやめると残りの二機に意見を求めると、『巨人』が取った動きと同じく前へと進み出た。
『悪いねぇ。日本語しか分からないのよ。話があるなら、日本語でお願いできる?』
そう、『雷光』の操縦士が言い終わると同時に三体の『巨人』は笑う様に大声を出した。
『ゲッフッフッフ!!ゲルガ、ギガンダフ!?ラハ、ラハギッ!!』
『ナウイ!!ラフギガ!!・・・・・・・ゲッフッフッフ!!』
『エマオテッダ!!・・・・・・・ゲッフッフッフ!!』
三体の笑い声としか取れない言葉を聞いて、『雷光』は静かに肩を落とすと後ろにいる二機の『月光』を見た。
『・・・・・・・・なにあれ。笑われてる?もしかして、笑われてるの、私?』
『一尉!落ち着いて!!』
『そうですよ、落ち着いてください、一尉!!こういう場合ってのはよくあります!!』
『・・・・・・・・・・・・・・話そうとしたら、笑われるのが?』
『い、いえ、そういう意味ではなく!!おい、木原二尉!!お前、何言ってるんだ!!?しばくぞ!!』
『自分はそういう意味で言ったんじゃないんですよ!!?・・・・・おぉ!!?なんだ、てめぇ!!しばき倒されてぇのか!!?』
『あぁ、やんのか、この野郎!!?』
『面白れぇ!!しばいてやるよ!!前に出やがれ、てめぇ!!』
『・・・・・・・・・お前らが落ち着け。江島二尉、木原二尉。』
『ハッ!!』
『了解です、一尉!!』
『雷光』の操縦士がそう言うと、言い争う一歩手前だったにも関わらず、二機の『月光』は『雷光』に向けてビシッと姿勢を正して敬礼を向けた。
お前ら、そんなこと出来るんなら最初からするなよ・・・・・・・・。
口には出さずに操縦士は心の中でその様にぼやいた。
その様にしている三機のやり取りを見てか、三体の『巨人』は先程と同じように笑い声を上げていた。
『・・・・・・・・・・・・・・・どうする?』
『一番いいのは、何もせずに撤退してくれると嬉しいんですけどね・・・・・。』
『えぇ。一士の状態も気になりますし。』
『でも、
『えっ。』
『えっ。』
二機がそう疑問の声を上げたときに三体のうち、二体の『巨人』がなにかを振り投げるかのように大きく振りかぶって・・・・・・・・・なにかを投げた。
『雷光』の視覚補助電磁システムのよって、投げられたそれが大きく拡大されて操縦者の視界に映る。それは『巨人』たちと比べれば大した大きさを持たない様に『雷光』の操縦者の瞳には映った。しかし、それはあくまでも目の前にいる『巨人』たちと比較した場合の話であって、人間と比較すれば少し一般男性の身長よりかは大きい様に見えた。
そんなものが一般人がいる町中に落ちたらどうなるか。
一般男性の身長よりも大きいということはそれだけでも少数名ではあるが命を奪うことは容易だと言えよう。であれば、どうすればいいか。それを考えて結論付けて行動するよりも早くに身体が動いた。
サッと『雷光』が装備しているライフルのスコープ代わりに目に映るモニターから目標に照準を定めて・・・・・・・・・、引き金を引いた。
だが、それよりも早くに『雷光』の身体が『巨人』から放たれた弾丸によって大きくぶれてしまった。
『一尉っ!?』
『無事ですか、一尉っ!?』
『・・・・・・・・・・っ!!人の心配するより、あれをぶっ壊せ、バカども!!』
『・・・・・・・・・・、了解っ!!』
弾丸が当たった衝撃に身体が大きくぶれてしまったおかげで態勢を上手く立て直すことが出来なくなってしまったために、操縦者は第一世代だからこそできる
どんな衝撃でも簡単にもげて使い物にならなくなるという第一世代だからこそできるとっておきであるのだが、それは諸刃の剣。全パーツの全解除ということはもう二度と動くことが出来ないいうことであり、戦うことも出来ないということであったからだ。
弾き出されるように両足、両腕を外された胴体は操縦者を乗せたまま戦場から少し距離が開けた場所に投げ出された。
「・・・・・・・っく!!・・・・・・・・ガハッ!!・・・・・うっ!!」
地に着いた衝撃で気を失いそうになるが、彼女は意識を保つ様に己の身体に喝を入れて、外へ出るためにコックピットにある『非常脱出用』と書かれた板に取り付けてある紐を強く引き絞った。
パァン!!
