◆2ー2

 

2.キャラ

 

 

 

まつり「二段オチなんて、レア体験じゃねーか!

うーらやましい!」

 

 

 まつりはボーイッシュな女の子だった。

 

寝ぐせもそのままなショートヘア、目つきはややするどいが、とても明るくやさしい顔と性格なので、女子校にあって女子に極めて人気が高い。

 

背も高く、セーラー服の夏服も上級生並みに似合っていた。

 

 

こより「二段オチ……こよりも体験してみたい……のだ」

 

 

 まつりとは対照的に、こよりはとても子供っぽい女の子だった。

 

というよりも、見た目は本当に小2くらいのお子様で、まんまるく大きい瞳に、髪はおかっぱ、頭のリボンがトレードマーク。

 

赤い背負いカバンのおかげで、制服を着ていても14才という感じが全くしない。

 

 

しおり「まあ、分かりやすかったから、後半は夢だってバレちゃってたけどねー」

 

 

 ツインテールのしおりは、まつりにはわずかにおよばないものの、標準的な身長の女の子。

 

つぶらな瞳に小さなあひる口、肌は白くミルクのようだった。

 

 近所ということもあって、3人は昔から仲の良い友達だった。

 

いずれも下多米女子中学校に通い、そして文芸部に所属しているのだ。

 

 

まつり「そういやぁさ、オレらって京都だよな?

なんで関西弁じゃないんだ?」

 

 

しおり「え……、それはまあ、いろいろあるんじゃない?」

 

 

 3人並んで登校中、右端のまつりに突拍子もない疑問を投げかけられ、左端のしおりは返事に困ってしまった。

 

 

こより「京都版関西弁は、小説では使いにくいのだ……」

 

 

まつり「ああ……みんな京都の方言は“京言葉”ってイメージあるしな」

 

 

しおり「京都弁のことやな。

“○○どすえ”言わはんのは、もうまいこさんかお年寄りくらいやねんけどなぁ。

だんだん大阪弁っぽくなってるいうし、世代によっては標準語しゃべってる人もいはるみたいやで」

 

 

こより「イントネーションの……むずさ……」

 

 

まつり「ほんでも、大阪弁とはちょっとちゃうねんな。

なんちゅーか、京都は全体的におっとりしてるみたいな感じやねんな」

 

 

3人「……あはは……」

 

 

 いくつか言葉を発してみて、3人は渇いた笑いで会話を切った。

 

 

3人(キャラが……成り立たねぇっ!!)

 

 

まつり「や……やっぱあれだな、京都だからってみんな関西弁しゃべってたら、キャラが崩れてしまうな」

 

 

しおり「そうね、まつりちゃんは名前の通り“お祭り好き”って感じがするしね♪」

 

 

まつり「おおっ、じゃあ、しおりんはやっぱ読書好きだからしおりなんだな♪

こよりんは“子供寄り”だからこよりだな!」

 

 

 少々都合よく解釈し、まつりはこよりをいきなり抱き上げて高い高いをした。

 

 

まつり「こよりはホントかわいいなぁ、オレもこんな子供がほしいぜ!

おーよしよし、たかいたか~い♪」

 

 

こより「む──……♯」

 

 

 空中高く舞い上がったこよりは、両目をギラリと光らせそのまま一回転。

 

 

こより「まつりは、“血祭り”のまつり!」

 

 

まつり「おぶへぇっ=3」

 

 

 こよりが放ったかかと落としは、まつりの脳天に見事にヒットし、彼女に大量の鼻トマトジュースを噴射させた。

 

路上に倒れ伏したまつりを放置して、何事もなかったかのようにさっさと先を行くこより。

 

 しおりは巻きぞえを食わぬ位置から、2人の激しすぎるスキンシップをただただながめるばかりであった。

 

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