5-4
「手束・・・・・・・・・・・。その姿・・・・・・・・・・・。それに、貴方・・・・・・・・。」
「葵先輩、申し訳ないっすけど、ここから先は危ないんで、逃げてくれると有難いです。」
「危ないって・・・・・・・・・。貴方、あのガラクタみたいなのと一人で戦おうって言うの!?無茶よ!!死ぬ気なの!?」
真実は二人の目の前を埋める様にして群れとして現れている『ベルセルク』を指差して、連人の正気を疑うかのように問い質すように訊いてきた。
彼は彼女の言葉を否定するように首を横に振った。
「俺は正気ですよ。無茶ってのも目の前には多すぎるんじゃないかってくらいの多くのガラクタが群れになってるってのも理解できます。」
「だったら・・・・・・・っ。」
「ですけどね、先輩。」
いいですか。
「男の子って生き物は無理だの、無茶だのと言われても戦わなくちゃいけない時だってあるんです。」
そう言うと、真実から視線を外して、彼は前を見た。
二人から距離を開ける様にして少し遠くの場所では、陸上自衛隊の『雷光』が『巨人』が放った砲撃をひらりと回避しながら自身のライフルを放っており、二機の『月光』は『雷光』から『巨人』の照準が外れる様にライフルを撃っていた。三機の援護を受けて、後ろに少し後退した場所で愛が、彼女が操る『シュツルム・アイゼン』が羽根を休める様に休みながらも自衛隊機を支援するように砲撃を行っているが、背中にある『長い棒状に見えてしまう飛行可能な大筒』が一機も欠けることなく六機全機あるということはもしもの時を考えての事だろうかと連人は考える。
彼女自身も損傷が目立つほどにダメージを受けているのもあるのかもしれない。だとすれば、早急に目の前にいる多くのガラクタどもを一掃して向こうに向かった方が良いのかもしれない。
「ま、そういうわけなんで一緒には行けません。」
「一緒にって、貴方・・・・・・・・・・。」
「ははは、別に死にたいからとか思ってるわけじゃないっすよ。目の前にいるガラクタどもをどうにかしようにも自衛隊だけじゃ手が余ってる様子なんで、手を貸そうと思っただけですし。それに、あいつが頑張ってるんだ。だったら、俺も頑張らなきゃいけないでしょ。」
えぇ、そうです。
「意地があるんだ。・・・・・・・男の子に意地位張らせてください。」
「っ・・・・・・・・・・。分かったわ。あとで詳しく聞かせてもらうからね!!分かった!?」
「・・・・・・・・善処はします。」
そう言うと、彼は一歩、二歩と前に進み、後ろにいるであろう真実に見える様に何もない右腕を上に上げた。
「さぁ~て、と。準備はいいか、ガラクタども。これからスクラップにしてやるぜ。」
上に上げた右腕を下げながら、バックルのカードホルダーから一枚のカードを抜くと、左手にあるラウザーのスリットにカードを入れて、先端にある一本角を上に上げた。
『「Crash Horn」。』
カードを読み取る声がそう言うと、どこからか彼に向かって太く大きな一本角が飛来した。その角が飛来して自身に向かってくるということを分かっているという様に、彼は向かってくる方を確認せずに右手でその角を受け取るとその角で穿つ様にガラクタに向かって突き刺した。
『ガァァァァァァァァ!!』
断末魔を上げながら『ベルセルク』は自身の臓器をそこら中にばら撒ける様にして歯車なり、バネなり、ネジなりを吐き出しながら後方に吹き飛ばされていった。
「一体ずつ、こうやって倒すのは面倒だな・・・・・・・・。一気に吹き飛ばすか。」
前にやった様に前の方に向かって進んでいく感じじゃなくて、こう、なんか上の方から落ちていく感じで、出来れば竜巻とか起こしながら周りのも一掃できると嬉しいよな、と思いながら彼はバックルのカードホルダーが光っているのも確認せずにカードを一枚引き抜く。
そのカードは今まで彼が見たことのないような絵が描かれていた。
前方へと向かって行くようなイメージで地面に向かっていきながら風を巻き起こしている。
「おっ、ラッキー。運がいいな。」
特にあまり考えない様にしているのか、彼はそう言うと、そのカードをラウザーのスリットに差し込むと、先端にある一本角を上に上げた。
『「Power Crash Cyclone Breaker」。』
「いくぜ、えっと・・・・・・・・・パワークラッシュ?」
両肩に入った力を和らげるように肩を揺らすと、疑問形の声を出しながら、彼は駆け出した。
