3-2

 十津沼田。

 新十九志野にある新十九志野駅よりかは電車の本数が多くレールの数もそれと比例するかのように多いため、電車の乗り降りをするためのホームの数も多くなる。そのため、大学のキャンパスにほど近い新十九志野に目が慣れてしまったせいか、から来た愛は蒼い瞳をパチパチと瞬かせていた。

「多い・・・・・・・・。」

 電車の本数が多いことに驚いているような声を出す愛の言葉を聞いて連人は苦笑いで応えた。

「そりゃまぁ、多いだろうさ。東京の方からと千葉の方からと一般車両もあるんだ。電車一本の新十九志野駅よりか多いのも当たり前だと思うけどな。」

「ja。たしかにそうかもしれませんが・・・・・・・・・・。」

 そう言う彼女の服装を連人は何となく見てみる。着ているのは靴以外のほとんどのモノが男性モノ(連人が貸しているので当たり前なのだが)であるためにやや身体に合っていない様に連人には見えた。

 愛のサイズに合う様に愛用のTシャツも買わないとな、でも、そうなると、下着とかもか・・・・?

 そう思ってしまったからか、無意識に視線は彼女の胸元を向いてしまう。彼女の胸は小さくも大きくもない程良い大きさの様に連人の目には見えた。普乳と呼ばれる一般的なサイズとは違って全体のバランスが程よい具合だと思われる美しい乳と書いて美乳と言えるほどの美しい胸であると連人には思えた。・・・・・・・実際に直接見たり、直接触ったりはしていないのだが。

 しかし、そうなると、別の問題が浮かび上がってくる。

 そう。

 彼女は下着をしているのか、否かという問題だ。

 これは軽視するべき問題では断じてない。下着とはそれを着る者を形づけるものである。つまり、彼女、愛という自身を美しく見せるために必要なモノなのである。決して、連人が男の子として女性が身に着ける下着がどの様なモノなのかが気になるわけではない。

 たぶん。

 きっと。

 メイビー。

・・・・・・・・・?どうしましたか?」

「いや。特にはないんだけど、な。」

・・・・・・・?それでしたら、何でしょう?」

「そこに触れるか・・・・・・・・・・。」

 触れなくていいのにな。

 そう思いながらも、訊かれた以上は仕方がないか、と連人は思い、彼女に訊いてみた。

「それじゃ、訊くけどよ。・・・・・・・愛、お前、下着してるの?」

「・・・・・・下着、ですか?」

「あぁ。服の下に身に着けるモノだよ。」

「それでしたら、ja。着けていますよ?」

「言っとくけど、Tシャツのことじゃねぇぞ?」

「えぇ、下着ですよね?着けていますよ?」

「だったら、別にいいんだけどよ・・・・・・・・。」

「着けていない方がよろしかったですか、?」

「いや、着けるのは当たり前だから、着けてた方が良いぞ。」

「ja。では、その様にしましょうか。」

?」

「ja。外にお出かけにならない時には着けるな、という意味でそう仰ったのでは?」

「ちげぇよ!?部屋の中にいても着けなきゃいけないよ!?」

 突然、そんなことを言い出した愛の言葉に連人は声を荒げて言葉を返す。

「ですが、よろしいのですか、?二人だけなのに下着を着けて過ごすというのは?」

「何言ってるの、お前!?それと、俺が下着着けるの許可してない風に言うのやめてくれね!?」

「でも、は嬉しくはありませんよね?」

「いやいや!そういうのとは違うこと言ってるんだけど、お前!?」

「ja。もちろん、冗談ですが。」

「冗談にしては悪い冗談だなぁ、おい!!」

 困ったもんだな、と連人は小さな声で呟いた。

 まぁ、最初の頃よりかはこうして冗談が言えるだけは彼女といい関係になっているうということであろうか。そうなってくれると嬉しいのだが、そうなる可能性は低いだろうと連人は思っていた。

 女性ものの服装ではないから単にそう思うだけなのかもしれなかった。男性モノのシャツに男性モノの履物を穿いて、男性モノの上着に袖を通しているというのもアレな話だが、愛の様にキレイな顔をしている女性が着ているモノが連人自身のものであれば、なおさら男性としては興奮を覚えるものだが、連人は浮かんできた雑念を振り払う様に頭を左右に大きく振った。

