4.決心
◆3ー4ー1
全く納得のいかない成り行きで、たづなはフリストと決闘をすることになってしまった。
といっても、ペイント弾を使った模擬戦ではあったが、それに負けるとここを追い出されてしまうというので、たづなにとっては死活問題であった。
たづな「……はぁ、何でこんなことに」
エイル「あらあら、大きなため息ですこと、うふふ♪
後悔していらっしゃいますの?」
その日の授業が終わり、エイルに連れられてラボへ向かう通路で、たづなはついつい本音をもらしてしまった。
ロタ「負けたって何とでもなるんだから、そんなに心配することないよ♪
むしろ、航空祭の出し物だと思ってやればいいわ」
こちらの両肩に手をのせて、後ろからついて来るロタには、少々楽観すぎる言葉を発射されてしまった。
たづな「そういえば、俺ってロボットに、ドラッシルに乗れないんだよな?
何に乗ってたたかえばいいんだ?」
エイル「うふふ、乗るのではありませんわよ。
着装するのですわ♪」
どこまでも楽しそうなエイルがラボへのドアを開けつつ言って、2人を招き入れた。
室内へ入って照明が点けられると、昨日と機械の配置が変わっていて、広くとられた部屋の中央に、何か専用の台に飾られた全身鎧のようなものが見えた。
たづな「ん?
あれ……?」
ロタ「へぇ~、本当に完成したんだぁ!」
エイル「パワードスーツ、“ブリュンヒルデ”と申します。
飛行系ユニットに難があったのですが、なんと、たづなさまのブーツと直結すれば、問題なく運用できるという計算結果が出ましたの!」
3人はその青銀色に輝くパワードスーツを取り囲み、さっそく思い思いの目見でそれをながめ回した。
金属かプラスチックか、見たこともないような素材でできていて、パーツごとに管やケーブルでかたわらのコンピュータへとつながれている。
形状としては西洋甲冑に似るが、かぶとと足回りの部位がなく、代わりに鳥の翼のようなものがついていた。
たづな「おー、なんかかっけぇ!
これ、もしかして着るヤツ?」
エイル「はい♪
最初は、ロタちゃんに合わせて作り始めたのですけれど、サイズ的に余裕を持って設計してありますので、たづなさまでも着装可能と思いますわ。
あとはシステムの調整だけですが、着てみていただけますか?」
そうして、たづなはそのブリュンヒルデなるパワードスーツを試着してみることとなった。
見た目ほど重くはなかったものの、鎧をまとったことなど一度もない彼は、2人の手を借りたとしても悪戦苦闘を強いられてしまう。
なんとか全てのパーツを身につけることはできたが、やはりまとってみるとそこそこの重量となってしまって動きづらさも感じられた。
たづな「ちょっと重いかも……走るのは無理っぽい」
エイル「空戦仕様ですから、空へ上がればフレイヤの1,5倍ほどの機動性が見込めますわ♪」
背中の翼が特に重たくて、ノートを詰めこんだランドセルを背負っているようだ。
この状態でブーツとの直結試運転へ突入したので、コンピュータによるシステムの調整とやらが完了するまでの2時間を、たづなはずっと重みに耐え続けなければならなかった。
終わる頃になるともう全身汗まみれで、腕や足の力がほとんど入らなくなっていたほどである。
ロタ「た……たづな、すごい汗だよ!
大丈夫?」
たづな「へ……へーき、へーき、へへへ♪」
パワードスーツを外し、Tシャツとなって渡されたタオルを体にあてがいながら、たづなは心配するロタへと空元気を送った。
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