彼が突然駆け出したのを合図に『ベルセルク』が一斉に彼の方を向いた。その多くの目に彼は一瞬怯んで足を止めてしまうかに見えたが、前に出てしまった足を今更止めることが出来るか!!といった気持ちで両足に気合を込め、走り続けた。
そして、一瞬、空を飛ぶように両足に力を入れる様にして彼は飛び上がった。
彼の重そうで飛ぶことなどは到底無理であろうと思われる外見と打って変わって彼を高く、より高い位置まで上げる様にして彼の全身を包んでいる鋼鉄の身体の繋ぎ目から強い風が吹き出てきた。
「おぉぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・っ!!サイクロン・・・・・・・・・ッ!!」
右手に握った太く大きな角を腕から外すと、一本の柄が這い出てくる。その事に少し驚きながらも彼は握ると、先程まで右手で握っていた持ち手の部分に足を挿す様に入れる。
「ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥレイカァァァァァァァァァァァァァァ!!」
ゴゥ!!と自身を包み込むように旋風が渦を巻いて小さな渦巻き・・・・・・いや、一つの小型で凶暴な竜巻となって地面に向かって降下していく。
『グァァァァァァァァァァァ!!!』
何十体もの『ベルセルク』を身体と繋がりがなくなった文字通りの細かな部品と部品に分かつ様に解き放って、ガラクタが、カラカラカラン、と周囲に音を立てながら地面に落ちていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・ったぁ~・・・・・・・・・・いくらなんで数が多くはないかねぇ~・・・・・・・・?」
多くの『ベルセルク』をガラクタに戻した当の本人であるはずの彼はそんなことを立ち上がりながらぼやいていた。
そして、後ろを振り返り驚いたようでこう言った。
「おっ。だいぶ数を減らせたな。運がいいぜ。」
よっこらせ、と長く太い角を担ぐように先程していた様に右腕に纏うと右手で持ち手の分を握った。そして、握りながらではあるがバックルから一枚のカードを抜くとそれがどういったものかを確認せずにラウザーのスリットに差し入れた。
『「Giga Pressure」。』
「付き合ってもらうぜ、ガラクタども!!」
そう言うと、彼は残って群れになっている『ベルセルク』の集団に向かって走り出し・・・・・・・・・勢いが付くと、その勢いを殺さぬままに飛んだ。
一本角を当てる様に彼は飛んで行き、彼の勢いを止めることが出来ぬまま、『ベルセルク』たちはガラクタへと戻って行った。
「・・・・・・・・・・・・・~っと。これで、だいたいは片付いたか?見える範囲は、だけど。」
自分の身体をパンパンと埃を払う様に叩いて、彼は後ろを振り返った。うると、そこには多くの『ベルセルク』であったガラクタが多く散乱していた。身体を形成しているガラクタが一体も見当たらないことに、彼はやれやれと軽く肩を竦めると、彼女に終わったことを知らせる様に大声で知らせた。
「愛っ!!こっちの方は片付いたぞ!!」
彼の声に反応して彼女は彼の方を見ると、彼の姿を確認すると、コクリと頷いて、『巨人』たちに向かってライフルを数発発砲して、彼の方に向けて背中の噴射装置を吹かして、彼の下へと向かった。そして、彼の近くまでやって来ると、手を差し伸べて自身の中へと彼を誘導するようにした。
『お疲れ様です、兄さん。』
「まだ終わっちゃいないけどな。・・・・・・・・・あの『巨人』どもを倒せばこの戦いは終わりだ。まだ戦えるか?」
『クスッ。奇妙なことを御聞きなさいますね、兄さん。私はまだ戦えますし、戦えないにしても陸上自衛隊でしたか?彼らに「巨人」の相手は手が余るかと思いますが?』
「んなもん、見てれば分かる。いくら、日本が誇る特式機甲連隊でもきついだろうからな。・・・・・・・・・手伝うぞ。」
『ja。それでは中にどうぞ、兄さん。』
彼女の誘導によってコックピットに搭乗することが出来た彼は座席に座ると、両側にあるグリップを強く握りしめた。その彼に合わせる様にして彼女は身体を起き上がらせた。
そうしていると、二機の『月光』のうち一機がこちら側に視線を向けると、隊長機だと思われる『雷光』に向けて叫んだ。
『一尉っ!後ろに下がってください!!白いのが前に出ます!!』