「大丈夫ですか、?」

 愛は突然変なことを訊いたり頭を振る連人の様子からなにかを思ったのか、彼に体調がいいかを尋ねてくる。そんな彼女の問いに彼は片手を上げて軽く振ることで応えた。














 それから遅れてやってきた電車に二人は乗ったわけだが・・・・・・・。

「愛。大丈夫か?」

「ja。体調に変化はありませんよ、。」

「変になったらすぐに言えよ?」

「ja。」

 あれからすぐに来た電車に電車に連人と愛の二人は乗れたわけだが、休日なのにも関わらずに電車内は人でごった返していた。

「人が多いな。・・・・・・・・なんかイベントとかあったか?」

「ja。少々お待ちを。調。」

 彼女はそう言うと、目を開けながらも意識がなくなったかのように糸が切れた人形の様に倒れそうになる。しかし、彼女は倒れることはなかった。倒れそうになったことに連人が気付いて彼女の手を掴んだからだった。

「大丈夫か・・・・・・・・って、聞こえるわきゃねぇか。」

 やれやれと頭を掻きながら彼女の身体が倒れない様にと片腕で連人は補助をした。

 片腕で彼女の身体を支える様に補助をするのは別に苦労もなく造作もないことなのであるが、周囲から連人を見る目がなにか変質者でも見るような目で見られていると連人は自覚した。

 それ故に、その視線から逃れようと動いてみようとしたのだが。

「ぁ・・・・・・・・・。」

 彼女を支えている片腕が妙なところに当たったのだろうか、彼女は意識を失いながらも小さな声を出す。彼は彼女が洩らした小声に理性がどうにかなりそうだったが、必死に抑え込むと、ガラス越しに外の様子が見える車掌室の壁に彼女の身体を着けると、彼女の身体を守る様に覆い被さった。

 何も事情を知らない人がこの光景を見たら、痴漢騒ぎどころの話ではなく、電車内でが少女相手に実際にに及んでいる様に見えなくもない非常に連人にとってはまずい絵面になっていたのだが、当の連人はそのように考えてもいなかった。

 周囲からの視線を受けながらも、連人はその視線には反応せずに、なぜ彼女が突然意識を失ったかについて考えてみようと、視線の方向を見ずに周囲を見渡す。

 見渡してみれば、人々が手に持って操作しているのは最近、使いやすいと噂になっている小さく薄い板を使っていたのが多く見られた。

 であれば、と連人は考える。

 彼女は調と言って意識を失った。

 連人と二人きりの時には気を失うことなく、電波に調らしい。

 小さく薄い板、タブレットと呼ばれる端末から情報を探すことは難しい。

 正確には手持ちの接続端末から接続しなければより早く情報を探すことなども出来ないし、こともできない。

 となれば、と連人は確信を得た。

 電車内で彼女はとしたが、人が密集しすぎてと日常的に行っている行為であってもことが困難になったために、身体の機能自体を止めなくてはいけなくなったと推測することが出来る。

 全くこいつは、と連人は自虐気味に軽く息を吐いた。

 そして、息を吸った。

 すると、連人の鼻から普段嗅ぐことはない女性の香りが匂った。

 匂いが来た方向に視線を送れば、意識を失って壁に身体を預けている愛の姿が見えた。・・・・・・・とここで連人は自分がナニをしようとしているのか、どんな風に見られているのかを悟った。

 壁に少女の身体を押し当てる大男。

 その大男は彼女の身体に覆い被さる様にしている。

 そう。

 突然意識を失った少女を壁際に運んで彼女を守る様に立っているとは誰も思うことはないだろう。

 やっべぇ・・・・・・・・・。

 どうしたものかな、と連人は思いながらもそこからは動こうとはしなかった。そこから動こうと考えるよりも愛が早く意識を取り戻すことを天に願う気持ちで思っていた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・?」

 連人の胸元から愛の声が聞こえ、彼は安堵した。

、愛。」

「ja。イベントなどについては調が・・・・・・・・。如何します?」

「あぁ、状況説明とかか?」

「ja。」

 彼の質問に対して愛はコクリと頷きながらもそう彼に返した。

 だが、彼は彼女の問いには何も返さずに、軽く息を吐いただけに留まった。

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