引き絞ると同時に、胴体のコックピット付近に仕掛けてある簡易爆破装置が作動し、コックピット扉が吹き飛ばされる。吹き飛ぶのと同時に彼女は身体に巻き付いていたロープ類をささっと身体から引きはがして、外へと脱出した。
だが、彼女を待っていたのは何もないはずの青空ではなく、その文字通りのガラクタを集めただけとしか言いようがない多くのガラクタ達であった。
「・・・・・・・・・・・・・・っ!!こんなところで死ねるかっての!!」
数秒後に自分が死ぬ光景を彼女は想像すると腰にあるホルダーから拳銃を取り出すと、二、三発、トリガーを引いた。
ターン、ターン、ターン。
続けざまに発砲して、乾いた銃声が周囲に鳴り響き、目の前にいたガラクタが倒れる。
「ハッ、ざまぁみろ。・・・・・・・・・こちら01。
吐き捨てる様に彼女はもうすでに事切れたガラクタに向けて暴言を吐くと片耳に手を当てながら、そう言った。
『こちら、本部。01?どこの部隊だ?送れ。』
「どこのって、あのね。・・・・・・・・・っ、十九志野の特式機甲連隊所属、
『あぁ~・・・・・・・・あのポンコツの第一世代をまだ使ってる部隊か。それが、どうした?送れ。』
「『雷光』は確かにポンコツだけど、そのポンコツを上手く使える様にしろって命令して強要してきたのは防衛省、上なんだけど。それで、増援は?送れ。」
『増援と言われてもな・・・・・・・・。こっちには情報は何も来ていないんだ。出来れば、説明をしてほしいんだが?送れ。』
「ハァ!?情報が来てないって、んなバカな話があるか!!こっちはなんかでかいロボットとガラクタ相手にたったの六機で相手してるのよ!!一般人も殺す気か!!送れ!!」
『・・・・・・・・・・・なに?もう一度言ってくれ。』
「もう一度って・・・・・・・・・。」
通信相手が話にもならないことにどうしようかと山下は一瞬悩むが、そんな彼女の視界隅で何かが動いた。
『ウガッ・・・・・・・・・、グワァァァァァァ・・・・・・!!』
それは先程打ち倒して倒したはずのガラクタであった。
「あぁ、クソッ!!蘇りとか、ゲームじゃないんだから、くたばっとけよ、お願いだからさぁ!!」
『どうした、01?』
「撃って機能を止めてたガラクタが蘇った。死んだらごめんね。」
『なに?待て、01!!ガラクタってなんだ!?』
言える暇はないって言ったでしょうが。
山下は先程と同じく、拳銃の銃口をガラクタに向けて引き金を引いた。
だが、ガラクタは山下の弾丸を受けても倒れることなく山下の方へと二、三歩、歩を進めて歩いてくる。
撃っても倒れぬどころか自身の方に向かってくるガラクタに恐怖を覚えた山下は残った残弾があと何発あるのか数えずに引き金を何回も引いてしまう。
だが、何発も撃たれてもガラクタは足を止めることなく前へと歩を進めてくる。
やがて、残弾がなくなった山下の拳銃は、山下が引き金を引いてもカチッ、カチッ、と空を知らせる音が鳴るだけになる。
ここまでか・・・・・・・・。
自身の身体にガラクタが鋭い腕を刺すように突き入れて、自身は事切れるのか。
その様なことを思いながら、山下は二、三歩、後ろに下がった。
下がったところで自身が向かえるであろう終わりが近づいてくるを肌で感じながら、彼女は少し、ほんの少しだけ、天に祈った。
祈ってしまった。
もし。
もし、願いを叶えてくれるのであればどうか。
どうか助けて。
その願いは天には届くことも叶うこともないことは彼女自身が思っているのにも関わらずに彼女は無意識のうちにそう祈っていた。
神様という存在は存在するわけも存在するはずもない。
そう、奇跡など起こるはずがない、と。
だが。
遠くから天を割く様な大きな爆音が鳴り響く様に彼女の耳に聞こえると、一機の白銀の所属不明機が彼女とガラクタの間を陣取る様に舞い降り、膝をつくと、胸元に片手を置いた。
『やれますか、兄さん?』
「やれなくはないだろうさ。数は多いが、所詮は雑魚だ。大丈夫だろ。それを言うならお前の方こそ、大丈夫か?自衛隊機が二機相手をしているとは言っても相手は三機。数で言えば、一対三だ。」
『nein。そこは心配要りません、兄さん。一対三とは言っても私と自衛隊機を含めれば三対三です。問題ないかと。』
「そういう問題かねぇ・・・・・・・。」
『ja。そういう問題です。』
そう言いながら、その白銀の機体は片手を地面に降ろして誰かを降ろすと、『巨人』と他の隊員が戦闘を行っている方向に顔を向けて、再び飛び上がった。
その場に残された誰かはやれやれとでも言うように肩を竦めると、山下の方へと顔を向けた。
「・・・・・・・そういうわけだ。掩護しますよ、自衛隊の方。」
「援護って・・・・・・・・。君は民間人で戦えるものなんてないでしょう?死にたいの?」
「戦えるモノなんてない・・・・・・・・っか。まぁ、普通に考えばそうだよな。普通なら。」
はぁ、とため息をつく様にそう言うと彼はなにかを取り出すように腰に手を回して、手に取ったなにかを山下に向けた。
それは何かの紋様の様に山下には見えた。いや、紋様ではない。それは一本の角がある動物、サイに似たなにかをデザインしているように見えた。
それを山下が一つのカードホルダーの様だ、と認識すると同時に彼の腰にベルトがいつの間にか巻かれていたのが彼女の目に見えた。
彼は山下ではなくガラクタの方へと身体を向けると、その言葉を言った。
「『ベルセルク』・・・・・・・・・、いや、ガラクタども。俺がスクラップに変えてやる。覚悟しろ!!」
そう言って、バッと勢いよく左腕を左後ろに下げなら、右腕を前へと押し出す。その動作で、彼が着ている薄手の上着が大きく波打つように開くが彼はそんなことは大したことではないとでも言うかのように、その言葉を言った。
「変、身!!」
言い終わると同時かそれよりも早いか、彼は先程行った動作とは逆の動作をして、腰のベルトのバックルにカードホルダーのようなものを入れた。
入れた瞬間、彼の身体が光に包まれ、光りが消えたとき、彼はどこにもいなかった。
いや。
彼ではない誰かがそこに立っていた。
「
いるはずもないその名を山下はつぶやく様に言っていた。
いるはずがない。
いるはずがないのだ。
なぜならば、その存在は・・・・・・・・。
「
俺の名は。
「
さて、それじゃあ。
「一っ飛び、付き合いやがれ、ガラクタども!!」
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