◆2ー3
3.約物
その日の授業が終わり、しおり達は図書室で部活動にいそしんでいた。
4人がけのテーブルを3人で占領し、ルーズリーフにおのおの特徴的なデザインをしたシャーペンをコツコツと走らせる。
まつり「“約物”っていまいち使い方が分かんねーんだよなー」
シャーペンの、まといをかたどったノックボタンで、おでこを軽くかきながらまつりがぽつりとつぶやいた。
まつり「句点はいいんだけど、
読点(とうてん)が時々どこに打っていいか分かんなくなるんだよー」
しおり「あー、あるある。
わたしは、カッコとか種類が多すぎて、全部は使いこなせてない感じ」
こより「すみつき……パーレン……が好き」
まつり「カッコとかは、ほとんど好みの問題だよなー。
読み方さえ知らないのもあるし……。
あの石オノみたいな形の約物、何者なんだよ。
¶ ← コレ!」
こより「それはパラグラフなのだ」
まつり「へぇ、パラグラフっていうのかー。
あと、汗の記号もナゾだよなーι」
こより「それは約物じゃなくて、
ギリシャ文字のイオータなのだι」
まつり「おおおっ、こよりんは物知りだなー!
じゃあ、あれは?
しゅりけんみたいな形のヤツ……。
たしか音楽の何かで見たと思うんだけど……」
しおり「音楽……?」
こより「たぶんそれは、ダブルシャープ……。
それも約物じゃなくて変化記号なのだ」
しおり「なんで分かるのよっ、まだ習ってないわよ、
区点コードで出ないわよっι」
まつり「ダブルシャープ!
なんかカッコよくない?
あれもカッコいいよな、ダガー!」
しおり「† ← コレのことね♪
ちなみに ‡ ← これはダブルダガーよ」
まつり「おおっ、ダブルダガー!
かっけぇぇ──!
つよそ──!」
しおり「約物に強さ求めてどうすんのよ……ι」
【キーンコーンカーンコーン……】
雑談がもり上がってきそうなところで、下校のチャイムが鳴る。
まつり「ああ、なんだ、もう終わりかー。
下書き全然できなかったなぁ……」
しおり「約物の話で時間つぶれちゃったねー」
まつり「約物の話してたら焼き肉食いたくなってきた。
今度みんなで食べに行かねぇ?」
しおり「ええ~、焼き肉ぅ~?」
まつりの安易な提案に、乗り気になれないしおりは否定的な笑いを浮かべつつ帰り支度を始めた。
ふと、こよりの席にあったルーズリーフをのぞいてみれば、約物の話をしていた間ずっとその作業をしていたのか、一面を使っての凝ったアスキーアートが書かれてあった。
しおり「すご……職人か……!」
Γニニヽ⌒`Y⌒`ヽニフ
\\ゝУ从 ソ从ハ、`リ/
ノ ∨ルリ^ ‐ У ー ノjtハ
///ハム → の ムハ
彡 // ハ、 ¨ ▽ ¨ノ川
ノ⌒ r? ``r`` ηヽ
∠__)ア .イ ィ´_〉
|ヘ ’ / | | /
|ハ、_ / へ_ノイ
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