◆3ー4ー3

 

カーラ「確証はないけど……。

過去にも同じようにこの世界のものじゃない物体が空から落ちて来てるんだよ。

今までそれは、天上の世界にあったものだって言われてきたけど、たぶん違う……。

なんとかそこを通ることができれば、きっとあんたの住んでた世界に行けるよ!

そうすれば、フリンと決闘なんてしなくてすむし、ねっ!」

 

 

たづな「えっ……?」

 

 

 カーラの最後の言葉は、何か引っかかるものがあった。

 

確かに最初は、フリストとたたかうなんて、あまり気の進まないことだと思っていたのに。

 

いざその必要がないと告げられても、どうにも納得しきれない自分が心の中にいるのだった。

 

 

カーラ「そうだよ!

たたかうことなんてないよ♪

たづなは自分の世界に帰れるし、仲間どうしで争うこともなくなって、一件落着だねっ!」

 

 

たづな「そ……そんな、今さらたたかわなくていいなんて言われても……」

 

 

カーラ「えっ、どうして?!

お家に帰れるんだよ?

うれしくないの?」

 

 

たづな「それはまあ、うれしくないわけじゃ、ないんだけどさ……」

 

 

 彼女の努力も、痛いほどよく分かった。

 

たづなが模擬戦への戦闘準備を着々と進めている間、ずっとこの調べ物に精を出していたのだろう。

 

2人のケンカを止められる、そんな思いでディスプレイだけを持って、単身ここまで乗りこんでくれたに違いない。

 

ぴょんぴょんと飛びはねる勢いで、本当にうれしそうに調査報告をしたカーラには、こんなことを言うのは酷なのかもしれないが、たづなには、伝えなければならない決心があった。

 

 手にしていたカップを、作業台に置いて。

 

 

たづな「何ていうか……俺、フリストと決闘をするっていうよりも、自分のこと必要だって認めてほしいから試合をするって感じなんだ。

俺さ、来月から中学生なんだけどさ、今までこんな風に考えたことなかった。

中学なんて、別に行きたくなかったけど、行かないわけにはいかないから仕方なく入学するんだって思うだけだった。

ずっと、逃げ出すことばかり、後ろ向きなことばかり考えてたんだ。

勝ち負けがどう、ってことじゃない。

逃げずに最後まで立ち向かっていくことができれば、俺も少しは大きくなれるんじゃないかなって思って。

色んなことに不安がらなくてもいいくらいに、大人になれるんじゃないかなって。

なんかもう、自分だけの都合みたいになってきちゃったけどさ……」

 

 

カーラ「…………」

 

 

 だんだんまとめきれなくなって、たづなは照れ隠しに頭をかきながら言い終えたが、3人は少しもいい加減な顔をしなかった。

 

 

ロタ「ねぇ、次のフィラクタリ出現予測時間は?」

 

 

カーラ「えっ?

あ、うん、今までの出現ポイントに規則性が見られるから、ほぼ確定と言っていいよ。

あさって、早朝、ココ!」

 

 

 カーラはロタの突然の質問に、ディスプレイの点線の先端を指さして自信に満ちた声で答えた。

 

 

エイル「明日が決闘の日、ちょうど良いではありませんの♪」

 

 

ロタ「たづなは明日、決闘に勝って、レギンレイヴ小隊は全員でたづなの帰国を手助けする。

……だねっ!」

 

 

たづな「……うん」

 

 

 4人は互いの顔を見交わしてうなずくと、ディスプレイに目を落として静かに思いをめぐらせていた。

 

 

エイル「さあ、最終テスト、行きますわよっ♪」

 

 

 やがてエイルの号令をきっかけに、皆それぞれ次の作業に取りかかった。

 

 

たづな「あ、カーラ!」

 

 

 ディスプレイを片付けようとしていたカーラに、たづなはひとつ思いついて呼びかける。

 

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