『えっ!?こっちに来るの!?』
「へっ。お一人で楽しく踊ってるところ、悪いとは思いますけどね。」
『そうですね。楽しく踊っているところ、悪いとは思いますが、こちらにも用事がありますし。』
グリップにある引き金を彼は引きながら、足のペダルを踏みながら器用にグリップを前後に動かしながら、彼女を、いや、『シュツルム・アイゼン』の身体を動かしてみせた。その動作に合わせる様に、背中で待機していた六機の『グラム』を全機飛ばすと、四体の『巨人』に砲撃を続けざまに穿った。
『ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
『なにっ!?』
『この攻撃はどこから!?どこから来ている!?』
『空から・・・・・・だとぉ!?バカな!!「アイゼン」は「グラム」を使えぬはずだぞっ!?』
彼らの言葉を聞いて、彼はフッと鼻で笑うと、彼女に訊く様に呟いた。
「『シュツルム・アイゼン』は背中のは使えねぇって言ってるけど?」
『彼らは彼らの中で知っている事実を述べているだけです。兄さんのことは知ってはいない様子なので驚くのも無理はないでしょう。』
「うん?知らないのか、あいつら?」
『ja。と言いましても彼らの発言から判断しただけですので悪しからずに、ご判断お頼み申し上げます。』
「知ってたら、あんなガラクタだけじゃなくて、対抗策を取られいるはずだもんな・・・・・・・・・・。そう考えれば、知らないと考えるのが妥当か。」
『ja。』
連人と愛の二人が話している間に、『グラム』による攻撃を受けて『巨人』たちは膝を地に着けるか、先程よりもゆったりとした動作で、手に持った砲台で攻撃をするが、ゆったりとした動きで早く動ける『シュツルム・アイゼン』や自衛隊の三機を補足することは出来なかった。
そのため、一体、二体と『巨人』は徐々に地に伏せる様に倒れていった。
その様子を見て、彼はふと思ったことを彼女に訊いた。
「なぁ、愛。ちょっと訊いていいか?」
『ja。なんでしょうか、兄さん。』
「お前の背中にある・・・・・・・・・・。」
『「グラム」のことでしょうか?』
「そうそう、それそれ。その『グラム』ってのは自動で動く自律式とかじゃないのか?」
『自律式でないのかという問いに関しては、nine。自律式ではありません。両手にありますライフルなどとは違い、自分で扱う武器になります。』
「・・・・・・・・・・・ちなみに、だけどさ。俺がその『グラム』の操作をやってやるとか言ってやってみたらどうなるのよ?」
『そうですね・・・・・・・・・・。説明しても良いですが、あまり御気分が優れなくなるお話になるかと思いますよ?』
「・・・・・・脳みそが焼けて、口が垂れて唾が垂れたまんまになる・・・・・とかか?」
『運がよければ、そうなるかと。』
運がよければ、ね。
「分かった。お前に任せるよ。」
『ja。任されました、兄さん。』
戦闘中にも関わらず、その様な呑気な会話をしながら、二人は四体いた『巨人』たちをすべて倒していた。
そのことに、ほっと彼は一息入れると彼女をねぎらう様にグリップを優しく撫でた。
そして、彼女はゆっくりと身体を地に降ろすと、『巨人』であり残骸となってしまったものを見るとこう呟いた。
『貴方方の間違いは人が住むこの世界を壊そうと、殺戮を望んだこと。それが貴方方の唯一の間違いです。』
まぁ、少なくとも。
『私と貴方方とでは、始まり《スタート》がそもそも違いますので、違くて手当たり前のお話ですが。』
彼女の独り言を聞いて彼はふと疑問に思った。
(スタートが違う?)
彼女が言うスタートとはなんのことだろうか、彼女に訊く前に、彼女は後ろを振り返ると、そこにいた三機の自衛隊機に向かって深々とお辞儀をして、その場を後にするように飛び去って行った。
「凄いわ・・・・・・・・・。これは一大スクープよ・・・・・。みんな、驚く驚愕の事実だわ・・・・・・。ふっふっふ。手束、あんたを特に悪くは思ってないけど・・・大事なネタとして大切に取り扱ってあげるわ・・・。ふっふっふ。」
少し離れた場所では首に下げたカメラを握り締めた真実が笑っていた。
そのカメラが写した画面には姿を変えた彼が名を知らない白く大きな機体のコックピットへと乗ろうとしている姿が映し出されていた。
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